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インドパシフィック合同軍編 第3章 小笠原諸島沖へ 1 聯合艦隊

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

 大日本帝国近海。


 柱島泊地を出航した聯合艦隊旗艦兼第一艦隊旗艦兼第一戦隊旗艦の戦艦[長門]を基幹として、2番艦の戦艦[陸奥]、第三戦隊旗艦戦艦[金剛]、同戦隊所属の戦艦[榛名]、第一航空戦隊旗艦の航空母艦[赤城]、同航空戦隊所属の空母[龍驤]、第三水雷戦隊と第十九駆逐隊、先行として第十八潜水隊が展開している。


 目的地は、小笠原諸島沖である。


 戦艦[長門]の艦橋では、聯合艦隊司令長官である山本五十六大将以下幕僚たちが、詰めていた。


 聯合艦隊司令長官付の連絡員として、石垣達也2等海尉も艦橋にいる。


 山本以下幕僚たちも黒色の制服姿であるため、石垣も海上自衛隊の黒色の制服姿である。


 これだけの規模の艦隊が出撃した理由は、小笠原諸島沖及び硫黄島近空で行われる菊水総隊海上自衛隊と航空自衛隊による実弾演習を視察するためだ。


 戦艦[長門]には聯合艦隊司令部、戦艦[陸奥]には、軍令部総長以下幕僚たちが乗艦している。


 さらに両艦には、各鎮守府及び各艦隊司令部から派遣された観戦武官たちが乗艦している。


 そして、戦艦[長門]及び戦艦[陸奥]には、海上自衛隊広報部と航空自衛隊広報部から派遣された幹部自衛官が乗艦している。


 海空の演習が開始されたら、彼ら広報官たちが解説する事になっている。


 当初は、海上自衛隊練習艦隊に所属する練習艦に乗艦して貰う手筈だったのだが、海軍の主だった重要人物が、他国の軍艦に乗艦するのは、まずいという海軍省の判断だった。


(はぁ~・・・俺たち、信用されていないのかなぁ・・・)


 石垣は、心中でため息を吐いた。


 戦艦[長門]と戦艦[陸奥]は、聯合艦隊司令部と軍令部の役員たちが乗艦しているため、他の戦隊及び航空戦隊、水雷戦隊、駆逐隊は、その護衛のために随伴している。


 空母[赤城]と空母[龍驤]は、艦載機を搭載し、爆装又は雷装が可能な状態である。


 護衛であるため、艦上戦闘機を多めに搭載しているそうだ。


「宇垣君。何か、大袈裟では無いか・・・?」


「いえ、いくら未来の日本人とは言っても、我々とは違います。さらに、相手の戦力は現在、建造中の[大和]級戦艦を上回るという事です。このぐらいの規模は、むしろ当然でしょう」


「ふむ・・・」


(いやいや、俺たちが本気なら、ここにいる艦隊なんて、欠伸をしながら海の藻屑にできるよ)


 石垣が、心中で突っ込んだ。


 今回の演習に参加する菊水総隊海上自衛隊第1護衛隊群は、全艦出動している。


 所属するイージス護衛艦[あかぎ]とイージス艦[こんごう]なら、第一航空戦隊から出撃した攻撃隊等100キロメートル以上先で捕捉し、艦載のスタンダード・ミサイルで、全機を撃墜する。


 戦艦[長門]、戦艦[陸奥]、戦艦[金剛]、戦艦[榛名]に関しては第1潜水隊群に所属する[おやしお]型潜水艦、又は[そうりゅう]型潜水艦の潜水艦発射ミサイルであるハープーン・ミサイルと魚雷で、確実に仕留められる。


「相手は80年後の兵器だ。この時代に置いて万全だったとしても、時間の流れには置いて行かれる。このような態勢は、かえって、未来人たちの失笑を買うだろうね・・・」


「長官!」


 宇垣が、叫ぶ。


「ほれ、聞こえてきた」


 戦艦[長門]の艦橋内に轟音と振動が響く。


「た、対空警戒!」


 戦艦[長門]の艦長が、叫ぶ。


「見張り員!状況を報告しろ!」


 先任参謀の黒島亀人大佐が、叫ぶ。


「左舷後方に機影!恐ろしく速いです!」


 見張り員の言葉が終わらないうちに、その機は白い尾を引きながら、戦艦[長門]の上空を通り過ぎた。


「ブルーインパルスですね」


 戦艦[長門]に乗艦する、航空自衛隊広報官である1等空尉が機械的に説明をする。





「T-4中等練習機・・・防衛局長官直轄部隊航空自衛隊第4航空団第11飛行隊に所属する飛行隊です」


 戦艦[長門]に乗艦する統合幕僚本部航空自衛隊広報室の広報官である(そら)()大勇(たいゆう)1等空尉が、艦橋の窓から空を見上げ、確認する。


「私たちを歓迎するという事か・・・」


 山本が、つぶやく。


「はい、聯合艦隊司令長官だけでは無く、軍令部総長が、海上・航空自衛隊の実弾演習を視察するという事で、その歓迎飛行の前夜祭です」


「前夜祭・・・?という事は、本祭があるのかね・・・?」


「はい、恐らく。今、戦艦[長門]以下の第一艦隊派遣部隊の上空を通り過ぎたのは、硫黄島航空基地に向かう、第11飛行隊の派遣飛行班です」


「ほう・・・」


 山本が長官席を立ち上がり、窓に近付く。


 ブルーインパルスの飛行班は、第一艦隊派遣部隊の上空で、アクロバット飛行を行っていた。


「資料によると・・・貴官もブルーインパルスに所属していたと・・・」


「はい、広報官に配属される前は、第11飛行隊に所属していました」


「その前は・・・?」


 聯合艦隊司令部航空参謀である中佐が、聞いた。


「その前は、F-15J改に搭乗していました。いや・・・F-15J改のパイロットだった時は、高度7000メートル以上での飛行が当たり前だったのですが、ブルーインパルスでは、低空飛行も当たり前になって、慣れるのに苦労しました」


 ブルーインパルスのT-4が飛来してから、空母[赤城]及び空母[龍驤]から発艦した、上空警戒の九六式艦上戦闘機がT-4を追っていた。


 しかし、九六式艦上戦闘機の最高速度は、時速400キロメートル程であるため、T-4中等練習機の巡航速度マッハ0.75には敵わない。


 ブルーインパルスの飛行班は、向かってきた九六式艦上戦闘機が追い付ける失速ぎりぎりの速度で飛行し、ある程度まで近付くとT-4は加速した。


 そのまま易々と振り切った。


 再び戦艦[長門]上空及び戦艦[陸奥]上空を、旋回する。


「おのれ!舐めおって!」


 宇垣が、声を上げる。


「第一航空戦隊に連絡!上空にいる未来機に持て遊ばれるな!帝国海軍軍人として誇りを見せよ!」


「無駄だよ」


 宇垣の無茶苦茶な命令に、山本がため息を吐く。


「航空参謀、砲術参謀」


 山本が、2人の参謀である中佐に振り返った。


「「はっ」」


 2人が、返事をした。


「あの速度で飛行する噴進機を、[長門]が搭載する艦載砲で撃墜する事は可能か?」


「それは・・・」


 砲術参謀が、言葉に詰まる。


「どうだね。航空参謀?」


「は・・・」


 航空参謀も、言葉に詰まる。


「広報官殿の言う、失速速度ぎりぎりでの飛行であれば、撃墜出来る可能性はありますが・・・あの速度の練習噴進機を撃墜する方法は、ありません」


「ふむ・・・」


 山本は頷いた。


「あの噴進機は練習機・・・戦闘攻撃噴進機や要撃噴進機は、それ以上の最高速度で飛行する事が出来る。世界一の海軍だと信じる我が大日本帝国海軍でもこの有様・・・とても敵うものでは無い」


「長官。彼らの言う通り、未来人の武力は、世界中の海軍が聯合を組んだとしても、殲滅出来るというのは、大ぼらでも虚言でも無い。という事ですね・・・」


 黒島が、緊張した眼差しでつぶやく。





「伊上君。随分と緊張しているようだが、そんなに緊張していては、本番まで身体がもたんぞ」


 山本が、統合幕僚本部海上自衛隊広報室から派遣されている広報官である伊上(いのうえ)(あけ)(のり)1等海尉に声をかけた。


「子供の頃から好きだった、戦艦[長門]に乗艦出来る事を、大変嬉しく思っているのですが・・・どうも緊張しまして・・・」


「[長門]が?・・・石垣君の話では、戦艦[大和]が未来の日本人男子に人気があると聞いていたが・・・君は少数派なのか?」


「そんな事はありません!確かに、戦艦[大和]は、人気の戦艦です。ですが、それに並んで戦艦[長門]も負けていません」


「君たちの記録では、戦艦[長門]は終戦後にも健在であって、米軍の原爆実験で沈没したと書いてある」


 宇垣が、告げる。


「ただ沈没した訳ありません!1945年8月末頃に戦艦[長門]は、アメリカ軍に接収されました。そのまま原爆実験の標的艦に選ばれ、クロスロード作戦に参加する事が決まりました。マーシャル諸島ビキニ環礁で、[長門]が停止すると、第1回目の実験、空中爆発が行われました。その空中爆発に対して[長門]は、ほとんど無傷でした!第2回目の水中爆発でも艦体にダメージを受けるものの生存。その後、沈没しました。[長門]は2度の核爆発に耐えた戦艦なのです」


「こいつは、なかなかの剛健だったという事か」


 戦艦[長門]の艦長である大佐が、嬉しそうにつぶやいた。


「伊上君。後で私の部屋に来なさい。最高のスコッチをご馳走しよう」


 よっぽど嬉しかったのか、艦長は上機嫌だった。


「そう言えば穹井君。君は空軍だが、軍艦は何が好きなのかね?」


 山本が、穹井に顔を向ける。


「私は空母[瑞鶴]です」


「うむ。さすがは飛行機乗り、空母を出したか・・・」


「空母[瑞鶴]は、彼らの記録の中では幸運艦として認定されていますからね」


 黒島が、口を開いた。


 再び戦艦[長門]の艦橋内に、轟音が響いた。


「また未来人による、遊覧飛行か!?」


 宇垣が、叫ぶ。


「どうやらそのようです・・・ですが、今回は自衛隊機ではありません」


「何だと!?」


「見張り員!対空捜索を開始!」


 艦長が、叫ぶ。


「この音は・・・」


「わかるんですか?」


 石垣が、穹井に尋ねる。


「ええ。これでも飛行機乗りだ」


「右舷上空!噴進機を確認!」


「石垣君。確認してくれ」


 山本が、指示をする。


 石垣が双眼鏡を覗く。


「F/A-18」


「ジェット戦闘機を確認!機影は、F/A-18です!」


 石垣が報告する前に、穹井が答えた。


「あれは複座型・・・という事は・・・」


「F/A-18F[スーパーホーネット]だ」


「穹井君。未来の米軍機は、何をしに来たのだ?」


 航空参謀が、聞く。


「目的は・・・」


 穹井が、双眼鏡を覗く。


「ああ・・・」


「わかったのか?」


「ええ、恐らくですが個人所有のデジタルカメラで、戦艦[長門]以下聯合艦隊を撮影しに来たのです」


「なんだ、そりゃ・・・」


 誰かが、つぶやいた。


 当然ながら、空母[赤城]及び空母[龍驤]の上空警戒中の艦載機が、現れたF/A-18Fを追跡する。


 しかし、簡単に振り切られてしまう。


「どうやら私たちは、遊ばれているようだな・・・」


 山本が、苦笑する。





 昼食の時間となり、戦艦[長門]では、乗組員たちが昼食を取り始めた。


 聯合艦隊司令部の司令長官、参謀長、先任参謀、各参謀たち及び要員たちは、戦艦[長門]に設置されている作戦室に集まり、司令部作戦室係の水兵たちが配膳した食事を前にする。


 今日の献立は、白米、豚汁、焼き魚、漬物、炒め野菜である。


「さあ、食べよう」


 山本の言葉に、聯合艦隊司令部幕僚たち及び要員たちが、「いただきます」と、手を合わせた。


「石垣君は、『美味しい、美味しい』と、春の咲いた花のような笑顔で、戦艦[長門]の食事を食べてくれたが、君たちの口に合うかどうかわからないが、主計課たちが腕によりをかけて、作った。戦艦[長門]の食事だ。遠慮せず食べてくれ」


「はい!いただきます!」


「いえ、戦艦[長門]のオリジナル料理が食べられるなんて過激です!自分、涙が出て来ます!」


「・・・涙を拭きたまえ」


 宇垣が、伊上の大袈裟過ぎる感激振りに、やや引き気味に声をかける。


 水兵が、ハンカチを渡す。


「ありがとう」


 伊上は、渡されたハンカチで目を拭う。


「しかし、石垣君の話では、戦艦[長門]だけでは無く、横須賀鎮守府の海軍カレー等の料理は、未来では再現されていると聞いたぞ。再現料理の味はわからないが、未来の食事の方が美味いのでは無いか?」


 黒島が焼き魚を箸で摘まみながら問いかけてきた。


「そんな事は無いです!未来の食事は、様々な調味料が開発されているため、再現料理もオリジナルとは異なる味になっていると、知り合いの料理人が言っていました。それに、再現料理は、ほとんど保存性が効くレトルト食品や缶詰、冷凍食品の場合が多いです。オリジナルとは違います!」


「そ・・・そうか・・・」


 黒島は、無駄に熱がこもった伊上の主張に若干引きながら、頷く。


 伊上は、豚汁の汁を啜る。


「うわぁ~!何て、美味いんだ・・・身体に染み渡る・・・」


「そ、そうか・・・」


 宇垣も、その感激振りに付いて行けないような顔をしながら、伊上を眺める。


「私たちとしては貴官等の艦艇での食事がとても美味かった。特に潜水艦視察で[おやしお]型潜水艦、[そうりゅう]型潜水艦、[たいげい]型潜水艦を視察した後、潜水艦料理が提供されたが、とても美味かった。菊水総隊旗艦である指揮艦[くらま]での食事会に出された食事も美味だった」


 山本が、白米を口に運びながらつぶやく。


 これは普段食べているものだから、あまり興味も、その味の美味さを理解出来ないのだろう。


 聯合艦隊司令部の司令長官、参謀長、先任参謀、各参謀及び要員たちは、戦艦[長門]の食事を毎日口にしている。


 そのため、あれが当たり前だと認識しているため、それを基準に考えてしまう。


 戦艦[長門]の食事は、戦艦[大和]が聯合艦隊旗艦となるまで海軍一の料理を提供していた。


 対する自衛官たちは、自分たちが提供されている食事が当たり前だと認識しており、味も濃いものになっている。


 しかし、80年前の食事というのは新鮮なものであり、自衛官たちにとっては、とても貴重な体験である。


「この焼き魚・・・とても美味い」


 伊上が、幸せそうな顔を浮かべる。


(まあ、ナポレオンも言っていたな。軍隊は胃袋で動く・・・)


 石垣が、麦茶を飲みながら心中でつぶやく。


「しかし、私としては硫黄島基地での食事が楽しみだ」


 山本が、つぶやく。


「はい!硫黄島自衛隊施設は、陸海空自衛隊が共同運用する施設です。本土からも離れており、楽しみもありません。そのため食事にはとても力を入れています」


 伊上が、説明をする。

 インドパシフィック合同軍編 第3章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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