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18 残念令嬢の身分詐称?

 そもそも高位の貴族達は貴族街とはいえ、一人だけで市井を歩き回ったりはしない。特に女性は例えお忍びであったとしてもそれとは分からぬように護衛や従者が近くに控えている。


 リリーが一人でアルフィーの元にやって来てうろちょろ出来るのは、(ひとえ)に父である公爵の教育方針である『己に降り掛かる火の粉は己で払えるようになる』があるからだ。



 ――と言っても勿論公爵家の『影』は見えない形で張り付いているので行動は筒抜けなのだが。



 高位貴族の子女になればなる程、気になる異性がいたとしても見ず知らずの相手に社交の場以外では直接自分で声を掛けたりはできない。身持ちが悪いと思われるからである。

 それでも声を掛けたい時は自分の連れている従者や護衛を使って相手に意思表示、要は()()をかけるのだ。


 今日のリリーは嫌というほど女性に注目されたようで、その対応をせざるを得なくなったのは当然アルフィーだ。


 彼は次々とやってくる使者と、隣にいるアルフィーなど目に入らないと言わんばかりにアピールしてくる女性陣を、言いくるめて追い返す作業に追われた。



 身分に対しては――やんごとなき、名前に関しては――明かすと揉め事になる、既婚かどうかに関しては――失礼極まりない、アルフィーが恋人かどうかという質問に対しては――今はまだ、というセリフをひたすら繰り返すのだ。


 まるで今日の自分はオウムだったな、と思い出して苦笑するアルフィー。



「ごめんね、何だかアルフィーに全部対応させちゃって」


「まぁ、仕方ないさ。デートに誘ったのは俺だから。面倒事の対応はしなくちゃね」


「でもエスコート役は私だったのに」


「ウ~ン、でもさ、どう見たってリリーはこう言っちゃなんだがやんごとなき身分の青年って感じだからなぁ。俺の方が対応するのが当たり前だろうね」


「え、でもアルフィーは上品そうな貴族女性に見えるよ?」


「いやいやいや、リリー、鏡を見て物を言え」


「?」


「そもそもお前、自分が()()だって忘れてるだろ?」


「いや、まあ王位継承権は放棄してないけどさぁ」



 そうなのだ。


 王弟の長女である彼女は継承順位としては第5位で、周りが認識している以上には玉座に近い人物である。父親である公爵が継承権を放棄しているので認識出来ていない貴族の子息子女は多いが、本来なら『残念令嬢』などと揶揄する事自体が不敬なのだ。


 普段女性として異端だと思いこんでいるリリーが何も言い返さない為、見逃されているに過ぎないのである。



「ねー、今日のアルフィーの対応はありがたかったけどちょっと大げさ過ぎなかった? 身分詐称にならないかなぁ?」



 今一つ無自覚なリリーに頭を抱えるアルフィー。



「間違ってないよ。性別詐称はしてても、身分は国王陛下の姪だろッ!」



 『あ、そうだった』と言わんばかりに両手をポンと打つリリーに、しっかりしろよと言いたくなって天井を思わず仰ぐアルフィーである。




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