プロローグ②
彼女は悩んでいた、彼との子供ができない事に。
仲が悪いわけではない、むしろ良好な方だ。ただ、なかなかその時は訪れない。
二人の間の子を作ろう、と決めた時から一年以上が経っただろうか。月日が立つごとに、また、辛く苦い思いをする。
彼の優しさもまた、今だけは彼女を傷つける要因の一つになっていた。
彼が寝静まった後、窓から夜空を眺めては、思わず小さなため息をついてしまい、そんな自分にまた、嫌悪する。
辛い日々が続いた。
(この間まで、あんなに幸せだったのに……)
そんなある日。いつものように、就寝前に空を眺めていると、その目線の先に一瞬、流れ星が見えた。
なかなか目にする事がないその光景を見て、彼女は即座に手を組み、切実な思いを連ねる。
(神様、どうか私達の間に子供を! どうか、どうか……!)
右目、その後左目を開けてみると、流れ星は(……周知の事実ではあるのだが……)すでに消えてしまっていた。
彼女は腕を下ろすと、そのまま就寝する事にした。
終わりの見えない徒労感と、ほんの、ほんの少しだけの希望を抱いて……。
その少し後の日。彼女は、自らの体の異変に気づく。
その事を彼にも伝えると、彼はガクリと膝から崩れ落ち、それにも構わず彼女の手を握り、ありがとう、ありがとうと繰り返した。
看護師に抱き抱えられ、大きな産声をあげる「彼」を見て、安堵、そして喜びへと、その涙の意味を変える。
そして、自らの腕で包んだその顔を見て、語りかける
「あなたは……天からの授かりもの………」
「だから……」
「あなたの名前はサズク……『絵野田 授』……」
「気に入ってくれると……いいな………」