第七話……武田別動隊VS村上義清
……そのころ武田別動隊は、本隊の援護に向かっていたが、越後勢に足止めを食らっていた。
――ダダダーン
火縄銃を使った緊急信号の空砲の音がする。
「飯富殿! 本陣が一大事ですぞ!」
「そんなことわかっておるわ!」
攻め弾正と名高い真田幸隆の言に苛立つのは、別動隊の総指揮官の飯富昌虎。
飯富昌虎は赤備えを率いた武田軍最精鋭だった。
――ダダーン
赤備えを含む武田の別動隊一万二千を足止めするは、上杉方の村上高梨の両隊わずか一千。
しかし、どちらも武田に領土を奪われた関係上、此度の戦いの士気は高かった。
とくにこの村上義清という将は、信玄が唯一人生で二回破れた程の名将である。
……彼らは、越軍の殿として後方に布陣していたのだ。
しかも大量の鉄砲を配布されていた。
弓と合わせて湿地帯を前に布陣し、武田の別動隊を狡猾に足止めしていたのだ。
……越後の佐渡金山は江戸時代の開発であるが、当時の越後の直江津は、特産品の青苧の税で大変に潤っており、その軍資金は鉄砲の購入に多くが流れていたのだ。
――ダダダーン
更に武田本陣からの合図が別動隊を急かすが、正面からの村上の鉄砲がそれを妨げた。
「ええい! 我に続け!」
馬場信春が一隊を率い、強引に高梨勢に切り込む。
鉄砲に対して使った盾は竹束だった。
無数の勇士の屍を鉄砲足軽に晒してしまったが、その屍を乗り越え、高梨勢の柵を引き倒すことに成功する。
「掛かれませい!」
それを見逃さない高坂昌信の手勢が、突破口を拡大。
血涙を伴い橋頭保を築いた。
「掛かってきませぃ!」
馬上で大音声を上げる村上義清にも、遂に武田の赤備えの槍が突き立つ。
「村上義清殿、討ち取ったりぃ~」
宿敵の敵将の首級がついに挙がる。
……が、しかし、この無理押しで武田別動隊は大きな損害を出してしまったのだった……。
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【一口信玄メモ】……青苧
苧麻を手紡ぎし,地機で織り,寒中に野天で雪ざらしにしたもの越後上布として有名。
謙信はこれに対して多額の税をかけていた。
……水渕成分先生みたいに、どこからかお声が掛からないかしら(←強欲w