4 魔王様は自由人
「スイーツ、スイーツ、今日は何を食べよっかなぁ~!」
城の中をスキップしながら歩き回る。
ふふっ、大兄様が勇者に勝ったからお城もお祝いムードだし、人間界に行ってるのがバレてもあんまりお咎めないもんねー!
「あっそうじゃ! いつも作って貰ってるからお礼も持ってこー!」
キッチンに忍び込んで、冷蔵庫に入ってるフルーツを何個か手に持ってワープゲートを通る。
するとあら不思議、あっという間にサツキの目の前に立っているではありませんか。
※※※
「来たぞ! サツキ!」
「おっ、驚くから普通に入ってきてよ!」
最近毎日のようにアルティアが遊びに来る。
毎回変な風に店に入ってくるから、いつも驚かされる。
キッチンの真上から逆さまで来たのは流石に心臓が止まるかと思ったよ。
「ふはは! 気にするな! あとこれお土産」
「わぁ、ありがとう·····ってこれなに?」
化け物の死骸·····? これ全部モザイクつけなきゃだめなんじゃね? 滅茶苦茶気味が悪いんだけど。
「ディアの実とノシロ実、あとパッコリとロッペルゲーじゃ!」
·····何んだって?
「魔界のフルーツじゃよ、珍しいと思ったから持ってきた、これでスイーツとか作れるか?」
おぉ、流石ファンタジークオリティ。
とっ、とりあえず試食してみよう、このなんか滅茶苦茶どす黒いダークマターみたいなやつ。
この中で一番見た目がましだし、うん。
黒の丸い球体を一口噛じってみた。
「·····あっ、意外に美味しい。甘くてちょっと酸っぱい。おっきなブルーベリーみたい、これなんだっけ」
「ディアの実じゃな」
「これ冷凍できる?」
「うむ! 任せろ!」
アルティアがちょんと指でディアの実を触ると一瞬で凍った。
·····まっ、まじですか、絶対アルティアは怒らせないようにしよう。
「んで、生クリームと牛乳、砂糖、バニラエッセンスを用意して」
パンと手をはたいて
「ティーパーティー、発動!」
完成! ディアの実アイスクリーム!
「おぉ!! アイスじゃ! 食べても良いか!?」
「どうぞ、召し上がれ」
「うーん! ひんやりして美味い! 濃厚なミルクとさっぱりした甘さのディアの実がベストマッチじゃ! ·····ん? なんじゃ、なんか体が軽くなったような·····どれ」
アルティアがアイスに触れると、アイスの上にモニターが浮び上がる。
「うおおっ!? 何それ!」
「んあ? これか、これはステータスじゃ、妾のようなハイランクの魔人は、能力を数値化して見せることが出来るのじゃよ」
·····へー、なんかゲームの画面みたい·····ってこれよく転生もので見るやつ!
·····つーか、なんで私はつかえないの?
「状態全回復に体力回復、あと熱帯性向上が付与されるみたいじゃ」
えっ? なにその有能な回復アイテムは。
私が作ったの?
いつものケーキなら体力と怪我が良くなるくらいだったのに。
もしかして、魔界の果物のせい?
「おかわりじゃ! 次はどうする!? ロッペルゲーはどうじゃ!?」
「げっ、この芋虫の死骸みたいなやつ!?」
「何を言うか! このぷるぷるのところが甘くて美味しいんじゃぞ!?」
青紫のぷるぷるした所を無理やり食わせようとしてくるアルティア。
「ぎゃー! やめっ! ちょっ·····くぎゃっ!」
·····うっ、うっわ、めっちゃ·····
「美味しー! 何これ!? 超うまいんだけど!?」
「じゃろ!? 他のも食べてみぃ!」
「くっさ! 何これ!」
「パッコリじゃ殻が付いとるんじゃよ、ほれ剥いてみぃ」
「ん~! いい柑橘系の匂い! それじゃ、レッツティーパーティー!」
パンと叩けば、スイーツが。
そーれパンパン。
「パッコリのタルト、ロッペルゲーのケーキ、それと魔界フルーツのミックスジュース」
「それじゃさっそくいただきまーす!」
「私も頂きます」
「「んー! うまぃ!!」」
テーレッテレレー、あの見た目でこんな美味しいものが作れるなんて。
美味い、美味すぎる。
「しかもレベルアップしたのじゃ! みよこの美しさ! そして漲るパワー! いまなら父上も倒せそうなのじゃ!」
シャドーボクシングをしながらはしゃぐアルティア。
「ほーれ! みてみぃサツキ! 妾のステータスじゃ!」
【アルティア 魔神 Lv89】
「レベル!? つか89!? めっちゃ強いじゃん!」
「当たり前じゃ、魔王じゃからな。でもまぁ、兄様達と父上の方が強いがな」
やっば、そんなのとあいつら戦うの!?
うっわーほぼ負け確定じゃん。
人類側滅ぼされるんじゃね?
私魔族に寝返っとこうかな·····
「はー、今日も満足したのじゃ! それじゃあの~ 」
今日もまた彼女は暗黒の闇へと消えていった。