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38 残念令嬢葛藤する

 アルフィーとの今日の外出は初めての経験が沢山あってドキドキの連続だったなと、ベッドの上で横になりながら思い出してはニヤつくリリー。


 ――第3王子に出会ったのが今ひとついただけない出来事だったが、あっという間に彼が去った為どうという事もない些細な出来事である――



 今日の教訓を生かして、明日からはアルフィーの店に行く時は暫く男装をしなくちゃな、と考えるが



「つまんない・・・別に男装が嫌な訳じゃないんだけど・・・」



 男性の姿をして全く知らない自分になってみて、外出する事によって色んな事に気がついたリリー。


 何より人の目が怖くなくなったし、言いたい事、やりたい事を両親に対して口に出せるようにもなってき始めたのを自分でも実感している。


 しかしここに来てアルフィーの前では出来る限り綺麗な女の子の自分でいたいという欲が心の奥に燻ぶっている自分に気が付いたのだ。


 アルフィーは幼馴染であり、リリーが急に綺麗になったからと言って態度を変える事は無かったがそれでもやっぱり自分の可愛い姿を見て欲しいと思うリリー。


 ついでに婚約者に対しては、そんな事を1度も考えた事が無かったな~という事実にも気がついてしまった・・・



「・・・これって多分アルフィーが好きだって事なんだよね・・・でもルパートとはまだ婚約中だし・・・」



 ルパートが色々な女の子達に誘われ、一緒にデートに出掛けているらしいという噂は度々耳にはしていた。


 それでもリリーと会っている時は物凄く優しいし、礼儀正しくマナーは完璧だったため疑っていても完全には信じていなかったのだ。


 それ故に自分には過ぎた婚約者だと今迄思っていのだが、実は2ヶ月程前にアルフィーのカフェの入口に面した通りを若い女性と腕を組んで楽しそうに歩いていく姿を見たのである。


 しかもこの間はケーキカフェで美少女とイチャついていたのを自分の目でしっかりと確認した。



「何でアレが未だに婚約者なのかしら・・・」



 思わず眉根を寄せるリリー。


 しかも同じ派閥の公爵家の令嬢だとも周りの女性達がウワサしていた。よく考え無くとも不誠実極まりない男である事は明白だ。


 両親に夕食の時確認したが政略婚など考えなくてもいいのだと言われ、更には婚約を白紙に戻す為に今は準備している段階だと両親も兄も言ってくれた。


 どんなに優しくても離れた途端に他の女性に目移りするような浮気男が自分の夫になったら、絶対後悔するだろう。そんなの火を見るよりも明らかである。


 なんで今までその事を考えなかったのかと今更ながら怖くなる。



「本当に私って、自信がなかったのね」



 重い溜め息をつくリリー。


 今は出来る限り早急に婚約が解消されるように祈るばかりである。




 ×××




 「今日のリリー綺麗だったなぁ・・・」



 閉店後のカフェの中、カウンター席に座って若干ぽややんとしているアルフィー。


 今はメイクも落とし、長くてフンワリした金髪も首の後ろで適当に一纏めにして開襟シャツにトラウザーズという男性スタイルだ。


 元々彼は中性的な容貌をしていてイケメンの部類に入る為、女性にモテないわけでも無いのだが小さなリリーに出会って以来、近寄ってくる女性に対して見かけの優しげな雰囲気からは考えられ無い程の塩対応の男である。


 但しロリコンでは無い。リリーが好きなだけだ。


 色んな事に器用さを発揮する癖に、ことリリーに関しては妙に慎重で公爵夫妻の前では兄妹のように振る舞い幼い頃からの恋心を夫妻にもアレクシスにもずっと見せなかった。


 そのせいでルパートに婚約者の座を持っていかれたという経歴は黒歴史である。



「姫が綺麗な事は判ってたでしょう? 今更何を言ってるんですか・・・」



 はぁ、と後ろからため息が聞こえる。


 いつもリリーと出掛ける時に店を任せる青年だ。



「別にいいだろ。中々一緒に出掛けられん立場だからさ。最近のリリーはヤローの格好ばっかだったし」



 ハイハイ、と肩を竦める青年は手に持っていた報告書をアルフィーに渡す。



「ルパートのやつ、とうとう()()ました。相手はあの例の仮病お花畑です。意外に奴のガードが堅かったのか、初犯(ハジメテ)だったらしく貞操を奪われたって侯爵夫人が告訴するって騒いだらしいです」



 眉根を寄せて報告する青年の言葉で周りのテーブル席にいる数人の男達が『ブフォッ』と変な音をさせてコーヒーを吹いた。



「あー、言いそうだな。あのママゴンじゃな。まあアイツ(ルパート)もある意味被害者かね」


「ま、証拠も揃ったし。間に合って良かったじゃん」


「姫がもちょっと早く気がついてくれてたら、俺等も慌てなかったんだけどな」



 開襟シャツに黒いトラウザーズ姿の男達は、各々がソファーの背もたれに自前の得物の納められたナイフホルダーを引っ掛けてくつろいでいる。


 全員がこの店の常連客であり、公爵家お抱えの諜報員でもある。



「この報告書にある外交マナー担当の元家庭教師を至急捕縛しろ。貴族派の娘だ。わざわざ外国籍まで取ってリリーの教育を捻じ曲げた奴だ」



 アルフィーが丸テーブルの上に資料を放り投げると、すかさず一人がキャッチする。



「へえ~、貴族派も慎重っすね。結局バレちゃ意味が無いけど」



 肩を竦めながら言ったその言葉が合図になった様にソファーに座っていた男達が席を立って次々にドアから出て行く。



「内戦にならないだけマシだって思ってくれるといいけどねえ~」



 ドアを閉めながら最後尾の男性がそう言ったのが聞こえた。




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