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18:避暑へのお誘い

ウーゴとマシューと中庭のガーデンテラスでくつろいでいた時のことだった。


「リタは、僕と避暑に行くと思っていた」

「え。おじょう、さま、どこかに、いくの?」


先ほどまで私とウーゴに、この世界の知識を教えてくれていたマシューがふと零した。

その言葉に、「これはどういう意味?」「あれは何?」と私と一緒に尋ねていたウーゴも本から顔を上げる。


「どこにも行かないわよ」


私の言葉にマシューは苦笑しながら顔を横に向けた。

マシューの視線の先を追うように庭に目を向けると、向日葵が咲きはじめている。

どうりで最近暑いわけだ。

日本ほど過酷な夏じゃないけど、そろそろ外でのお茶会はやめないと日焼けをしそう。


「聞いたよ、アルト様の育った町に行くって」

「あー、あれは不可抗力で。なんとかならないかなあ」

「ならないでしょう」

「はぁ……」


アルトと共に王宮から離れた村に行っている数日後のことを考えるとため息が出る。

『ヘンリエッタ様にはいつか俺が育った町に来て欲しいんです』

あの時は社交辞令だと思って軽く流したのに、まさか庶民の生活の視察に誘ってくるほど本気だったとは。


「はぁ……」


今度のため息は私でなくマシューだった。

いくら私とエルロイ家御用達の避暑地に行けないとはいえ、落ち込みすぎでは。

私もどんな場所なのか気になるけどさ。


「けんか、だめ、です」


私たちの様子をおろおろと見ていたウーゴが、あまりの空気の悪さに慌てて私たちに割って入った。


「喧嘩をしているわけじゃないけど……」


マシューはウーゴにそう返すと、ウーゴはそれなら良かったと小さく胸を撫でおろしていた。

マシューと本を読みながらガーデンテラスでくつろいでいたところに、ウーゴが花の手入れをしにやってきたので(マシューの私への好意が振り切ってて不安なので)お茶会に参加させたけど……。

ウーゴとマシューは話してみればやはり馬が合うらしく、この短時間で随分と仲良くなっていた。

仲が良いことは、素晴らしきことかな。


「二人っきりでお忍びの視察って、何があったら水と油の君とアルト様がそんな関係になるの」

「分かってたら苦労しないわ」

「それもそうか。あのアルト様だからね」


マシューはアルトを思い出しているのか少し怪訝そうな顔をした。

そういえば、ゲームでもアルトとマシューが仕事以外で話している姿は見たことないかも。


「マシューはアルトが嫌いなの?」

「嫌いかすら分からないよ。あの人は気分がすぐに変わって、あまり長話は出来ないからね」


分かる、すっごく分かる!!

今までのアルトのことを思い出しながら、うんうん、と頷いた私に「悪い人じゃないことは知っているけどさ」と付け足した。

そんなマシューにウーゴは小さく首を振った。


「おう、さまは、ぐるぐるしてる」

「ぐるぐる?」

「おじょう、さま、のこと、つめたいかお、して、みたり、やさしいかおでみたり」

「つめたいは分かるけど優しい顔では見てない気がする」

「みてる、よ。でも、俺は、にがて」

「とにかくウーゴもこう言っているし、用心するに越したことはないだろうね」

「そうかもね。私もまだ死にたくないし」


後に続けたウーゴとマシューには同意するけど、万が一アルトに聞かれていたら不敬罪と言われてしまいそうだ。

でも、疑われるアルトもアルトだと思うよ。

考えながら私が、なんとなくブレスレットの石を撫でると、


「それ、アルト様と出かける時もちゃんと付けておいてほしいな」


マシューは真面目な表情で私に言った。


「……だったら、これが何の効果があるのか教えてよ」

「帰ってきたらね。……いいから絶対外さないで」


またはぐらかされた上に、マシューに念を押されてしまった。



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