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007-1_君は僕の弟じゃない

 シンシアが薬を服用してから3日。

 

 薬を服用したものの、流行り病のもう一つの症状である発熱と回復の繰り返しが起きる可能性はあった。そのため、実のところ、母の病はまだ癒えていないのではないか、とオーネスは気が気ではなかった。


 しかし、薬の服用後、発熱することはなく、安堵するオーネス。


 そして、彼がフリートと共に薬草を取りに行ってから4日後、フェイスは村に帰ってきた。オーネスの知らない事であったが、フェイスにも村で流行り病が村で発症したという事は伝わっていた。


 そのため、帰ってきたフェイスは少量ながら流行り病用の薬を持ち帰っていた。


 オーネスはシンシアの事ばかりを気にしていたが、実際にはシンシア以外にも村人の中には流行り病に罹った者はいた。


 オーネスが採取した薬草のおかげでいくらかの薬が作れたこともあり、そこまで広まらなかったものの、それでも最初に作った薬だけでは対応できない程度の罹患者は出ていたため、フェイスの帰還は大いに喜ばれる事になる。


 村への連絡と薬の納品が終わり、思った以上に流行り病に罹っている者が少ないことに安堵しつつ、家に帰ろうとするフェイスを村の仲間が呼び止める。


 「おい、聞いたぞ。お前んとこのオーネス君、薬草取ってきて流行り病に効く薬作らせたんだってな。おかげでお前んとこの嫁さん、大事に至らなくて済んだらしいじゃないか。いやー、羨ましいね。嫁さんと村の危機を救うとは親父に似て勇敢だ。フェイスも鼻が高いだろう?」


 ――オーネスが薬草を取ってきた? あの、薬草は夜以外では判別も発見もそれなりに難しいはず。少なくとも子供が簡単にできるものじゃない


 そう思ったが、機嫌良さそうに話す仲間に水を差すのも悪いと思い、あぁ、と曖昧に返事をする。確認する事ができたフェイスは、病に倒れたなら嫁の様子を早く見たい、と、断りを入れ家に帰る。


 きちんと、話を聞かないといけないな、と思いながら、帰宅を知らせる挨拶とともに扉を開く。


 最初に目に入れたのは妻、病で倒れたと聞いていたが、元気そうである。よかった、と安堵する。


 さて、と、家を見渡し、オーネスを探す。すると今でオーネス、レクティと楽しそうに話をしている蒼いトカゲがいるではないか。


 「は?トカゲ?」


 つい、口に出してしまうフェイス。その声に父の帰宅に気が付いた三人。


 「「「おかえり、お父さん」」」


 謎の蒼トカゲに困惑しながらシンシアの方を見ると俺のフェイスの頓狂な声が面白かったのかクスクスと笑っている。事態が掴めなかったフェイスはシンシアに蒼トカゲが何者なのか聞いてみると、フリートであるというのだ。


「フリート? それは青い餅だったはずだろ?」


「青い餅なんてヒドいよお父さん!」


 フェイスの思っていたことが口に出てしまったらしい。


 しかし、と、フェイスは考える。シンシアも青トカゲの事をフリートである言っている以上、間違いはないのであろう。つまり、フリートは形態変異した、ということである。


 形態変異――

 魔物が周囲の魔素を取り込みによって自身の姿をより高度なものへと変化させることである。ただし、通常の形態変異では周囲の魔素を取り込む、という過程の関係上、徐々に変化する、あるいはそれなりに長い時間を経た魔物が急激に変化するものである。フリートが生まれてから長い時間を時間が経た魔物であるとは考えにくい。少し違和感はあるものの、姿が変わったということであれば、これが起きたと見て間違いないであろう。


 そういえば、と、フェイスは帰り道の様子を思い出す。


 村にいた者たち、特に近所の住民がフェイスを見るなりクスクスと笑っていた。


 そんなにおかしな恰好をしていたか、と不思議に思っていたが、フリートの形態変異を知っていて初めて見た時の自分のシンシアからの話を面白おかしく聞くのが目的だな、と思い至り、少しむっとしてしまう。



 ――思考が逸れてしまった


 フェイスは当初の予定を思い出すとシンシアにレクティを連れて離れていてもらうよう頼むと、オーネスに尋ねる。


「一人で流行り病に効く薬草を探しに行ったらしいな。どうやって薬草を見分けたんだ?」


「えっと、一人じゃなくてフリートと行ったけど、薬草は薬屋のおじさんに教えてもらって……」


「どういう特徴で見分けたんだ?」


「……」


「黙っていたら分からないぞ?」


「光っている薬草かどうかで……」


やはり、と、思うフェイス。


「つまり、夜に子供だけで村の外まで探しに行ったんだな?」


ため息をつくフェイス。


「今回はうまくいったが、お前がうまくいかず森で迷ったりして、帰ってこれなかったらどうするつもりだったんだ? もし帰ってこれなかったら、病気でベッドから動けなかった母さんはどうなるんだ? レクティは一人でどうなっていたんだ? ちゃんとそれは考えたのか?」


「……」


 父からの言葉は自分が失敗してしまった時の事を何も考えていないことを責めるものであった。自分の気持ちだけを優先してしまい、考えが及んでいなかった事に恥じ入るオーネス。


 次第に顔が下に向く。でも、と続けるフェイス。


 「俺の家族を、お前の家族を守ってくれてありがとう。ただ、自分の行動で周りがどう思うのか、どうなるのか、って事をちゃんと考えるようにして欲しい」


 そう言いながらオーネスに目線を合わせ、少しだけ笑いながらオーネスの頭を撫でるフェイス。オーネスは母のように強く言われた訳ではない。


 しかし、これは失敗すると思われたから、言われた事だとオーネスは捉えていた。次は失敗ししないようにしないようにならなくてはならない。

 

 そのためには今までのような自分なりのやり方ではなく、誰かに教わって強くなる必要がある。そう考えたオーネスは、なら、と父に言葉を投げる。


「次からは失敗の心配をしなくてもいいように、僕を村の訓練に参加させて欲しい」


 その様にフェイスは、なんだかんだ言って男だな、と思いながら、分かった、と答えるのであった。


30分後くらいにもう1話投稿します


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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