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5:作戦会議とおまじない

前回までのあらすじ。

シルフィアをマシューと出会わせることに失敗したうえ、

マシュールート、()()()()()()編を開拓してしまいました。

確かに、マシューは私の推しではあるけれど。

正直、この状況は嬉しいけれど……!

ゲームと同じく強制スキップ機能があれば、迷わずバッドエンド直行だと思うのです。


シルフィア。

私、どうしたらいいと思う?


「そうだ! シルフィア!!」


すっかりシルフィアのこと忘れていたけど、降りられなくて困ってるに違いない。

ごめん、シルフィア。

怖くないから、降りてきて。


「シルフィア?」

「私の友達! 一緒に木の上にいたんだけど……いない!」


見上げると、すでにシルフィアはいなくなっていた。

猫の逆で、降りるのは得意だったのか。


「……リタ、頭は打っていませんか?」


お願いだから、そんな残念な子を見る目で見ないでください。

シルフィアはちゃんと実在するから!


「わかりました。じゃあ、そういうことにしておきましょう」


思っているだけでなく口に出ていたらしく、マシューは笑いながら私を起こして髪についた葉っぱや枝を払って、まくり上げていたスカートをそっと直してくれた。

スマートにそんなことしないでくれ、迂闊に惚れそうになる。


「あ、ありがとう」


ぎこちなく感謝すると、マシューが驚いた顔で目をぱちくりとさせた。


「本当に、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ!」


正直、この状況が異世界転移なのかすら理解していないので、もしかしたらすぐにマシューの知っている私に戻る気もしなくはないけど。

今のところ、大丈夫なのでお医者さんは勘弁してください。


「じゃあ、帰りましょう」

「うん」


頷いてマシューの後を追いかけると、マシューは嬉しそうに私に微笑んだ。

可愛い。

じゃなくて!!

どうにかして、ルート変更を考えないと。


× × × × ×


「――というわけで、どうしたらいいと思う?」

「そういうの、こまる」


たまたま王宮脱走計画を実行中に見かけた、ウーゴを捕まえて昨日のことをかいつまんで話すと困ったような顔をされた。


「いまから、そのマシューさま? くるなら、俺にはなしたこと、いったら?」


「いやいやいや!! 昨日のパーティーから、私のこと気に入っていただいたみたいですが、私にはこれっぽっちもそのつもりはございませんのでお帰りあそばせ。って初手でマシューに言えと!? とんでもない自意識過剰女でしょそれ!」


「おじょう、さまの、ことば、むずかしいから俺には、わかんないけど、あそびたくないならそういうしか、ない」


ヒロインに言った言葉と同じ言葉をかけてもらったからって、勝手に妄想で振るなんてやばいでしょ。

分かってはいるんだ。

でも、今日だって突然私のところに遊びに来るって言いだすし。


違うそうじゃない。

君が恋するのは、私じゃなくシルフィアなんだ!


そのおかげで、今日の勉強がお休みになったのは嬉しいけどさ。


「いいかげんへやにもどったら? ベルとルイが、なきながらさがしてたよ」


ちなみに、敬語は面倒なのでやめてもらった。ウーゴの敬語は元々そんなに機能してなかったしね。


「む。ウーゴは私より双子の味方なわけ?」

「いまは」

「そう言わずに……ってどこ行くの!?」

「……? そと」


当たり前のことを何で聞くのか、と言った風にウーゴが返してくる。


「それは見れば分かるけど」


突然、廊下の窓を開けて飛び出そうとしたら誰だってびっくりするでしょ。

ここ3階だよ。

そういう描写がないだけで、この世界では当たり前なの?

そんなことないよね、ウーゴ限定だよね。


「きゅうけい、じかんは、やねで、ひるね」

「なるほど」


そういえば、お昼寝キャラだったっけ。

言うが早く、ウーゴは器用に上の窓枠を掴んで屋根に登っていく。


「いいなぁ!」


ウーゴの後を追いかけて、私も窓から身体を乗り出すと屋根からウーゴが覗いてきた。


「おじょう、さまはだめ。きけんだから」

「えー」


画面外では一緒に屋根に寝っ転がって夜空を見せてくれたのに。

と言いかけて、やめた。

伝わらない上に、また頭の心配をされてしまう。


「んー、しかた、ない」


言いかけた言葉を堪えていた私に、ウーゴは少しだけ眉を下げてこの前と同じように私の頬にちょんと触れてきた。


「あ……」

「だんな、さまとおくさまがいうとおり。せっかく、きれーなおかおだから」


治癒魔術をかけてくれたと気付いたのは、ウーゴの手が離れた後だった。

そういえば、軽いひっかき傷だけで二人とも卒倒しそうになりながら必死に治癒魔術をかけてくれてたっけ。


「ありがとう。でも、昨日お父様とお母様が治してくれたはずなんだけど」

「うん。しってる。俺のは、おまじない、だから」

「おまじない?」

「うまくいく、おまじない。おじょう、さま、がんばって」


そう言うと、ウーゴは屋根の上に隠れてしまった。

結局は自分で蒔いた種は自分でなんとかするしかないってことだよね。

ウーゴに応援されてしまったし、頑張るか。



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