オフの日は休ませてくれ
「はわぁ~やっぱり、王都のスコーンは最高だわぁ~」
ロンドンの様なオシャレな街にあるアンティークなカフェのテラス席で優雅にティータイム。
今日はお店をお休みにして、王都に材料の調達も兼ねてショッピング。
「幸せそうに食べるねサツキは、カフェでスイーツ作ってるのに」
彼女は、木野原苺私の転生前からの友達だ。
「人が作るものと自分が作るものじゃ味が違うのよ」
「へー」
「それより、仕事大丈夫なの? 忙しくないの?」
「へーき、今日はオフだから」
彼女の仕事は国の騎士団の諜報員だ。
転生の特典で、隠密活動に適したスキルを手に入れたらしい。
それの能力を国に買われたそうだ。
「そーいや、金田と吉岡がサツキの料理を食べたがってたよ?」
「えぇ·····あの二人王族でしょ? いいもん食ってんじゃん」
「王子と王女だからねぇ、たまに城で会うけど超大変そう」
「ふーん、そういや諜報員って何やってんの? どこにスパイすんの?」
「いや、言ったらダメだからでも強いて言うなら敵国とかよ」
「敵国ねぇ·····」
「まぁ、魔族と敵対してんのに人間同士で争ってどうすんだかって話だけど」
彼女はため息をついて紅茶をすすった。
「あっ、魔族で思い出した、サツキのカフェに勇者2人きてんの?」
「来まくってる、うちの常連よ」
「はよ旅しろってな、吉沢は1人で魔王討伐の為、活動してるのに」
「へー、苺は転生者達が今何してるか知ってるの?」
「大体ね、仕事で色んな人に会うから」
あの事故で死んだのはたしか37人。
まぁ、私には関係ないや。
特に親しかった人は苺くらいしかいないし。
誰がどうなったとかどうでもいい。
まぁ、前世のよしみで店に来てくれるなら大歓迎だけど。
「あらぁ! 高級店に似つかわしくない顔だと思ったら、公務員のストロベリィさんじゃありませんかぁ!」
スイーツを堪能していたら人混みの中から変な貴族がやってきた。
「·····誰これ知り合い?」
「ジュエリア・ローズベルト。ローズベルト家のご令嬢。またの名を金剛寺美代子」
「金剛·····寺?」
「ちょっと! 何よその態度! つーか、シノノメ! 何知らないフリしてんだよ!」
金剛寺美代子、クラスの一軍にいたうるさいギャルだ。
ちなみに、クラスの人気者の苺と金剛寺は犬猿の仲だった。
「いや、別に·····あまりにも別人だったから驚いただけ、綺麗だね金剛寺さん」
ヘラっと笑ってそう言ったら彼女はふんぞり返ってお嬢様らしい高笑いを見せた。
「おーっほっほ!! そう! 貴方はまぁ、そうね、前と変わらないわね」
おうそれは、前と変わらず平凡な顔立ちですねと言いたいんかおんどれは。
「それより、貴方今まで何やってたのよ」
「えっと、丘の上でカフェ経営。カフェミヤコってとこの」
「はぁああああ!? カフェミヤコですって!?」
私のカフェの名前を出したら、物凄い驚かれた。
「あっあの、月刊ムーンに載ってたカフェミヤコ!? 」
「まぁ、多分そう·····でもその雑誌そんなに有名なの?」
「有名に決まってるじゃない! 国民全員が読んでいると言っても過言ではないわ!」
「へー、そんな有名な雑誌に載ってたのか·····」
だから、魔王様も私の店のこと知ってたのかぁ·····でも敵対しているとこの雑誌なんて読むの? まさか敵情視察!?
「まったく、カリオン様とレイス様も召し上がりたいと言っていたのよ? あぁ、金田と麗のことね、貴方他の転生者に興味無さすぎじゃない?」
「あははー皆みたいにチートスキルとかイージーライフじゃないからさぁ·····色々と忙しくて」
「まぁ、いいわ色々落ち着いたら私の家に来なさい、ご自慢のスイーツを振る舞わせてあげるわ」
「はっ、ははは、ありがとう」
お前が私の店に来いよと思ったが言葉を飲み込んだ。
「それでは失礼、つかの間の休日楽しんで~」
彼女は日傘をくるくると回して去っていった。
「ぐぬぬ、ご令嬢という名のニートめ!」
「まぁまぁ、悔しがることないでしょ。それにしても皆こっちの世界で楽しくやってるみたいだね」
「·····さぁ、どうだかね。特別な力があるからってそれが幸せとは限らないわよ」
そう言って彼女がティーカップを置いた瞬間だった。
「クルッポー!」
バサバサと忙しそうに翼をはためかせて白い鳩が飛んできた。
「げぇっ、伝書鳩」
嫌そうに肩に乗った鳩の足から手紙を外す苺。
「呼び出し?」
「あーうん、多分ね」
手紙を見た瞬間、苺の顔が真っ青になった。
「·····悪い、帰るわ。お代置いとく」
「あっ、うんじゃあね」
険しい顔をして、急いで帰った苺。
·····大丈夫かな、何があったか聞けなかったけど·····
その後、暫くしないで世界中に槍の勇者の死が伝えられた。