終【8】リリーノヤボウ③
ん~~、と。首を傾げ宙を睨むアルフィーはゆっくりと此方に目を向けた。
「リリーが本気で男性給仕やりたいのならいいんだけど、一応お仕事だからね。本気でやらないと他の従業員に迷惑かけちゃうよ? 給仕って思ってる以上にホールで気を遣ってるの、リリーは分かってるかな?」
「え?」
キョトンとするリリー。
「彼らがお客様に呼ばれてなくても何度も席の周りグルグルまわってるの、何でだか分かる?」
「え! そんな事してたっけ?」
一度も気に留めていなかった事を言われ、驚いた顔をするリリー。
「うん。ここは特に広いからね念入りにやってる。お客様の要望にすぐに対応出来るように常に動いてるんだ。初めて給仕をやった人は脚がパンパンに腫れる事もあるよ。さり気なく水のお代わりをしたり、小さなゴミが落ちてたら拾ってポケットにそっと入れたり、お客様の持ち物に目を光らせたりしてるのさ」
「荷物?」
「店の中で騒ぎにならないように常にお客様を見張ってるって言ってもいいかもね。店で持ち物が無くなったとか騒がれても困るし、営業妨害に繋がるような事されても困るだろ?」
「注文取って運ぶだけじゃ無いんだ・・・」
「うん。店によって方針は違うだろうけど。でもウチの店舗は全部そう指導してる。まぁ企業努力の一環かな」
フフフッと笑いながら首を傾げ、ベッドの上に座るリリーの顔を覗き込む。
「公爵家の給仕係だって壁際で待機して常に要望に答える為に気を張ってるだろ? それと一緒だけどね。店では一つのテーブルだけに気を使う訳じゃないからね」
パチンとウィンクをするアルフィー。
「リリーが本気でやりたいんなら教えるけどね。でもさ、もう少しだけ考えてみたら?」
「・・・うん」
「俺は、リリー以外の女性なんかおよびじゃないし、モテたいとも思ってないよ。リリーが嫌なら店では女装でいてもいいんだし」
「え?!」
「そんなに不思議?」
クスクス笑うアルフィーに思わず恥ずかしくなり俯くリリー。
「だって、オーナーが女装じゃ変に言われないかなって・・・」
「あ~、成る程ねぇ。でも、まあ当分は俺は店には出ないから」
「へ?」
『ヨイショ』と言いながら、リリーの横に座るアルフィー。
「店は軌道に乗ったし、ホールマネージャーも決まったから暫くお休み。そもそもまだ新婚旅行にも出発してないだろ?」
「・・・うん」
それは誰のせいなのかを問い正したい所だが、藪蛇になりそうなので黙るリリー。
「商会の方にも行かなきゃ駄目だしね」
リリーの肩をそっと抱き寄せて
「可愛い奥さんをもうちょっとだけ独り占めしたいし。ね?」
サラサラの黒髪を一房手にとって、彼女のつむじに甘いキスを落とすアルフィー。
「・・・うん」
彼のガウンからフワッと葉巻と珈琲の匂いがして、リリーはドキリとする。
「それに」
「それに?」
「もうちょっとだけ食べたいかな」
「え、あゴメン私ばっかりサンドイッチ食べちゃって・・・」
「ん~~、ソッチはいいから」
そう言いながらスルッとガウンを脱いで、遥か向こうにあるソファーに放り投げるアルフィー・・・え? まさか。
「サンドイッチより奥さんかな? 俺の食べたいのは・・・嫉妬とかしてくれちゃって嬉しいなぁ~。なんて可愛いんだろ俺の奥さん」
「ひいええぇ・・・」
アルフィーのキラキラした笑顔の目だけが、やたらめったら色っぽかった気がしたのを最後に覚えていたリリーであった・・・
仲良きことは美しきかな・・・
アルモンド夫妻の新婚旅行の出発は一週間後に決定したそうな。
了
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presents by.hazuki.mikado
残念令嬢の逆襲~残念とか言われ続けて嬉しいわけがないでしょう?~ オマケSS
最後までお付き合い頂き誠にありがとうございましたッ!!!(≧(エ)≦)




