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13:パーティーのお誘い

マシューとぎくしゃくしながらも、特にイベントが起こるわけでもなく日々は進み…。

ようやく私が5つくらい魔術を覚えた頃。


「おねがーい。リタちゃん」


「嫌です。ぜっったい嫌です!」


ニコニコと笑うお母様を目の前に、私は青ざめた顔で首を振りまくっていた。


「どうして私が……」


「だって、私がお誘いしても参加してくれないと思うもの」


そう言って、お母様は私の分ともう一つ招待状を押し付けてくる。


「参加者は多いほうがいいでしょ」


「そうかもしれませんけど……」


「でしょう?」


お母様は近々開催されるパーティーのために一生懸命らしい。内容は詳しくは知らないけれど。

私がマシューたちと出会った昼間のパーティーとは違い、夜に開催されるとかなんとか。

そのパーティーの主催者であるお母様はどうしても成功させたいらしい。

それはよく知っているし、私も出来ることなら手伝いたい。


でも……。


「それだけは絶対お断りします!」


「えー、寂しいこと言わないでよ。貴女の兄でもあるし、最近は仲良しじゃない」


私に、アルトへ招待状を渡すミッションを命じるのは間違ってるよ……!

せめてマシューへの招待状なら、喜んで…とまではいかなくても受け取るのに。

お母様は早々にエルロイ家宛ての招待状を渡し終えたらしい。

なんで、そっちを優先したのお母様!?


「それじゃリタちゃん、お願いしたからね」


「え、お断りしますって言って――」


悶々とする私を放って、ぽんぽんとマイペースに話を進めていくお母様は私に招待状を握らせると引き留める隙を与えずに出ていってしまう。


えぇ……どうしろと……。

食堂で話して以来、会うと業務的な挨拶はしても、会話したのはあのときだけだし。

アルトが私を見る目は相変わらずだし……。


「お嬢様、王様なら今は鍛錬してるんじゃないかな」


はぁ……とため息を吐いている私に黙って会話を聞いていたルイが話しかけてくる。


「ねえ、ルイ代わりに……」

「行きませんよ」


「ルイの意地悪。もうお菓子あげないんだから」


「構いませんよ。ベルに叱られるのはもうこりごりです」


ルイに頼もうとしたのに、ばっさりと断られてしまった。


× × × × ×


王宮の中庭を抜けて、ルイが教えてくれた場所に向かう。

ベルとルイは、「代わりには行けないけど、そんなに嫌な顔をしたお嬢様ひとりで王様に会わせることもできない。王様に失礼!」と、どっちの味方なのか分からないことを言いながら付いてきてくれたんだけど、一人で行くことにした。

私自身、自分の安否が不安なので付いてきて欲しいのはやまやまなんだけど……食堂でのアルトを思うと、どんなことを話してくるか分からないからね、念には念を。

ベルとルイにまた変に疑われるのは嫌だから。


……というか、ここらへんあんまり来ないんだけど迷ってないかな。

いつもなら、中庭なんかにいたら、(私が脱走する)危険性からウーゴあたりに首根っこ掴まれるように捕獲されるからなあ。

今日は、王様に会うって言ったらあっさり通してくれたのが奇跡に近い。


中庭からずっと続くタイルに沿って、歩いていると大きな柱が立っている建物が見えた。

神殿のような造りのそれは、柱以外の仕切りがないから中が丸見えだ。


ここかな?

ルイが言ってたアルト専用の鍛錬所って。


たどり着いて柱の陰からそっと中を伺うと真っ白な部屋の真ん中に、アルトが立っていた。

アルトは、手には剣をもって、何か術を練習しているのかぶつぶつと呟いている。

瞬間、現れる無数の小さな炎。

メラメラと現れた炎は連なるように集まり、次第に構えている剣に寄り添って固まっていく。


整った顔立ちのイケメンが、稽古に励む。


その光景はゲームで言うと専用のスチルが付くような場面だと思う。

実際、今のアルトをメイドたちが見たら色めき立つのが想像できるもん。


……だけど私にしたら、私のことを殺したいくらい憎んでいる人間が凶器を持っている+二人っきり、という最悪の光景。

ぶっちゃけこれ以上ない不穏さじゃないですか?


やめよう。

今日はやめておこう。

急がなくても食堂で会った時に渡せばいいよ。

たしかこのパーティー2週間後だったし、うん。


「……帰ろ」

「なんで帰るんですか?」


「ひいっ!?」


鍛錬所に背を向けた瞬間、傍で聞こえてくるアルトの声。

振り返ると、さきほど炎を纏っていた長い剣を下におろしたアルトがいた。アルトの足が長いのか剣が長すぎるのかはひとまず置いといて、アルトの足くらい長いんじゃないかな。


というか、いつの間に……。


「ヘンリエッタ様がここに来るのは初めてですね。どうされたんですか?」


「え、えと……」


「あぁ、貴女の誕生パーティーのお誘いですか」


私が説明するより早く、アルトは納得するように頷いた。


「てっきり、あの話かと思ったので残念ですが受け取っておきます」


そして、流れるように招待状を私の手から抜き取ると去っていく。


「あ、ハイ。よろしく、おねがいします……?」


秒速でミッション達成しちゃった……。

なにこの拍子抜け感。


「というか、私のパーティーなの……?」


知らなかった……。だったら、お母様もあんなに必死に人数集めなくていいのに。

私なら、マシューとウーゴとベルとルイで十分だよ。

だって、おしゃれしてオホホウフフ、あらあらまあまあみたいな貴婦人の会話に相槌を打ちながら、はしたなくない程度にご飯をつまむパーティーは神経が磨り減るのでちょっと遠慮したい……。

特に私のお祝いなんだったら小学生の年齢なんだし、ここは年齢を考慮してみんなでゲームしながらジュースを飲むお誕生日会がしたいなぁ……なんて、この世界では無理なんですよね知ってた。


と死んだ目で現実逃避をしながら、アルトを見ると今日はさほど私に興味がないらしく鍛錬を再開していた。

私が光魔術を詠唱するくらいの時間で属性魔術を発動させるアルト。

たしか、アルトは“吉星”の効果で生まれつき炎系魔術が習得済みなんだよね。

フォーリア王国の言い方を借りると、サラマンダーの加護を受けている人。


……それにしても、炎を纏わせた剣技かっこいいなぁ。どのくらいの習熟度があれば習得可能なんだろう。

あぁ、こんなとき以前の私だったら、学園で支給される生徒手帳(メニュー画面ともいう)でパパっと現段階のアルトの強さや習得魔術が確認できるのに……。

記憶力の良くない、私の記憶が頼りなのが辛い……!



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