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え、家族じゃないんですよね?  作者: はる
本編
14/37

来店

そんなことを思っていた矢先の事だった。


「いらっしゃいま…せ…」


来店してきたお客さんに笑顔で対応していた柚木が言った挨拶の後ろになればなるほど柚木声が低くなり顔が強ばっている。それは…そう。なにかに怒りを覚えているような…


「…なんでここに居るんだよ」


一体誰が来たのかと入店口を見るとそこにはよく見知った2人がいた。雅さんと杏寿菜さんがそこにいた。


「…何しに来たんですか?」


柚木が2人を睨みつけながら低い声でそう言った。


「え、ち、ちがっ!ほんとにここで働いてるなんて知らなくて…」

「なくて…」


雅さんがそう言ってそれに杏寿菜さんが同調する。


「…なら何しに来たんですか?」


もう1度柚木は2人を睨みつけてそう言った。


「そ、その、私たち、料理が出来なくて…だからここに食べに来たの…」

「来たの…」


本当なら直ぐに帰って欲しいところだがここが飲食店である限り迷惑な客などではなければ追い返すことは出来ない。だって彼女たちはただご飯を食べに来ただけなのだから。それを追い返していたらせっかく受かったバイトが直ぐにクビになってしまう。そうなれば俺たちの目的は果たせなくなる。


俺は厨房で少し断りを入れてから3人の元に向かった。


「いいよ柚木。お二人様ですか?」


俺はなんでもない事のようにそう言う。平常心だ。


「あ、う、うん…」

「…」

「ではこちらの席にどうぞ」


大丈夫。今は客と店員だ。それに徹すればなんてこと無いはずだ。


俺は案内している途中、1度も2人の方を振り向かなかった。振り向きたくない、が正しいのだろが。


「ではごゆっくり」


2人が席についたのを確認してから俺は踵を返した。


「あっ…」

「…」


雅さんがなにか言いたそうにしていたが俺は今店員だ。個人的な話はしてはいけない。だから俺は気づいていないふりをして足早に立ち去った。


「緋月…大丈夫?」


2人の接客を終えて柚木の元に帰ると柚木が心配そうな顔をして俺の事を見ていた。


「あぁ、大丈夫だ。心配しないでくれ」


俺がそう言うと柚木は更に心配そうな表情になった。


「…ほんとに?また嘘ついてない?」

「あぁ、大丈夫だ。今回は嘘じゃないよ」


あの2人と接することに何も感じていないわけじゃない。でも前よりは断然マシだ。だから俺の大丈夫だという言葉に嘘は無い。


「それならいいんだけど…もし家でなにか言われたりされたりしたら直ぐに私に相談してね?直ぐに緋月の家に行って2人を懲らしめちゃうんだから!」


柚木は頬を膨らませながらそう言ってくれた。


「ありがとう。心強いよ」


やっぱり柚木が幼馴染で良かった。きっとこれ以上の友人はこの先も現れないだろう。


「ん?あ!比島君何サボってるの?」

「え?あ、四条さん…」


柚木と話しているといつの間にか後ろに四条さんが立っていてそんなことを言われた。


「い、いやこれはサボってる訳じゃなくて…」

「はいはい、わかったから早く持ち場に戻るよ!」

「あ、ちょっと四条さん!」


俺は四条さんに手首をがっちり掴まれて厨房に連れ戻された。別にサボってたわけじゃないのに…


「…なんか緋月と四条さん仲良くない?え、私もしかしてピンチ?」


そんな柚木の声は店内の喧騒にかき消された。

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― 新着の感想 ―
[一言] おいおい この姉妹ここでも顔出してくるか 緋月それでいい 2人とも居座るなよ? 頼むから あの家まともなん緋月しかいないとかヤバすぎる
[気になる点] シングルマザーの状態で子供が家事一切出来ないのは致命的過ぎでは… お手伝いさんでも雇っていたのかな?
[気になる点] 姉妹は家事関係はすべてダメなのか?流石に洗濯位は出来るとは思いたいが。 [一言] この姉妹は成長しないな。料理ができないから外食って簡単な料理位は練習出来るだろ?二人共バイトとかしてる…
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