第二話 不幸は続く その2 文化研究会説明中
そんな訳で放課後。
気のいい奴らと別れ廊下を専科教室棟へ。
移動魔法を使ってもいいがまた空間を変な具合にいじられていると困る。
なら歩きの方が突然何かに出会う事がない分心臓に負担が少ない。
ああ本当は放課後も寮に直帰して眠りたかったのにと思うが仕方無い。
専科教室棟の階段を登り、三階の二番目の部屋をノックする。
「はいどうぞ」
扉を開けると……えっ!
「間違えました」
咄嗟に扉を閉め回れ右。
何かピンク基調のほんわかした雰囲気の部屋で女子がお茶会をしていた。
何となく知っている顔もいたような気がするのはきっと気のせいだ。
念の為部屋をもう一度外から確認する。
理科実験準備室に間違いない。
よし、今日はこのまま帰って寝ようと思った時だ。
ガラッと閉めた扉が中から開く。
「諦めてさっさと入れ」
壁、いや絵麻先輩だ。
固まったまま部屋の中に引っ張り込まれる。
中は見間違いでは無く、やっぱりピンク基調のほんわかした雰囲気の部屋。
座り心地のよさそうな白い椅子に否応なく座らされる。
右側があのポニテ、杏奈先輩で若干命の危険を感じるがやむを得ない。
「すみません。この状態の事をまだお話ししていませんでした」
花梨先輩が一見済まなそうに言う。
「この方が可愛いですし広くて快適ですから、例会の時はこの状態にしています」
「空間魔法了解」
随分出鱈目な使い方だと思うが、これは空間魔法の応用だ。
空間を拡張し、ついでに色を変え、更にテーブルや椅子まで創造してしまう。
無駄というか私には理解できない魔法の使い方だ。
さて、集まっている女子のうち半数はこの前見た面子だ。
しかし半数は見た事が無いし、一年生のバッチをつけた女子も三人いる。
しかも一人は名前こそ覚えていないが同じクラスだ。
「それではで文化研究会、新年度第一回例会を始めます。まずはご報告の方から。
知っている方も多いと思いますが先週六日土曜日の二十時過ぎ、魔物の襲撃がありました。魔物は一本ただらが三十五体。沙羅さん、絵麻さん、杏奈さん、紅莉栖さんと、新人の遙さんに迎撃していただきました。
最近魔物の襲撃件数が多くなっています。原因は不明ですが皆様充分に注意いただけるよう宜しくお願い致します。ここで質問はございますか?」
壁、いや絵麻先輩が手をあげる。
「今の説明だけでは一年生が状況を理解できないだろう。今までの戦闘等も含めて説明したやった方がいいと思う」
おっ、壁もいいことを言う。
確かに魔物についての話をもっと詳しく知りたい。
だから色々と状況を教えて貰えれば大変ありがたい。
「そうだな。全部花梨に任せるのも悪いからここは私から説明しよう。もし抜けているところがあれば補足宜しく頼む」
沙羅先輩がそう言って説明を始める。
「元々ここ紀伊半島は魔物と人間が戦う場所だったらしい。それは高野山金剛峯寺や金峯山寺のような魔物と戦う実戦的な寺があることからもわかるとおりだ。
そしてここ明神学園は魔の素質がある生徒を引きつける性質を持っている。たとえば校章だったりパンフレットだったりだ。その辺は貴殿らも承知の通りだと思う。
元々この学園の創始者が何を目的にこんな学園を創立したのかは残念だが不明だ。だが魔の素質がある生徒がある程度集まったせいで、魔の気配に敏感な魔物も結果的には集まるようになってしまった。
私の知っている限り魔物の襲撃は大体春夏秋冬一シーズンに一回程度の割合だ。だが最近になればなるほど魔物の数も襲撃頻度も増えてきている。たとえば先日土曜日の襲撃、あれは春になって二度目の襲撃だ。魔物の種類と数は少なかったがな」