私はどうしようもない(杏寿菜視点)
緋月君が出て行ってしまった。あの日から何日たっただろう?もう明日には学校が再開される。
結局私は何も出来なかった。最後までお姉ちゃんに同調することしか出来なかった。緋月君が大変だと気づいていたのに何も出来なかった。
お姉ちゃんはキツい言葉をかけ私は無視。緋月君が出ていくのは当然のことだと言えた。どうして私はあの時話しかけなかったんだろう?どうして私は変われなかったんだろう?
分からない。
結局私には何も分からない。分かろうとしない。都合の悪いことは分からない方が楽だから。結局そこに行き着く。
楽だから。
楽だから私は周りに合わせるし自分で考えない。だから最近お母さんの機嫌が悪くてもお姉ちゃんと同じように話しかけない。だって話しかけて嫌な顔されたら嫌だから。お姉ちゃんが話しかけてないから。…私は話しかけてもいいと思うけど。
でもやっぱり責任が私にかかるのは嫌だから行動に移さない。私は変わらない。変われない。変わろうとしない。
「…お姉ちゃん」
「…なに?」
最近お姉ちゃんにも明らかに元気がない。しんどそう、と言うかどこか落ち込んでいるような…
「…なんでもない」
「…そう」
だから私は後に続く言葉を口の外に出すことが出来なかった。
緋月君に謝らない?本当はそう言おうと思った。でもそれを止める私がいる。言ってはならない。言ってしまってはめんどくさい事になる。
最近になってお母さんの機嫌が悪くなってきた。1人でブツブツ言ってるし目つきも悪くなっている。お父さんにも
「どうしてあなたは家のことを何もしてくれないの?!」
と言っている。
怖い。あの頃のお母さんと同じだ。あの人と離婚したばかりのお母さん…いや違う。離婚するちょっと前からのお母さんと同じだ。
なんでお母さんはあんな顔になってたっけ?あぁ、そうだ。確か前のお父さんが仕事で疲れていつもお母さんと分担していた家事を忘れて寝ていた時、お母さんの機嫌が悪くなった。どうしてあなたは私とこの子達のことを考えてくれないの?と怒っていた。お父さんは謝っていたけどお母さんの機嫌は治らなかった。私はその時、お父さんだって仕事で疲れてるんだから少し休ませてあげよう?って言ってあげたかった。でもやっぱり私は何も言えなかった。思えば私がお父さんに裏切られてからお姉ちゃんに同調していると言っているのはただのこじつけなのかもしれない。だって私はあの頃と何も変わっていないんだから。
浅ましくて汚くてどうしようもない。
そんな自分が嫌い。だけど完全には嫌いになれない。同調している間は楽だから。何も考えなくていいから。私に責任が無いから。
だから私は同調を辞められない。責任を負おうとしない。
本当に
どうしようもない。
2話目です!
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