おまけ ある元ドワーフの10年後
夕陽が赤く空を染め上げる頃、彼女は自室に帰宅する。
自室はワンルームと言えば聞こえはいいが、狭い狭いアパートの一室。
ただし彼女の部屋は特別仕様だ。
床を一部剥がして地面に穴を掘り、地下室を作っている。
十メートル以上掘った先の地下室はワンルームの部屋より遙かに広い。
全シーズン気温の変化が少なく湿度が高いドワーフ的には快適な環境だ。
壁もしっかり土を焼き固めてあるので汚れることも浸水する事も無い。
大学時代からこつこつ拡張してきたこの地下室で彼女は生活している。
東京に出た際、高校時代の友人に同居しないかと誘われたがマンション上階だったので遠慮した。
ドワーフにとって大地は必要欠くべからざるものだからだ。
穴を掘る関係上地盤や地下水の事も考え、武蔵野台地を居住場所に選択。
大学もその付近で幼児教育課程がある某教育系国立大にした。
今住んでいるアパートはその時から住んでいる場所だ。
なおこのようになっている事は勿論大家は知らない。
地下室そのものは決して狭くは無いが汚部屋と呼ぶにふさわしい荒れっぷりだ。
彼女の辞書に整理整頓という言葉は無い。
「何処に何があるかわかっていれば充分なのですぅ」
という主義だ。
洋服は洗っていない物がたまったら清拭魔法で綺麗にする。
ゴミはたまって動けなくなったら魔法で端に寄せて分解魔法をかける。
なお地上の部屋の窓はサッシはおろかカーテンを開けた事も一度も無い。
たまに換気扇を回す程度である。
家というか穴蔵に帰ると彼女は今日の食事であるスーパーの弁当三個を広げる。
彼女は食事の質より量に拘る主義だ。
「今日も皆さん可愛かったのですよ~。特に今日はあかねちゃんの太ももがぷよぷよですりすりしていい感じだったのですう~」
至福の記憶を思い出しながら食事を開始。
彼女の幼女趣味は相変わらず。
しかし最近は男子の幼児もなかなかいいと思えるようになってきた。
脱がして可愛いおちんちんを見ると思わず食べたくなってしまうほどだ。
「でも食べると怒られるから舐め舐めするまでに留めておくのです」
それも常識・道徳的にどうかと思うのだけれども。
多少目撃されても魔法で忘れて貰うから問題無い。
そして彼女は自分の欲望には忠実である。
弁当を食べ終わり、割り箸や容器を重ねてテーブルの端に積み重ねる。
多くなったら焼却するのだが、今日はまだ積んだ弁当容器が倒れないからセーフ。
そして今度は同じくテーブル上にあるノートパソコンを開く。
メル●リとヤフ●クのページで販売中の品々の売れ行き確認だ。
「今日は童子切安綱とガンブレードが売れたのですよん♪」
彼女は早速発送準備に入る。
伝説やゲーム等に出てくる武器刀剣レプリカの作成販売が彼女の第二の収入源だ。
「幼稚園教諭は貰えるおぜぜが少ないですからねえ」
彼女は予知魔法を使えるので投資で稼ぐ事も出来る。
ただドワーフ的には物を作って稼ぐ事こそ正当という意識が抜けない。
そんな訳で趣味の方々相手に刀剣レプリカを販売していたりするのだ。
彼女の作成するレプリカはリアルな事で定評がある。
何せ本物の鋼を使って製作しているのだ。
銃刀法の関係上刃こそつけないけれど。
「まだまだ在庫はあるので製作の必要はないのです」
発送準備が終わった後、在庫確認して武器販売部門のお仕事は終了。
「さて、あとは即売会に向けて頑張るのですよ」
彼女は自分の前に液タブスライドさせた。
「今日も園児と遊んで創作意欲が湧いたのです。ウシシシシ……」
漫画を描き始める。
勿論18禁でオリジナル、内容はロリ・ショタの絡みである。
彼女の漫画は一部のマニアの評価が大変に高い。
「何せ毎日触れあっているのです。実体験に勝るものは無いのですよ」
色々まずい事もしているが彼女は魔法で記憶操作できる。
怖いものなど何も無いのだ。
外からチュンチュンと鳥の声が聞こえ始めた。
「さて、そろそろ寝るとするのです」
ドワーフ体質の彼女の睡眠時間はごくごく少ない。
疲れてもヒール系魔法でどうにでもなる。
こんな生活だが彼女は職場へ遅刻した事は一度たりとも無い。
真面目で子供好きなお姉さんとして高く評価されているのだ。
「今日は誰をぷにぷにしようかなのです~」
そんな事を言いながら彼女は寝袋の中にもぞもぞ入る。
ベッドなど場所を取るから使わない。
そんな物を使わなくても彼女はとっても寝付きがいいのだ。
「うしししし、可愛いのでお尻にキスしちゃうのです」
これは寝言。寝袋の中で彼女は今日も幼女の夢を見ている模様。
だらーっとよだれを垂らしながら幸せそうな顔で眠っている。
佐和明美26歳、前世はロリコンドワーフのグラード巡察騎士。
彼女の頭の中は常に春爛漫である。
3年後では出てこなかった佐和さんのお話です。
本編とはあまり関係がありませんがおまけという事で。
多分この方が一番人生を謳歌しているのではないかと思います……
これでこのお話は完結です。
お読みいただきまして本当にありがとうございました。