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34 残念令嬢と第3王子。

 アルフィーと共に不動産屋の社長に案内された場所は、王都の中心部に近い貴族街の中にある店舗だった。



「ここ、王城が見えるのね?」



 馬車から降りたリリーは白亜の城が見えることに気が付いた。



「そうで御座います。この辺りは貴族街でも上位貴族の方々が主に御利用なさるような場所でして、滅多に空きは無いんです。王城も近い為しっかりとした身元保証が無い方はお断りせざるを得ない物件なんです」



 不動産屋の社長は、公爵家の紋章付きの馬車から降りてきた美女2人を失礼のないように案内することに神経を最大限に使っているようで、時折ハンカチで額を拭いながらこっそり胃のあたりを(さす)っている。


 一緒に来た社員もガチガチで、店舗の鍵を開けるのに手が震えているのか妙に手間取っているようだ。


 その間に周りの景観のチェックをするアルフィーと店舗の見取り図を覗き込むリリー。



 ――お店の下見なんて初めてだわ! それになんて可愛いお店!!



 白塗りの壁で2階建ての屋根は鮮やかなブルー。


 前庭はなく玄関ポーチは赤煉瓦をアーチ状に組んでいて、木枠で出来たドアにはステンドグラスが嵌っている。


 縦長の窓枠も屋根と同じブルーに彩られていて窓の外側には黒いアイアンで出来た洒落た面格子があり、南部にあるリゾート地のように赤やピンクのゼラニウムを置いたら素敵だろうな、と想像してみるリリー。



 顔にはあまり出さない様に気を付けてはいるが初めての経験にワクワクしているためリリーの目はキラッキラだ。


 やっと店のドアの鍵が空き、足を踏み入れようとした時、



「あれ? リリーじゃないか~」



 と、すっとぼけたような気の抜けた声がする。



「・・・ご機嫌よう、フィルバート」



 若干ムスッとした顔になりそうな顔の筋肉を叱咤激励して笑顔を貼り付けるリリー。



「よう、久しぶりだなあ。って、お前急に綺麗になってどうしたの!?」



 薄茶の長い髪は後ろで括り、好奇心いっぱいの若草色の目はいつも何か楽しそうなことを見つける為に輝いているのだが、今日に限っては驚きで目のサイズが倍になったように見える。



「あの、お嬢様、此方は・・・?」



 社長がおずおずとリリー達2人に質問をするが



「あ、気にしないで下さいませ。()の知り合いですから~」


「うっわ、キッツ。リリー、いい加減に諦めて仲良くしようぜ~」


「やだ」



 思わず膨れっ面になり、ササッとアルフィーの後ろに素早く隠れるリリー。



「うわッ、露骨に避けられた」



 胸を押さえてヨロヨロとする。



「わー、パフォーマンス相変わらず上手ですね~フィル?」



 笑顔のアルフィーが拍手する。



「え? あれ、リリーお前、姉ちゃん居たっけか?」


「やだぁ、殿下忘れたの? 冷たいわねえ」



 ススっとアルフィーが顔を近付けると顔が赤くなり、うわっと()()るフィルバート。



「っわわ、ちょ、ちょっと」


「バーカ、俺だよフィル。アルだよ」


「!?」



 耳元で囁かれてギョッとした表情になったフィルバートは思わずアルフィーの顔を二度見する。



「うえっ! 鬼教官!!」


「あらあ、酷いわフィリアって呼んでくれていいのよ~。あら、殿下と私の名前似てるわねえ。やだ、今気がついたわ。二人共フィルだわね」


「めめめめッ滅相も御座いませんッ! 失礼しましたッ!!」



 いきなり45度のお辞儀をするとクルッと踵を返し、王城に向かって全力で走り出す第3王子フィルバート。


 そして護衛騎士達も慌てて追いかける。



「何あれ? フィルバートったら一体どうしたの?」



 ポカンとした表情でフィルバートの背中を見送るリリー。



「ん? 何か用事でも思い出したんでしょ。じゃ、内覧しましょうか」



 ニコニコ笑うアルフィーに社長が



「あの、先程の方はもしや・・・」


「あ、あれ? あれはお城の三男坊よ」



 オホホホと笑いながら、リリーを引っ張り店へと入っていくアルフィー。



「「第3王子殿下・・・」」



 社長と社員が同時に胃を押さえたらしい・・・



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