表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/31

11:イベントはまだ早い


「そんなに仲の良い姿を見せられると妬けちゃうね」


マシューが笑顔で私に話しかけてくる。

どうしてだろう。

いつもと変わらない眩しくて可愛い笑顔のはずなのに、怖い!!

思わずウーゴを盾にして、後ずさる。


「ん、ん」


私の手で無理矢理口を封じられているせいでちょっとウーゴは苦しそうだ。

だけど、今はそれを気遣っている余裕はない。


「どうして、後ずさるの?」


「え、いや。そのつもりはないんだけど。……ぼ、防衛本能?」


ふふ、と笑うマシューの背後にアルトと同じくらい黒いオーラが見えるのは気のせいと思いたい。


「最近、リタが使用人に優しいことはいいけれど。そうやって簡単に使用人に隙を見せてはいけない。……君は隙が多すぎるから」


「わ、分かりました……!」


マシューは私にぐっと距離を詰めると、ウーゴの口に当てていた手を掴んで下ろした。

思いのほかマシューの力が強くて手首が痛い。


「ぷは」


手首の痛みに顔を顰めていたのも一瞬で、すぐ近くで響くウーゴの声にびっくりする。

パニックになってたからなんとも思わなかったけど、これは確かに近い。

後ろから抱き着くように手を回していたことに、自分でやっておいて動揺しながら離れようとすると、握られたままのマシューの手が私をぐっと引き寄せる。


「えっ」


背中に何かが当たる感覚に見上げると、私より少し上にあるエメラルドグリーンの瞳に私が映った。


「ほら、こうやって簡単に異性に触れさせてしまう。……こんなこと、貴族社会では馬鹿にされてしまうよ」


「!?」


私、マシューに抱きしめられてる……?

驚きすぎて目を見開いている私を置いて、マシューは優しく微笑んでそっと私の腰に手を当てた。


「まあ、リタのことを公に咎められる存在なんていないだろうけど。陰口を言われるのも嫌だろうから」


「いや、近……!!」


近付いてくるマシューの顔に、目を逸らすけれど背後の熱は変わらない。

なんでこうなった。


「……僕は君の友人として心配してるんだよ。使用人に優しくしすぎると、見返りでしか働かなくなるからね」


私の肩に顎を置くようにして、再びマシューが話しかけてくる。

けれど、声の方向からして私ではなくウーゴを見ているようだ。

ウーゴにどんな表情でマシューが話しかけているのか見たい気持ちもある。

が、近すぎて横を向くとマシューのほっぺにぶつかりそうだからやめた。


「……っふ」


耳元で聞こえると言っても過言ではないマシューの吐息と、清潔感のある香りがふわりと鼻腔をくすぐる。

うぅ……何この超展開。

神様、これご褒美じゃない。

ご褒美を超えて罰ゲームだよ……!


「マ、マシュー」


顔から火が出そうになりながらも顔を上げると、「ん?」とマシューがなんてことないように私を見た。

くそう、顔が良い……!


じゃなくて!!

誰か助けて。

うら若き公爵令嬢の純潔をお守りください……推しの顔の良さで全てを許しかけた私には無理です。

ウーゴかベルかルイ助けて……!

横目で辺りを見渡すが、ウーゴはいなくなっているしベルとルイもいない。

ちょっと!! 婚約者でもなんでもない私たちのいちゃつきに空気を読まなくていいから!!

廊下という公共の場でいちゃつくことをもっと問題にして!!


「リタ、顔真っ赤だね」


すぐそばで聞こえるマシューの嬉しそうな声。

機嫌が戻ったのはいいことだけど、解放してください。


「さっき、ウーゴに触れてた時はそうじゃなかったのに。僕だとそうやって照れてくれるのは嬉しいな」


真っ赤な顔を隠そうと目を逸らす私を至近距離で見つめるマシューは、行動とは裏腹に子供っぽく笑った。

いつもなら手に触れただけで耳まで真っ赤にするのはマシューの方なのに、何故……!!

こんなの私のマシューじゃないよ!!

私のマシューは、女性をスマートにエスコートする紳士でこんなに不用意に接近したりしないはずなのに……! マシューは11歳のはずなのに……!!

びっくりするくらい手慣れてる!!


「マシュー、だ……だから近い」


これ以上は私の脳が溶ける。

焦って、マシューの胸を手で押して離れると私はマシューと2mくらい距離を取って顔を隠す。

な、なにあのさっきの甘い台詞!?

これで11歳でしょ!?

多分、このイベント、ラブイベントレベルで言うとレベル1でしょ!?

むりむりむりむり、心臓が持たない!!

そうだった。

ここ、乙女ゲームの世界だった……!!


でも。

それにしても、一言申したい。


「……い、異性と触れ合うのはダメってマシューが言ったくせに!! こ、こんなのっ、健全なお付き合いじゃない!!」


言い逃げをするように、私は全力でその場を去った。

これから、マシューと何事もなかったかのように一緒に遊べない。

私にはそんな強さがないです。




後日聞いた話によると、顔を赤くしたり青くしたりと忙しく表情を変えるマシューと終始赤い顔のベル、そのベルに目隠しされたルイの姿が廊下で目撃されたとか。なかったとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ