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四話

異世界 = イセカイ

 人一人出歩かぬ夜。空は暗雲が包み込み、どしゃ降りの雨が辺りを支配している。月明かりが入り込む隙もない街を、心細い街灯だけが点々と照らす。


「やめてぐれええ! もう……許じてぐれぇぇぇ!」


 そう懇願する声は雨の音で聞こえない、と言わんばかりに、ナイフを振り下ろし続ける。

 ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ

 ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ

 ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ

 ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ


「お前の……せいで……」


「お前の……せいで……!」


 肉を突き刺す音は大雨によって掻き消される。街灯は、その光景をただ見守るように写し続けた。


「返せ…! 返せよ!」


 それが既に叶わぬ事なのは、何より分かっている。それでも、この憎き男の前では、そう懇願せずにはいられなかった。


「返せよおおおおおおおおおおおお!!!」


 ザクッ!






 *





「……未だ衝撃の止まない卑劣な事件ですが、ここで改めて当時の状況を振り返ってみます」


「昼の正午頃、犯人の男はまず大通りの中央で徐にナイフを取り出し、付近の通行していた人を刺します」


「その後はナイフを持ったまま走りだし、通行人合わせて10人を切りつけます」


「その後、一人の男性に飛びかかり、馬乗りになったあと、顔や体に何回もナイフを振り下ろしました。男性は即死だったことが確認されています」


「今改めて聞いても……本当にこのサニト国で起きた事なのか、信じがたい気持ちになる凄惨な事件です」


「ですが、犯人はその後自身にナイフを突き刺し自殺したため、罪に問われる事はなくこの事件は結末を迎えました」


「この連続殺傷事件、未然に防ぐことは出来なかったのか、また、この先私達はこのような事件を再び起こさないようにどうすれば──」


 ──どこまでも洒落たカフェのテレビには、そこには似つかわしくない内容のニュースが写し出されている。

 そこから目を離すと、店員がこちらのテーブルへ向かってくるのが見えた。


「こちら、自家製ベリーのパンケーキでございます」


 そう言うと、若い女性の店員は俺の前にパンケーキを置き、礼をして去っていく。ふかふかの生地には色鮮やかな果物とクリームが乗っており、見るからに美味しそうだ。


「うわー、美味しそう!」

「ここのホットケーキ、とっても美味しくて、このあたりでも評判のスイーツなのだよ。遠慮せずに食べたまえよ!」

「悪いね、依頼主のあんたにご馳走になっちまって」

「いいのいいの、私が好きでやってるだけなんだから。でも、その分依頼はちゃんとこなしてもらうわよ?」

「はい、はい、仕事はきっちりやらせてもらいますよ、お任せください」


 今回の依頼人であるエクシーさん。首もとをスカーフで覆った彼女は、事前に聞いた話によれば生物学に精通しており、よく依頼を頼んでくれるギルドのお得意様らしい。今日は依頼の相談の為、彼女の行きつけのカフェに来ている。


「ここのカフェ、雰囲気も良いし好きなんだけど、都合が合わずなかなか来れなくてね。今日はせっかくだからギルドに新しく入った新人さん達にも知ってもらおうと思ったのさ」

「お……美味しい! エクシーさん、このパンケーキすごく美味しいです!」

「だろー? 特にこのベリーとの相性が抜群なんだよ!」


 天瀬はすっかりこのパンケーキの虜になったらしい。俺も、ナイフとフォークを慣れないながら扱い、口へと運ぶ。

 確かに、旨い。ベリーの酸味と甘味が、パンケーキの味を引き立てており、口の中がふわふわになった幸せに包まれているかのようだ。


「さて、話の続きだけど……最近『墓荒らしのコン』がこの街に現れたらしいの」

「ああ、人気のない墓地に現れては、墓に穴掘って文字通り墓場を荒らすっていう。あまりにも捕まえられないもんだから、指名手配になってるんだったか」

「ええ。それで、これが公開されてる見た目の情報」


 そう彼女が言うと、テーブルの中央へ徐に懐中時計を置いた。

「?」

 唐突に置かれたそれに、一瞬戸惑いを隠せないでいると、そこから何かが飛び出してきた。

「!? !?」

 懐中時計の上に、ミニチュアサイズの人の姿が現れたのである。

 それに驚愕する俺を他所に、話は進められていく。


「灰色のフード付きコートに、鎖を纏った姿で、身長は190cm以上あって痩せ形。フードに隠れて顔を見た人はいないらしいけど、いつもこの格好で出没するから見た目での判断は出来るそうよ」


 説明をしてる最中、それを指で突っついてみる。指はすり抜けるところを見るに、どうやら実体はなく立体映像であることが確認出来た。

 そんなことをしていると、横にいるチョコレーの怪訝そうな視線を感じるので大人しく止めることにした。


「目撃情報によると、決まって人気のない墓地を狙って現れるそうよ。──それで、私の今回の依頼なんだけど……この『墓荒らしのコン』をあなたたちの手で捕まえてほしいの」






 *






 結局、テストに合格できなかった俺だったが、こうしてギルドに残っている。

 あれから毎日『魔放出』の特訓をしているが、鳴かず飛ばずで未だに結果に現れないでいる。

 チョコレーの言うには、魔放出は応用すれば炎や氷などを出せるようになるらしいが、俺の場合、身体に流れる『魔』をそのまま放つ、魔放出の基本すら出来ていないと呆れられている。

 このままの状態が続けば、5000万という借金の形に、本当に臓器を売り飛ばされかねない。それがたちの悪い冗談なのか、本気なのか、チョコレーの考える事は読めない。そんな彼女から、ある物を手渡された。

「連絡用のテレウォッチだ、古い機種だが我慢しろ、失くすなよ」

 そう言われ、例の懐中時計を渡される。見た目はなんの変哲もないただの懐中時計だ。

「あの、操作方法って…」

「後でストノフに教えてもらいな」


 素っ気なく俺にそう言い放った後、チョコレーは事務所のテーブルに地図を広げる。

「『墓荒らしのコン』の目撃情報によれば、町の外れのこの辺りに出没したらしい。その近辺に人目の付きにくい墓地があることも確認した。そこはあたしが張り込みするから、あんたらはそれぞれ別の墓地で見張りだ」

「はい!」

「もしターゲットが自分のところに現れたら、すぐにあたしとストノフに連絡するんだ。決して無理をするんじゃないよ、感付かれて逃げられでもしたら堪ったもんじゃないからね。…特にサズク、あんたに言ってるんだからね」

「ああ、分かった」

「全く、依頼主様の注文がなけりゃあんたをこの作戦には含めてないんだけどね…」

 そう言って、チョコレーは頭を抱えた。

(……)


『それで、私の今回の依頼なんだけど……この『墓荒らしのコン』をあなたたちの手で捕まえてほしいの』

『はて……そりゃまたどうして』

『亡くなった人の墓を荒らすなんて、そんな命を侮辱する行為、許すわけにはいかないもの』

『だが、こんなことあたしたちに頼むより、警兵に任せた方がいいんじゃないのか?』

『警兵に捕まえられないんだから、指名手配されてるんじゃない。……お願い、報酬ははずむから』

『報酬が貰えるんだったら、そりゃ何でもやるさ』

『ありがとう。……それでさ、連絡したときにも言ったと思うんだけど、この依頼を受けて貰う際には一つ、条件があってね──新人のサズク君が、この依頼に絶対に参加する事』

『!?』


(あの時、エクシーさんは何故俺が参加する事を条件にしたんだ…?)

 彼女の思惑は計り知れないが、おかげで事務所の雑用ばかりをこなしていた俺にも、ようやく仕事らしい仕事が与えられた。その事には感謝している。


 その後、俺はストノフにテレウォッチの使い方を教えて貰った。

「この上に付いてるボタンを押しますと…」

 カチッ ブゥン…

「うお、なんか色々出てきた」

 懐中時計の上部には、様々なマークが立体の映像として表示されている。まるでゴーグル無しでVR映像を見ているかのようだ。

 なんだか、初めてスマホを買って貰ったときの様な、新しい物を与えられた時のあのワクワク感が蘇ってくる。

「例えば、このマークを押せば連絡出来る人が表示されるので、後は連絡したい人を選びます。試しに某の名前を選んでみてください」

 言われるままに、表示されたストノフの欄を押してみる。すると、懐中時計から今度はストノフの姿が立体映像として出てきた。

「す、すげぇ…」

「こちらにはサズク殿の姿も表示されてますな、これで相手の姿を見ながら通話する事が出来ますぞ」

 ストノフの持つ懐中時計からは、俺の姿が写し出されている。一体、どういう仕組みなのだろう。

「なあ、これって他にどんなことが出来るんだ」

「そうですな、例えばここから音楽を聴けたり、ここからは動画を楽しめたり…。ああ、後はここから地図を見れますぞ」

 この世界に来てからスマホが碌に使えない事は不便だったが、なかなかどうして、この世界にはこの世界なりの便利なアイテムがある事は朗報だった。

 そうして、ストノフの説明を聞いている内に、自分のテレウォッチからティロリン、ティロリンと音が鳴り出した。

「おや、誰かから連絡がかかってきましたな。応答するにはボタンを押してくだされ」

 そう言われ、俺は上部のボタンを押す。すると、懐中時計からは天瀬の姿が写し出された。


「天瀬!?」

「あ、サズク! よかった、繋がった! サズクもテレウォ貰ったもんね」

「テレウォ?」

「テレウォッチのこと! これ、ほとんどスマホみたいに使えるみたいだよ? 通話だけじゃなくメールみたいに文字だけで送れるし、写真も撮れるし、SNSみたいなものもあって、私気に入っちゃった!」

 通話している彼女の生き生きとした姿は、まるで本当にそこにいるかのようだ。

「あ、えっと、それでね? 何か用事があった訳じゃないんだけどさ、せっかくだから連絡してみたいなーって思って。…って、サズク?」

「え? ああ、なんだ?」

「もー、ダメだよ、ボーッとしてちゃ。そういうのも全部丸見えなんだからね」

「あぁ、ごめん」


「ねぇ、サズク」

「? どうした」

「一緒に依頼、頑張ろうね!」

「ああ、そうだな」



 一週間後──



 『墓荒らしのコン』は、未だにどの地点にも現れずにいた。

 俺が張り込んでいるのは、教会の横にある墓地で、人の出入りもあり、人目もあるポイントだ。

 今までの出現傾向から、ここに現れる可能性は低いだろうとの事だ。


「…退屈だ」


 思わずそんな言葉を口にしてしまう。1日何時間も教会の前にいると、周りの人に不審がられる為、早くこの依頼が終わって欲しい。

 そんなことを考えていると、教会の周りに薄い霧が出てきた。

(なんか…薄気味悪くなってきたな)

 そう思ったその時だった。


「…あ!」


 灰色のフードを被ったコート、遠目に見てもジャラジャラと音が聞こえてきそうな鎖の装飾、細身だが縦に長いシルエット。

 教会の前方に、ターゲットである『墓荒らしのコン』の姿を捉えた。

 教会の柱の物陰に入り、すぐにチョコレーへと連絡をする。


「どうした」

「ターゲットを確認、今教会の脇にある墓地に向かった」

「…! 分かった、今向かうからその場で待機していろ」

「いや...急に現れた霧で見失いそうだ、もう少し接近してみる」

「おい! 余計なことをするな、おい!」

「大丈夫、バレないように気を付けるから」


 そう言って通話を切った俺は、教会の前の階段を下り墓地へ向かう。

 墓地の入口付近に着くと、少し遠くの方に灰色のコートの姿が視認できた。

 警戒されない程度に近づき、遠目から見てみると、果物がたくさん供えられている墓の前に立っているのが見える。

(供え物を狙っているのか...?)


 しばらくその墓の前に立っていたターゲットだったが、そのうちそこから離れ、墓地からも去っていく。

 それを追おうとしたが、辺りを更に深い霧が覆った。目の前の足の踏み場すら危うい視界の悪さだ。

(くそっ、これじゃあいつを見失ってしまう)

 何とかしなければ、と焦燥感に駆られたその時。


 ガシッ


「なっ…」


 ドサッ!


 後頭部を掴まれ地面へと叩きつけられた。

 突然の事に、一瞬何が起きたのか分からなかった。


「俺の様子をずっと伺っていたな…目的は?」

「…!」

 状況から察するに、どうやら『墓荒らしのコン』が、俺の事を押さえつけているらしい。距離をとっていたつもりだったが、やはり迂闊に近付きすぎたのだろうか。

「なんの事だ…? 俺はここに墓参りに─」

「とぼけても無駄だ。…最近俺の事を嗅ぎ回っているって連中の仲間か」

「!?」

 どういうわけか、依頼の為にギルドが動いてる事にも感付かれているようだ。


 『墓荒らしのコン』は、俺を押さえつけていた手を離すと、俺の腹部へ蹴りを入れた。

 とても強力な蹴りで、俺はサッカーボールかの如く体ごと吹っ飛ばされ、木に衝突する。

「ガハァ…!」

 腹を蹴られた衝撃と、木に衝突した衝撃で何か吐き出しそうな嘔吐感を覚える。

(なんて…威力だ…本当に同じ人間から放たれた蹴りなのか…?)

 手足もまともに動かせず、ただうずくまっていることしか出来ないなか、ザッ、ザッ、と足音がこちらに近付いてくる。

「お前に特別恨みはないが──少々痛い目に遭ってもらう」

 男がそう言うと、体の周りに何かがぼやけて見えてきた。


「なあお前…『魔法』って知ってるかい」

「…!」

 ぼやけた何かは段々と濃くなっていき、その姿がはっきりと見えてきた。


亡者どもで奏でる鎮魂(地下室のメロディー)歌】


 見えてきたのは、鎖で繋がれ、体がズタズタに引き裂かれた、死者達の姿だった。











 体の半分を失っていたり、腹に大きな風穴が開いていたり、顔がズタボロで、頭にはナイフが刺さっていたり…。

 そういう、一目で「生きてる人間ではない」と分かる()()()が、『墓荒らしのコン』の周りに何体も現れた。


「見えるか? こいつらはな、生前は悪逆を重ね、そして罪を償う事もなく死んだ罪人共の魂だ。他所様に深い悲しみや憎しみを振り撒いておきながら、それを嘲笑うかのようにさっさとくたばり、自身の罪から逃げた連中──俺はそういったクソ野郎どもの魂を集めているんだ。こんな奴ら、あの世へ逃がすわけにはいかないよな?」


 そこへ、死者の一人が動けない俺へ飛びかかり、左肩へと噛みついた。

「がぁぁ!!」

 つんざくような痛みが俺を襲う。肩からは服越しに血が滲み出す。今にも噛み千切られてしまいそうだ。


「てめえ何勝手な事してんだゴラァ!!!!」

 『墓荒らしのコン』が突然叫んだかと思うと、俺に噛みついた死者を自身の元へ引きずり、そいつをボコボコに殴り始めた。


「俺の命令も無しに動く権利なんててめえには無ぇんだよ糞野郎が!!」

 バキィ!ボコッ!ドカァ!ガスッ!


 その死者が立っていられなくなっても執拗に殴り蹴るその姿は、誰から見ても狂気をはらんでいた。

「ゴミは死んでもゴミだからよぉ、こうやって調教してかなきゃいけないんだわ、生まれ変わって人生また一からなんて許さねぇ。俺っていいことしてると思わねぇか?」


(逃げろ、逃げなくては…!)

 本能が、そう、呼び掛ける。

 何とかこの場を離れようと、右腕で体を持ち上げ、おぼつかない足で歩き出す。

 霧に紛れれば逃げ切れるかもしれないという、その場しのぎの思考で動く。

 だが、突如背中を刺すような痛みに襲われる。見ると、『墓荒らしのコン』の放つ鎖が自分に繋がれていた。

「お前の魂を捕縛した。亡霊どもを縛り付ける時に比べ、生きた人間に対しての拘束力は低いが、それでも余程魔力を操るのに長けた者でなければ逃れることは不可能だろう」

 そんな言葉にも構わず走り出す。だが、鎖はピンと張り、体から何か引き剥がされそうな感覚──体全体が強烈な痛みに苛まれる。

「ぐあぁぁ! …っ!」

 無理にこいつから離れようとすれば、この鎖に苦しめられるだろう。つまり、この場から逃げ出すことは絶望的な状況という訳だ。


「そぅら!」

 『墓荒らしのコン』が鎖を手綱のように引くと、俺の体がひっくり返り、頭から地面に投げ飛ばされる。眼前全てが地面で覆われたかと思えば、次の瞬間には激しい衝撃と痛みに襲われる。

 痛みに悶える暇もなく、鎖で俺の体を軽々持ち上げ、今度は上空へ投げ飛ばす。

 霧で周りが一切見えず、浮遊感だけが体を支配する。宙へ突き上げられる感覚から、ガクンと体を下へ引き寄せられ、急速に落下する感覚へと変わる。霧から影が見えた瞬間、俺の腹には強烈な拳が突き上げられていた。

「がはぁ…!」

 地面にずるりと落ちると、鎖で体を引き上げられ、倒れる事すら許されない。

 操られた死者が俺の後ろから両腕を掴み、『墓荒らしのコン』の前に立たされる。

「そらよ!」

 バキィ!

「おらぁ! ふっ!」

 ボコォ! ドカァ!


 殴られて、殴られて、殴られて、殴られて、殴られて、殴られて、殴られて、殴られて……。

 殴られた勢いで、俺を抑えていた腕のうち、右腕が片方外れ、それでも殴られ続ける。周りには鎖で繋がれた死者達が取り囲み、サンドバッグと化した俺の姿を、囃し立てるでもなく、ただただ立ち尽くして見ていた。

 ボカァ! バキィ! ゴスッ! ドカッ! ドカッ! バシィ! ドコッ! バゴッ!


 ──顔中が腫れ、血にまみれる頃。ようやく拳の雨が止んだ。

 その頃には、俺はグロッキーな状態となり、意識は朦朧し、目の前の物もよく見えない。

「お前の仲間にもよく言っとけ、俺から手を引けとな。……と言っても、もうまともに聞こえてないか?」

 『墓荒らしのコン』が、俺の顔を覗き込むように近付く。


 ガッ!


 その時俺は、『墓荒らしのコン』の鎖を手にし、ぼやけた視界の中でも睨み付ける。

「ふん、まだ抵抗する意思があるか」

 『墓荒らしのコン』がそう言った、その時だった。


 鎖を掴んだ俺の手が、光でまたたき始めたのである。

「!? 何だ?」

 光は輝きを強め、一瞬で辺りが光で包まれた。

「くっ……ぐあぁ!?」

『墓荒らしのコン』は光で目を開けていられず、思わず腕で顔を覆う。

 そのうち光が収まり、周りを確認する。


「あいつ…どこへ行きやがった……!」

 そこには、俺の……「サズク」の姿は無かった。

 忽然と、その場から姿を消したのである。



────四話 終

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