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【1】コウシャクフサイ

本編を最後までお読み頂きありがとうございました(_ _)


感謝の気持のオマケで御座います(「`・ω・)「  レッツゴー↓



 「これでやっと落ち着きますわね」



 新緑を思い出させるような鮮やかなグリーンの瞳を細めてすぐ横に立つ夫の端正な顔を下から見上げるオフィーリア・アガスティヤ公爵夫人。



「そうだね。リリーには長い事嫌な思いをさせてしまったよ」


「ええ。もう何度お義兄(にい)様をぶん殴ってやろうかと思ったことか・・・」



 何かを思い出して、右手をぐっと握った途端に閉じた扇が『ミシミシッ・・・』と悲鳴を上げる。



「まぁ、ソレは私も一緒だが・・・君は()()()()でも()()一回(国王)を殴ってるでしょう」



 苦笑する公爵閣下。



「そもそもあの披露目の茶会の時フィルバート(馬鹿)が『残念』などと大きな声で言わなければ、他の手段を使って不届き者(反国王派)を炙り出しましたのに・・・」



 思い出すとついつい目が据わってしまう(よわい)40歳の美魔女。


 その背中を労るように撫でる公爵閣下。



「兄はああ見えて、策略家だからな。又我が家の役割(裏王家)も重なっていたせいで目を瞑らざるを得なかったのが何とも悔しいがな・・・」



 そう言いながら彼らは視線の先、大聖堂の神官の前に立つ花嫁を見つめる。


 マーメイドラインのウェディングドレスは真っ白のビスチェスタイルで、ビジューの付いたレースの長いトレーンが後ろに続いている。


 天井近くのステンドグラスから日の光が降り注ぎソレはキラキラと光を反射する。


 夜会巻きにした艶のある黒髪は、半透明に烟るウェディングベールの中に収められており、こちらから見る事は出来ないが真っ白なパールピンで飾り付けられている筈だ。


 その美しい後ろ姿だけでも娘のリリーが喜びで輝いているのが見て取れた夫婦は思わず微笑んだ。


 隣に立つ花婿であるアルフィー・アルモンド伯爵はグレーっぽいシルバー色のタキシードを着こなしているが、どうやら花嫁をチラチラ見ているらしく若干落ち着きがないようだがこちらも幸せに頬を緩ませている。



「まさか、リリーがアルフィーと一緒になるなんて考えもしなかったわ」


「うーん、失礼だとは思うけれど君は意外と鈍感だからねぇ」


「旦那様だけアルフィーに聞いてたなんて全然知りませんでしたわ」



 若干口を尖らせて、不満の意を示すオフィーリア。



「はははゴメンよ。リリーの婚約が整ったときに、彼から面会の申し込みがあったんだ。諜報活動はそのままで、経営を学びたいってね。その時に、ひょっとしたら彼はリリーが好きなんじゃないかな、とは思ってたけどね」


 小さな声で、妻と会話をする公爵閣下の目は懐かしいものを見るようにアルフィーの背中を見つめる。



「その時に教えて下さったら良かったのに・・・」



 口を尖らせたまま不満を漏らす妻の肩をそっと抱き寄せる。



「だって、ハッキリとは言わなかったからね、彼。『例え侯爵夫人になっても今迄のようにリリーを支え続ける方法を見つけます』としか私には言わなかったんだよ。其れは言ったろ?」


「ええ。まぁ・・・確かに」



 リリーによく似た濃紺の瞳を細め、



「あの時彼は、成人直前の17歳だったからそのまま学院(大学)に進んで経済学を学んだけど、まさかたったの1年で卒業するとは思わなかったよ」



 溜息をついた。



「3年かかるものを1年でって、あれは凄かったですわね」


「ああ。学院は基本午前だけの授業だから。午後や夜間も授業を受けて履修単位を取得さえすれば卒業は可能だけどね。普通そこまでする貴族はいないよ。しかも、宣言の通り諜報活動も疎かにはしなかったからね」


「王宮官吏からスカウトもあったと聞きましたわよ? 蹴ったらしいですけど」


「彼は(国王)を嫌ってるからねぇ。リリーの事で・・・」


「当たり前ですわね」



 フンッと鼻息を荒げるオフィーリア。



「でも、彼は私の目から見ると私や伯爵より中身は兄によく似てるよ。目的の為には手段を選ばない所や、時間をかけて策略を巡らすやり方とかね」


「ええまぁ。相手が『国』か『リリー』かという違いはありますけどね。『アルモンド』もアガスティヤの分家ですから王族の血が流れていない訳では無いですから何処か似るのかも知れませんわねぇ・・・ああ二人のサインが終わりましたわ」



 神官が二人のサインの入った婚姻証明書を親族や招待客達に向かい見せる様に両手で持ち上げると、その場の全員が拍手をした。


 勿論公爵夫妻も笑顔になり力一杯拍手をした。




 ×××




「綺麗だ、リリー」



 アルフィーはリリーのベールをそっと捲りあげると、少しだけ赤くなった顔で微笑んだ。



「ありがとうアルフィー。これからも宜しくね」



 弾けるような笑顔で答えるリリー。



「こちらこそ」



 そう言いながら、二人は軽くキスをする。



 神官に指示される通りに祭壇から二人一緒に降りていくと、再び拍手が聖堂内に響く。



「じゃあ、いこっか」



 仲良く微笑みながら大聖堂の出口へとゆっくり歩いていく中、周りの親族や招待客に向かって嬉しそうに手を振るリリー。


 アガスティヤ公爵家とアルモンド伯爵家だけでなく、国王一家やアガスティヤの派閥の貴族の姿も見えた。



 何故かフィルバート王子がハンカチを持って号泣しているのが不思議で思わず首を撚るリリー。



「どうした? リリー?」


「え、え~と、何故かフィルバートが大泣きなのよ、どうしたのかしら?」


「アイツ・・・ひょっとして今の今迄無自覚だったのか・・・?!」


「?? アルフィー、何か言った?」


「うーん、もうちょっとしてから教えるよ・・・」


「?」



 何だか変な顔をするアルフィーにもう一度首を傾げるリリーだが後で教えてくれるのならまあいいか、と思い直す。



「じゃ、今度こそ行こうか」



 と。今日から夫になった愛する人に促されて花びらが舞い散る絨毯の上を彼にエスコートされて歩き始めた・・・




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