2 アフターパーティー
「さて、そろそろ店じまいするか」
プラカードを裏返して、看板をしまいに外に向かう。
「ほわあああ!! みっ店じまいなのか!?」
看板をしまおうとしたら、灰色のツインテール少女が涙目で訴えてきた。
「いっ、いえ! 大丈夫ですよ!」
「本当か! すまぬなぁ!」
うおっ! 凄い眩しい笑顔。
「あっ·····そーだこの金使えるか?」
そう言って彼女が取り出したのは見たことの無い硬貨だった。
「えっと、これは?」
キョトンとする私を見て再び彼女は騒ぎ出す。
「ぬぁああ!! 魔界硬貨じゃ払えんのかぁ! うぬぅ折角来たのにい·····」
·····まっ、魔界?
いや、細かいことはどうでもいいや、それより今まにも泣き出しそうだから何とかしてあげなきゃ。
「だっ、大丈夫! 私の料理は材料費かからないから! お代は要らないですよ!」
「ほえっ?」
手をパンと叩いて「ティーパーティー、発動」と言う。
すると空中にマカロンが生成される。
「はいどうぞ」
そのまま彼女に食べさせてあげると、彼女は凄い幸せそうな顔を見せる。
「ふおおお! 美味い! 流石じゃ雑誌で取り上げられてるお店なのじゃ! 」
「ありがとうございます、そうだ、お時間があるなら外でお茶会でもしませんか? どうせもうお客さんは来ませんし」
「うむ! 店主は優しいのう! 名前はなんと言うのじゃ?」
「シノノメ・サツキです、お客様」
「妾はアルティア・ルナ・ダークナイト、第三魔王をやらせてもらっておる」
「·····はい?」
「だから、魔王じゃ、第三魔王。ゆうてもお飾りの魔王じゃがの」
·····いや、魔界とか聞こえたから魔族だとは思ったけど魔王?
嘘でしょ!? なんで魔王が人間界に!?
私は、元々平和主義で種族とかどうでもいいって考えだから、誰がお客さんでこようともてなすポリシーだ。
だけど! まっ、魔王!? 下手したら私死ぬんじゃね!?
「サツキ~妾ケーキも食べたい、雑誌に載ってたチーズケーキが食べたいのじゃが!」
「あっ、ああそれでしたら冷蔵庫にありますから、取ってきますね」
「ん? さっきのスキルで作らないのか?」
「いえ、折角ですから自分で作ったものを、そっちの方が美味しいんですよね」
スキルで作るスイーツは普通に美味しい。
別に自分の手で作らなくても滅茶苦茶美味しい。
·····でも何かが足りないのよね、だからたまに自分で作ったりする。
外のテラス席に彼女を座らせて、ケーキと紅茶を用意する。
「ほーん、スキルと自作じゃ味が違うのか·····」
「えぇ、材料がないと作れない料理もありますし、材料があったら料理を食べるだけで何らかの効果を得たりもするんですよねぇ」
フォークに指したケーキをジロジロ見た後、口に入れると彼女は凄い幸せそうな顔をした。
どちらが美味かったかは聞くまでもない。
「うんまぁ~!」
「それは、良かったです」
「本当に不思議なスキルじゃのう·····極めれば凄いことになりそうじゃ」
「まぁ、料理にしか使わないので」
「·····ふーん、そうか。お主は戦いとか興味無いのか?」
「えぇ、私はスイーツを作っているのが幸せですから」
ニコッと笑って敵意を無いことをアピールした。
「そうか·····でも防衛術くらい覚えておけ。いつお主の命が狙われるか分からん」
「はい、肝に銘じておきます」
「お主が死んでは妾がここの店のスイーツを食べられないからな!」
「へっ?」
「サツキよ、妾はお主の味が気に入った! じゃからまた来るぞ!」
席を立って彼女はパチンと指を鳴らす。
すると、空間が割れて真っ黒い隙間が現れた。
「じゃあの! サツキ! ごちそーさん!」
そう言って彼女はその中に入って帰って行った。
なっ、なんだったんだ·····まっまぁ、何はともあれうちの店が気に入ってくれてよかった。
·····でも、うちの店貴方様の天敵がよく来るんですが。
·····大丈夫かなぁ。