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1:悪役令嬢の悪だくみ

コンコンと部屋をノックする音がし、代わる代わる聞こえるメイドたちの声。


「お嬢様、お加減いかがでしょうか?」

「至って平気よ」

「で、でも奥様とのお茶会から部屋に閉じこもって、お夕食も召し上がられていませんし……」

「大丈夫よ」


この押し問答も何回目であろうか。

しかし、ドアを叩き切られそうなくらい母親から鬼ノックを受けた私からすれば可愛らしいものだ。

……どうしても発売日にゲームがしたくて、学校に行ったふりをして即帰宅からのお部屋でゲーム大会をした高校生時代。

あれがバレた時の母親の顔……いやぁ、あの時は恐ろしかったな。


って、今はそうじゃない!

『パンドラ・プリンセス』の復習をしないと!!


「お嬢様~、明日のためにも夜のお仕度をさせてくださいませ」

「そうですよ、なんといっても明日はご良家のパーティーの日ですよ~!」

「そう! それが問題なの!」


明日王宮で行われる、パーティー。


『パンドラ・プリンセス』は、ヒロインのシルフィアが15歳を迎え魔術高等学校に進学するところから物語は始まり、たくさんのクエストや乙女ゲームらしからぬ戦闘要素などをこなして、彼の好意を上げていく。という乙女ゲームなのか恋愛アクションゲームなのか難しいゲームなのだが、それはそれとして……。

あと4年後だからなんとかなると油断していたよ!!


このゲームは、開始時に幼少のシルフィアが攻略キャラクターとランダムで出会うミニイベントがあるのだ。

明日のパーティーで二人は出会い、そして学園で再会することになる。

それが、攻略において重要なフラグとなっているというまさに初見殺しのミニイベント。

これによって、何度想定していたキャラクターを攻略できなかったことか……。

ゲームなら間違ってもやり直しできるが、ここが現実な今は通用しない。


よし、参加する人物についてまとめなければ……。

まず、私はパーティーの会場となる王宮に住んでいるため参加は避けれないし、シルフィアもゲームの通りであれば参加するだろう。

それに、私が駄々をこねて参加しなくてもシルフィアが誰かと出会うだけで即死の可能性だってあるのだ。

慎重にシルフィアと誰を出会わせたらいいか選択しなければ。

恐らく、ここでシルフィアが誰と出会うか、これこそ私の重要な分岐点になるのだから。


攻略キャラクターは5人。そのうちパーティーに参加するのは、4人。


1人目は、宰相の息子マシュー・エルロイ。

代々王を補佐する役職を与えられたエルロイ伯爵家の一人息子であり、王宮内で暮らしているヘンリエッタの数少ない同世代の友人。

外見は、少し大人びており白みがかった金髪にエメラルド色の瞳が美しい美青年。

魔術の才能は、王宮魔術師も一目置くほど。さすが!

性格は、ヘンリエッタとも仲の良い懐の深さからも伝わると思うが優しく温厚で意外と笑い上戸。見た目だけだと大人っぽく見えるのに微笑むと年相応になる……天使かよ。

それがマシュー・エルロイという男。

……

正直に言おう。

ゲーム内の推しです。


2人目は、ヘンリエッタの2つ上の義兄アルト・アーシェ。

髪色は黒髪で、吸い込まれそうな赤い瞳が特徴的な美形。

アーシェ姓を名乗っているが、実はアーシェ家とは縁もゆかりもない平民出身。

凶星きょうせいの子”と言われるヘンリエッタとは逆に生まれ持っての“吉星きっせいの子”。

占いの国であるフォーリア王国は、世襲制でなく代々運勢の良い星を持つ人物が王座に就くため、12歳でアーシェ家の養子となりその年に国王に即位する。

魔術も戦闘能力にも長けた完璧人間であるが、性格は……まあ……後述しよう。


3人目は、アーシェ家の使用人であるウーゴ。

ショッキングピンクくらい濃い髪色と、同じくピンク色の瞳が特徴的なワイルド系イケメン。

元奴隷という壮絶な過去から、あまり人と話すのは得意でなくアーシェ家では庭の手入れや護衛などをしている。魔術は簡単な魔術のみ使用可能で、物理的戦闘に長けている。

性格は、寡黙ながら頼りがいがあって優しい。


4人目は、エイデン・アルシュナ。

黒髪褐色で三白眼なのが特徴。性格も明るくハキハキしている、ノリの良いお兄ちゃんって感じのイケメン。

魔術も戦闘能力もそこそこって感じだけど、特殊スキル持ち。

実は、隣国の第三王子で隣国にはない魔術に興味があって学園に留学してくる人物。

ヘンリエッタとの関わりは薄いが、父親同士仲が良いため今回のパーティーも参加していたはず。


5人目は出会いが特殊すぎるし、会うのも学園からなのでとりあえずこんなもんかな。


次に明日の流れだけど……。

パーティーで、義兄アルトと同じく“吉星きっせいの子”のシルフィアがもてはやされているところをヘンリエッタが目撃する。

田舎の男爵令嬢が良家限定のパーティーに招待され、ましてやもてはやされている光景に、例にもれず腹を立てたヘンリエッタはこれまたテンプレ通りシルフィアに意地悪をする。

そして、ヘンリエッタの意地悪から逃げ出したシルフィアがどこに逃げるかによって出会う人が分岐するって感じなんだけど……


まず、アルトルートはない。

だって、まずい。まずすぎるのだ。

何がって?

この義兄、基本的に病んでるからです!

ヤンデレじゃなく、ヤンデルなんです!

人様の兄……いや今は私の兄とはいえ、とんだサイコ野郎なんです!!

それはそれは、精神だけでなく性格も歪みに歪みまくってて本当はヘンリエッタと血縁者なのではと疑う程。

だってこのアルトという男、ハッピーエンドでもバッドエンドでもどちらにせよアーシェ家が暮らす王宮に放火するんですよ。


占いに固執して生まれ持った星が職業や身分に影響する国のせいで性格が歪んだとはいえ。

養子先で自分と自分の好きな女の子が義妹に嫌がらせをされていたとはいえ。

……

やりすぎでしょ!!

悪役のヘンリエッタも天国でびっくりする凶行だったと思うよ。


……というか、どこが吉星きっせいの子だよ!!!

アルトこそが凶星きょうせいの子でしょ!!!

というわけで、アルトルートは絶対にない。


次に、ウーゴとエイデンルートだけど……悪くない。悪くないんだけど、大体のルートでヘンリエッタの悪行を裁判で明らかにされて、断罪されるんですよね。

で、処刑って流れになるんだけど、そこはヘンリエッタを溺愛するヘンリエッタの父ダンフォース・アーシェがなんとか食い止めるので命は助かる。

けれど、私の記憶が正しければ「“凶星きょうせいの子”を生かしても碌なことがない」「占いだけでなく裁判で“凶星きょうせい”は悪と証明されたんだ!」なんて理論が持ち上がって暴動が起こってたから、あえてシルフィアと会わせたくはないんだよね。


で、残ったマシューですが。



彼のルートは最高なんです!

優しい仏のような心を持った彼は絶対に女の子を傷つけることをしなくて、権力を行使しない。マシュー・エルロイまじ天使。

え?

何が言いたいって?


つまり、つまりですよ。

マシュー・エルロイは、女の子であり古くからの友人でもあるヘンリエッタにも激甘なんですよ!!

最高かよ……最高だったわ。

まあ私の個人的意見ノロケはここまでにしておいて……。


この未来の宰相殿はヘンリエッタがどんなに酷い人物であっても処刑することも、裁判を起こすこともせず、秘密裏に罪を償わせてヘンリエッタの身分も居場所も没収しない。

こう書くと平等な友人であるマシューの甘い対応こそ、ヘンリエッタの我儘放題を悪化させた原因な気もする。けれど、今の私にとってはありがたいのでいっか。


ということで結論!

狙うべきはマシューとシルフィアを結ばせること!

なので、明日シルフィアとマシューを会わせることが私の人生の分岐点となる。

よーし、マシュー待ってて!!

今、(シルフィアが)会いに行くから!!

別に、ミーハー心で私もマシューに会いたいなんて考えてない。

5割くらいしか……。


私の思惑はともかくとして、明日のイメージは完璧かな。

万年筆をテーブルに置き、明日のためにもう一度メモと睨めっこをして……。

もう一つ気付いたことがある。


クエスト

戦闘

占いで決まる将来

(元)奴隷


ゲームでは「ふーん」と流していた言葉がパワーワードなことに。

そんな物騒な世界だったんですね、ここ……。

ルート関係なく普通に学園の端で野垂れ死ぬ未来も見えないことないんですが。

それは、魔術と戦闘スキルを上げたらなんとかなる……よね!



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