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私は……道になりたい  作者: いの ごん
1/3

スカートの中と踏みつけられる快感

 フワフワと揺れるスカート、その中に見え隠れする下着。

 ああ、なんて官能的なのだろう。何も身に着けていない女体より、ずっと、エロい。特に、色気を売り物にするプロなんかより、清楚で汚れを知らないそれは最高だ。


 商店街にある大きめの本屋。三人の女子高生達がファッション誌を見て楽し気にしている。昔ながらのセーラー服、この近くのお嬢様学校の制服。皆、ズッピンに黒髪。スカート丈はヒザすれすれ。超ミニの茶髪ギャルとは大違い。

 私の動悸は速くなる。この子達の下着は絶対に白だ。それも、ヘソ近くまである。そっと、彼女達に近づく。真横まで近づくと、足をさし出した。靴先がスカートの下に……

 よし、これで、上手く撮れる。

 ほくそ笑んだ時、

「おい! お前、何やっているんだ!」

 怒号が響いた。後ろに店のエプロンとつけた男が立っていた。

「わ、私は何も……」

「嘘をつけ! その靴先、何かついているだろう。隠しカメラか?」

「ちがう」

「なら、その靴を見せてみろ」

 ヤバイ! ばれた。靴先に穴を開け、カメラをつけた。

 身をひるがえし、走った。逃げなければ、捕まったら人生が終わる。店員が追いかけてくる。必死で店の外へと出た。

「その男を捕まえてくれ! 痴漢だ!」

 道に居た女達は身を引く。そこを通り抜けようとしたが、何かが足に引っかかった。つんのめって盛大に転んだ。

「え? 何? こいつ痴漢?」

 若い男の声。

「ああ、盗撮だ。足を引っかけてくれたのか。ありがとう」

「やだぁ~ 盗撮だって。最低~」

 若い女の声と同時に、背中に痛みが走った。倒れている私を蹴っている。横目で伺う。

 可愛い! 大きな瞳にタヌキ顔。ドストライプ。

「変態! キモ! 死ね!」

 顔に似合わない罵声。蹴るたびに、下着が見える。ブルーの光沢。白じゃない。でも、何だろう?

すごく気持ちいい。下着を見ながら蹴られるのが、ここまで、快感とは……

 ああ、道はいいなぁ。 いつも、こんなアングルでスカートの中を見て、足蹴にされている。

      私は、  私は……道になりたい。


 体がヒンヤリとしている。ここはどこだ? 何をしている? 頭がボンヤリする。

 しばらくすると、コツコツという足音。そして、踏みつけられるような痛み。

 ハッとした。 そうだ! 私は……


 あの盗撮の後、逮捕され、全てを失った。会社は解雇され、親からは絶縁された。一流大学卒の銀行員がホームレスになった。三十代後半の性犯罪者に世間は冷たかった。

 そして、あの日、やけ酒で酔って、道に寝転がった。道はこんな私にも優しい。やはり、道はいい。全身を擦りつける。その時、車が来た。暗がりに寝ている私に気が付かず……


 そう、私は死んだ。じゅあ、ここに居る私は? 再び、音が聞こえる。

 カツカツ  ペタペタ

 軽い痛みと重み。その瞬間、映像が見えた。目でというより、脳裏に浮かんでいる。

 ローヒールの靴、短めの赤いスカート、そして、薄手のパンストの奥に見えるピンクの下着。

 え!?  スカートの中? まさか?

 今度はペタペタという音と共に、ずっしりした重み。そして、汚れたズボンにくたびれたサンダルが引きずるように踏みつけて行く。

 全身が震える。 ああ、なんてことだ! 神は、神は、願いを聞き入れたくれた!  

       私は…… 道に転生したのだ!  

 

 その時からバラ色の日々となった。誰にもとがめられず、道として、行き交う人を見上げ踏まれている。私の上を通る時に映像が浮かび、踏まれる痛みを感じる。そして、近くの音や声も聞けた。

 私は住宅街の遊歩道だった。


 コツコツ コツコツ

 数個のローファーの音。女子高生達。

「ねぇ、帰りにマッ〇に寄ってく?」

「うん、私、新作パイ食べたいんだ」

 声が近づく。来るぞ。来るぞ。

 濃紺のスカートに黒のハイソックス。その先は生足にイチゴ模様の下着。もう一人は水色。グリッと踏みつけて行く。  至福の時。


 だが、たまに、最悪の時もある。

 ボロボロのおっさんのズボン、立ション、ヘソ上のババアのズロース、クソのついた幼児のパンツ。


 カツカツ 

 高いピンヒールの音。きっと大人の女。映像が浮かぶ。

 赤いピンヒール、アミタイに包まれた長く綺麗な足、紫のタイトスカート。好みではないがモデル並みの見事はプロポーション。これはこれで、そそられる。下着は黒の紐パン。

 あれ、あれは何だ? パンツの前が膨れ、横からチョロリとはみ出ている。

  ! !  !

 あれは、男のアレ! 男のハミ〇〇なんか…… ヘドが出る!


 しばらくは何も見たくなくてボンヤリしていた。あんなもの二度と見たくない。

 パタパタ  パタパタ

 軽い運動靴の音が近づいて来る。 多分、小学生。幼すぎる。

「ね、リンちゃん、今度ワンちゃんに会わせてよ」

「うん、いいよ。家に来て。すっごく可愛いんだから」

 ビックッと全身が震える。何? 何だ? この可愛らしい声は? 少し甘えたようで、それでいて澄んだ声。二次元美少女の主人公並みの声。

   一瞬にして、その声に、私の心はわしづかみされた。

 

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