第一話 入会決定 その3 私の敗北
「ちょっと待って。彼、状態異常が出てる」
ツインテールのやや小柄な女の子が私を見てそんな事を言う。
「でも魔物と近くで対峙はしていない筈ですわ」
花梨先輩の言葉に彼女は頷く。
「魔物のせいじゃなくて元々の体質だよ。女性恐怖症・中度だって」
うわちょっと待った! そんな事がわかるのか。というかばらすな!
「ならこんな事したらなおるかなっと」
ポニテの女の子がふっと私の背後へ。
柔らかい温かさ、ちょっと重さを感じる感触、これは……
後から抱きしめられた!
「あともう少しで初歩の石化並の固化状態だよ、それじゃ」
「うん、面白い!」
私で遊ばないでくれ!固化しすぎて呼吸が苦しい!
「杏奈、取り敢えず席について下さい。折角今回の討伐を手伝っていただいたのに申し訳無いでしょう」
「普通の男子にはご褒美なのにな」
背後の感触がやっと離れた。
慌てて何度も呼吸をする。固化し過ぎて窒息しかけた。。
ただ周りが女子ばかりという状態は変わらない。
でもどうしても聞いておきたい事がひとつある。
「あの……この研究会って、女子だけですか」
「女子に限定はしていないのですけれどね。ただ魔力を確認出来た方が今のところ女子ばかりなので、結果としてそうなっています。元々女性の方が魔力は発現しやすいですし、やむを得ないかと存じます」
やっぱり。
でも確かに女性の方が魔力を発現しやすいけれど、女子ばかりはないだろう!
よし脱出だ。短距離移動魔法……移動出来ない!
「すみません。遙さんには大変申し訳ないのですが、貴重な戦力を逃すわけにもいきませんので空間封鎖をさせていただきました。大変申し訳ありません」
花梨先輩の空間魔法は私より遙かに強力だ。
つまり逃げられないと決定。
「ああいう時だけ参加というのは駄目ですか」
「それはそれで申し訳無いような気がします」
いえ出来ればおかまい無くという事でお願いします。
勿論ほどほどに固化しているので何も言えない。
ああ早く寮に帰って惰眠したい!
「さて、そんな訳でこれから松戸遙さんにご参加いただくことになりました。皆様拍手をもってお迎え下さい」
パチパチパチパチ。
私の意図しない方向で話が進んでいく。
「さてそれでは自己紹介を。私と絵麻は自己紹介は終わっているので沙羅からお願いします」
知らない三人のうちやや背の高いショートカットの女子が頭を下げる。
「神立沙羅。三年B組。肉体強化魔法と刀への魔法付与で戦う。よろしく」
次は私を窒息死させかけた小柄なポニテだ。
「高浜杏奈、二年A組。紅莉栖とは二卵性の双子だよ。私の方は寒冷系魔法と風魔法で攻撃魔法メインの魔法使い。よろしく」
次はツインテールの方だ。
「高浜紅莉栖です。攻撃魔法は電撃系統を使えますが、どちらかというと補助魔法と回復魔法が得意です。宜しくお願いします」
俺が固まっているうちに着々と仲間という既成事実が築かれていく。
なので固化した口を必死に開いて抗議する。
「でもこの体質だ。一緒の活動は無理だ」
「なら私達で遙に協力するというのはどう?」
さっき私を窒息死させかけたポニテがそんな事を言う。
「協力って何だ」
「遙の女性恐怖症を皆で治すの。そうすればお互いWin-Winでしょ」
「そうですね。それなら遙さんも参加する意義があると思います」
「そうだね。程良くスキンシップを図って徐々に慣らしていけば」
私が反応できない状態で話が進んでいく。
「そう言えばこいつを最初誘った時、いきなり両胸を触られたんだぞ」
「うわ大胆!」
あれは事故なんだ!
「ならスキンシップを多少強引に図っても大丈夫かな」
おいちょっと待ってくれ。私の意向は!
「済まんが諦めた方がいい」
沙羅先輩が不吉な事を言う。
「世の中にはどうにもならない不条理があるんだ。転生者ならそれくらいはわかっているだろう」
言いたい事はわかるが、この状況がそうだとは思いたくない。
相変わらず空間封鎖は続いているから逃げられない。
そしてポニテ、いや杏奈先輩がわざとらしく近づいて来た。
「それじゃまず最初のレッスン、後ろから抱きつき!」
うわちょっと待て! 呼吸が……