精神科
昨日の感想で、この話の場合心療内科ではなく精神科ではないか?との指摘があり、調べてみたところ確かに心療内科ではなく精神科の方が合っているため昨日の話を訂正致しました。訂正してくださった方、ありがとうございました。
「え、な、なんで精神科なんかに来たんですか?」
精神科って確か精神疾患を患っているような人達が行くところだよな?誰がここで診てもらうんだ?
「…言いにくけど緋月君、君は…何か心の病気を患っているかもしれない」
裕二さんがそう言ってくる。
「…」
隣に居た柚木は何も言わない。
「い、いやいや。そんなことないですよ」
俺は別に普通だぞ?
「そう、だといいんだけど…」
「ま、待ってくださいよ。別に行かなくても…」
「ダメ」
行かなくてもいいんじゃないか?そう言う前に柚木が俺の言葉を遮ってそう言った。
「柚木…」
「診てもらって何もなかったらそれでいいじゃん。だから1回診てもらおう?ね?」
「…わかったよ」
多分何もないと思うけどな。
「うつ病…ですね」
目の前の白衣を着た男性が俺に向かってそう言った。
「うつ、病?」
俺はそんなはずないと抗議する。
「いえ、うつ病です。最近、ネガティブなことばかり考えていませんか?ダメな方ばかりに思考が働いていませんか?」
「そんなこと…」
心当たりはあった。でも…本当に…?
「…」
「そ、それは治るんですか?!治るんですよね?!」
俺が押し黙っていると柚木がそう声を上げた。治る…治るんだろうか?もしこのままの状態だったら?そんな状態の俺なんて死んだ方がいいんじゃ…
「幸いうつ病なら治らないなんてことはありません。だから自暴自棄になったりしないでください」
「はい…」
俺はまだ自分がそんな精神疾患を患っているなんて自覚出来ていなかった。
「ここからは親御さんの方にお話があるのですが…」
「あ、あぁ…緋月君、柚木。ちょっと外に出てて貰えるかな?」
「…あ、はい」
俺はそう言ったが柚木はそれに納得しなかったらしい。
「嫌。私も話を聞く」
「こ、こら柚木」
「…いいですよ。居てもらって大丈夫です」
そして俺は外に出た。
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「うつ病とは精神的ストレスや身体的ストレスなどが原因で起こる病気です」
精神的ストレスと身体的ストレス…どっちも緋月に過度な程にかかっていたものだ。姉妹には毛嫌いされ実の父親には家のことを全て任された…到底私には想像出来ない。
「治るんですよね?」
私は恐る恐るそう聞く。
「はい。確実に治ります」
その言葉を聞いて私は少し安堵した。
「ですが確実に治るからと言って安心出来る病気ではありません。今から注意することを話します」
そう言われて少し安堵していた私はハッとする。
「うつ病を治すためには4つ程注意点があります」
そう言って病院の先生は私たちに話し始めた。
「まず最初は励ましてはいけません」
「それは…どういうことなのでしょう?」
お父さんが先生にそう訊ねた。私も意味が分からなかった。
「はい。うつ病の人に向かって「早く元気になってね」「あなたの元気がないと家族の元気が出ない」なんて言ってしまうと「早く治さないと」と思ってしまい余計に負担をかけてしまうことになります」
「な、なるほど…」
私は今まで緋月にどんな言葉を掛けてきた?負担になるようなことは言ってこなかっただろうか?
そんなふうに自分の過去の言動を思い返していると病院の先生が2つ目の注意点について話し始めた。
「2つ目の注意点は周囲の人が余裕のある態度をとっていることが大切です」
「余裕のある態度、ですか…」
「当人が1番動揺しているのに周囲の人が動揺すると更に心的ストレスが増加してしまいます」
最悪だ。私はさっき動揺して声を荒らげてしまった。そんなことしたら緋月にストレスがかかると何故分からなかったのか。本当に自分のどうしようもなさに嫌気がさす。
「3つ目は当人が『話すこと』と周囲が『聞いてあげること』が大切になります。うつ病にかかった人は1人で全てを抱え込んでしまう傾向があります。それを話させて聞いてあげてください。全てを抱え込んだ状態でいると、最悪自殺なんてケースもありますので」
あの時の緋月は1人で全てを抱え込んでいた。私はその重りを少しでも持ってあげられただろうか?自分では分からない。でも、持ってあげられていたらいいな。
「4つ目は、3つ目とほとんど一緒なのですが、抱え込ませないでください。先程も言ったように抱え込んでしまうと自殺してしまう可能性が出てきてしまいます」
「…分かりました」
お父さんは少し暗い声でそう言った。
「彼の年齢でうつ病にかかるのは稀です。それほど過酷な環境に居ると考えていいでしょう。環境の改善を検討してみてください」
「えぇ、もちろんです」
緋月…私が絶対にあなたを幸せにするからね。
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