表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/37

黒猫ツバキと青い髪の高校生魔女(イラストあり)

 お題は「びっしょり」「検索」「笑顔」です。

★ページ下に、登場キャラのイメージイラストがあります。

「コンデッサお姉様、勝負ですわ!」


 ここは、ボロノナーレ王国の隅っこにある村。

 ある日、ブルーの髪をツインテールにした10代後半の少女が、魔女コンデッサの家を訪れた。ブラウンの瞳を勝ち気そうに輝かせながら。


 彼女の名はチリーナ。貴族のご令嬢にして、魔女高等学校の2年生。

 5年前、当時高校生魔女だったコンデッサが家庭教師をした相手である。その時のチリーナは、魔女小学校6年生。以来、『コンデッサお姉様のような優秀な魔女になること』を目標に、魔法修行に(つと)めている。


 有能なコンデッサが田舎に引っ込んでいる現状に不満があるのか、月に一度、こうして魔法勝負を(いど)みにくるのだ。


「また来たニャ」


 コンデッサの使い魔である黒猫ツバキが、チリーナを出迎える。


「そこを退()きなさい。コンデッサお姉様に寄生して極楽ライフを満喫している、無能な駄猫(だねこ)

(にゃん)てこと言うのニャ! 事実無根にゃ、誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)にゃ、名誉毀損(めいよきそん)にゃ! 断固として抗議するにゃ!」

「それなら、アンタの存在はお姉様の役に立っているとでも?」

「もちろんニャン」


「どんなことで?」

「時々、ご主人様に言われてお使いに行くのにゃ」

「他には?」

「ご主人様のお散歩に付き合ったり、お昼寝に付き合ったり、お菓子を食べるのに付き合ったり、ぐだぐだダラダラするにょに付き合ったり……」


「やっぱり、アンタが居るせいで、お姉様のダメ人間化が進んでますのね」

「そんな訳ないニャ! ご主人様はアタシが居ても居にゃくても、遠い過去から(はる)か未来まで、ズッとズッとズ~ッとダメ人間のままなのニャ」

「お前たち、面白い話をしているな」


 縄で縛りあげたツバキを軒先(のきさき)()るし、コンデッサは来訪の少女と向かい合う。


「で、チリーナ。今日は何の用事だ?」

「当然、お姉様に勝負を申し込みに来たのですわ。今まで50戦50敗だけど、(わたくし)は絶対に勝つことを(あきら)めません」

「分かったよ。ジャンケンポン! グー」

「パー」

「うわぁ、負けた。チリーナの勝ちだ。良かったな。これで、おしまい」

「違う! 私は魔法の勝負で勝ちたいのです! この1ヶ月、火の魔法特訓に(はげ)んできた成果を見せてさしあげますわ。燃え上がれ、私の闘志(とうし)! 《ファイアボール》!」


 チリーナが突き出した(てのひら)の前方に、火の玉が現れる。火の玉はフラフラと宙を飛び、Uターンした。チリーナの方向へ。


「火の玉が、YOU(ユー)へターンしたニャ。これがホントの、U(ユー)ターンにゃん」

「キャー! 熱いですわ!」

「お~。闘志ばかりで無く、(おの)が衣服まで燃え上がらせるとは……やるな! チリーナ」

「助けてー! 燃えちゃいますわ」

「しょ~がないな。《ウォーター》」


 火は消えた。その代償(だいしょう)として、チリーナはびっしょりの()れネズミになってしまったが。


「今日は、これくらいで勘弁(かんべん)してさしあげますわ。それではご機嫌よう、お姉様!」


 びちょびちょチリーナは去っていった。


「いつも何しに来るんだ? アイツ」

「さぁ? それより、ソロソロ下ろして欲しいにゃ。ご主人様」



 1ヶ月後。


「また来たか、チリーナ」

()りないニャ」

「私、この一月(ひとつき)の間に修行に修行を重ねて、土魔法の奥義を会得(えとく)しましたのよ。覚悟してください、コンデッサお姉様。出でよ、《ゴーレム》!」

『ピギ!』


「わ! 地面から、土で出来たゴーレムが()えてきたニャ!」

「私のゴーレムは、屈強(くっきょう)なボディに俊敏(しゅんびん)な手足、賢い頭脳を持つ無敵のモンスターなのですわ!」


 得意気(とくいげ)な顔になるチリーナ。


「降参するなら今のうちですわよ、お姉様。マイゴーレムは、眼からビームも出ますのよ」

『ピギ――!』


「いや。でもこのゴーレム、あんまり怖くないし」

「む、負け惜しみを。やっておしまいなさい、ゴーレム! GoGo(ゴーゴー)ゴーレムですわ!」

『ピギ――! ピギャ!?』


 ゴーレムは、ツバキによって倒された。チリーナのマイゴーレム、身長が人の小指程度(ていど)しかなかったのである。

 ツバキの前足による一撃で、無敵のゴーレムはペシャンコになった。


「クッキョーとかシュンビンって、どう言う意味なニョ? あと、ビームは出て(にゃ)かったけど……」

「く……。ゴーレムの眼からは、赤外線が照射(しょうしゃ)されていたのですわ。長時間()び続ければ、身体の(しん)より温まりましたのに……」

「健康に良いゴーレムだな」



 翌月、チリーナはコンデッサたちを《わくわく巨大迷路ランド》という名の怪しげな観光スポットへ呼び出した。


「今回は、この巨大迷路で勝負ですわ! 先に出口に着いたほうが、勝ち! 言っておきますが、《転移魔法》や《飛行魔法》の使用は禁止ですわよ」

「チリーニャさん、迷路を通り抜ける正解のルートを知ってるにゃんてことは……」

(わたくし)、そんな卑怯(ひきょう)なマネはいたしませんわ! それに、この迷路は2時間おきに内部のルートが自動変更されますのよ。脱出できなくなる挑戦者が続出だとか」

「おいおい。遭難者(そうなんしゃ)が多数出る迷路なんて、ヤバすぎないか?」


「心配無用ですわ。迷路には、一定の間隔で食事(どころ)やお風呂付きのベッドルームが出現するカラクリ仕掛けが、(ほどこ)されているんですの。迷路の中に安住(あんじゅう)してしまう方も、少なからず居られるそうです」

「それは、別の意味でヤバい……」

「まさに、人生の迷路にゃ」


「さぁ、スタートですわ。《疾走(しっそう)魔法》!」


 掛け声とともに、チリーナは駆け出した。右手を迷路の壁に触れるか触れないかギリギリの位置に固定しつつ、物凄いスピードで通路を突き進む。


 これが、チリーナの思い付いた『迷路突破の必勝法』であった。右側の壁に沿ってひたすら進めば、確実に出口へたどり着ける。


《疾走魔法》の活用により、踏破(とうは)に掛かる時間を短縮する。魔力と体力を大量に消費してしまうが、コンデッサに勝つための対価と思えば安いものだ。

 仮にコンデッサがこの方法を知っていたとしても、面倒くさがりな彼女はやりたがらないだろう。おそらくコンデッサは《マップ魔法》で迷路の図面を宙に写し出し、正解のルートを探そうとするに違いない。


(でも、お生憎様(あいにくさま)ですわ、お姉様)


 チリーナは、ほくそ笑む。

 この迷路はとても巨大で複雑に出来ており、全容を一望したところで最適解(さいてきかい)を導き出すには、おそろしく手間が掛かる。


 コンデッサがマゴマゴしているうちに、チリーナは《疾走魔法》で、いち早く出口に到着するのだ!


「ゴール! ですわ!」

 声高らかに出口より飛び出る、チリーナ。彼女が目撃したのは、すでに迷路の外で(くつろ)いでいるコンデッサたちの姿だった。


「おお、チリーナ。ご苦労さん」

「お、お姉様……どうやって出口まで……《マップ魔法》を用いても、そう簡単に迷路を抜けることは出来ないはず……」

「ああ。《ルート 検索(けんさく)魔法》を使用したんだよ。目的地へ最も短い距離で着くルートを、提示してくれるんだ」

「《ルート検索魔法》……そんな魔法があったとは……」

「レアな魔法だからな。まだ学生のチリーナが知らないのも、無理はないよ」


 コンデッサが(なぐさ)めると、走り続けて汗びっしょりになっていたチリーナはガックリと地面へ(ひざ)をついた。


「うう……また、お姉様に負けてしまいましたわ」

「チリーニャさんは、ご主人様に勝ったら、その後どうする気にゃの?」


 ツバキの質問を受けて、チリーナはキョトンとした表情になる。


「おい、チリーナ。もしかして、お前、勝った後のこと、何も考えてなかったんじゃなかろうな?」

「そ、そんな訳ありませんわ! 私が勝ったら……そうですわ! 今度は、お姉様が私に勝負を挑むのです! 負けたままなんて、お姉様のプライドが許さないでしょう?」

「それはそうだが……」

「けど、それだとご主人様とチリーニャさんの勝負は、いつまでも終わらないニャン」


「それこそ、望むところですわ!」

 と宣言し、チリーナは晴れ晴れとした笑顔を見せた。


挿絵(By みてみん)

 ついに、高校生とか出してしまった……。

 チリーナのイラストは、Ruming様(素材提供:きまぐれアフター様)よりいただきました。ありがとうございます! チリーナは、このシリーズの準レギュラーです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おお……番外編で出てきたチリーナ! 彼女が頑張れば頑張るほど、ドツボにはまってから回しするの楽しい。 そしてなぜか上がっていくコンデッサの評価(たらこの中での ちゃんと先生としての面目を保…
[良い点] あまりに面白そうなサブタイトルだったので、他の回をすっ飛ばしてこの回を読んでみました!新キャラのチリーナちゃんがコンデッサさんにライバル心を燃やしたり、ツバキちゃんと仲が悪いところが想定外…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ