第十九話 討伐合宿開始 その1 夏合宿その2の開催
八月二十九日金曜日朝八時三十分。
毎度お馴染み準備室は結構混んでいる。
大魔王麾下第三騎士討伐合宿、そんな物騒な合宿に文化研究会の会員ほとんど全員が参加する模様だ。
「いいのかねえ、こんなんで」
「でも大丈夫だと遙も思っているんだろ」
「まあそうだけれどさ」
何か普通の合宿と変わらない感じだ。
「今回は本合宿にお集まりいただき、ありがとうございました。合宿委員の内原さんから本日の予定をご案内します」
「それでは説明します。まずは第二合宿場に移動します。そちらの食堂で詳細の説明及び当番等を決めようと思います。それでは移動の方宜しくお願いします」
例によって部屋の扉がそのまま合宿所の前と直結している。
そんな訳で合宿所の食堂に移動。
前にホワイトボードを持ってきて、内原先輩が説明を開始する。
「今回はアトラ世界大魔王麾下第三騎士討伐合宿にご参加頂きありがとうございます。それでは日程から説明させていただきます」
内原先輩はホワイトボードにささっと記載する。
○ 29日 買い出し、訓練 昼食 訓練 夕食
○ 30日 朝食 訓練 昼食 訓練 夕食にて31日の編成発表
○ 31日 朝食 魔法討伐戦(適宜昼食)夕食
○ 1日 朝食 帰寮
「日程としてはこんな感じです。まずはこれから合宿費三千円を集めた後、生活班の皆様で合宿の食糧を買い出しに参ります。それ以外の方は部屋に荷物を置いた後、基本的には訓練になります。合宿場裏のグラウンド全体に部外からの不可視魔法を展開しますので、その中で訓練を行う事になります。
また部屋割りは今回は班ごととなります。このような形で分けますので、詳細は各班で決めるよう願います」
○ 201号室 合宿執行部
○ 202号室、203号室、205号室 生活班
○ 206号室、207号室、208号室 製作班
○ 301号室、302号室、303号室 戦闘班
うちは三階か。
多分また皆と同じ部屋なんだろうなと思う。
もう今更その辺に希望とか期待とかは持ち合わせていない。
「また、風呂場のうち広い方の風呂を女性専用とします。なお今回は十四時過ぎには湯を入れ始めるので十六時過ぎには使用可能です」
これは前回の風呂の件の反省からだろうな。
ただ女性専用は決めているがもう片方を男性用と決めていないところが問題だ。
つまりGWの合宿の時と同様の事故が起きる可能性を否定できない。
今度はあらかじめ逃走場所を調べておこう。
「なお、今回の食事当番は生活班の方で一括して受け持って頂けるそうです。またカスタム武器を試したい方は製作班の方へお願いします。ある程度の材料と武器とを用意してあるそうです。
また魔法訓練に関しては、戦闘班の方で宜しくお願いします」
おいおいおい、うちが訓練担当かよ。
食当が無いのは助かるけれどさ。
まあ特殊な属性魔法以外は大体D班の皆さんは使用可能だし、何とかなるだろうけれど。
「それでは午前十時より訓練開始とします。昼食は十二時三十分予定ですので宜しくお願いします」
何か第三騎士討伐というより魔法訓練合宿だな、これは。
そんな事を思いつつ、私は三階の303号室へ魔法移動する。
まずは私の寝場所である次の間を確保しなければならない。
テーブルや椅子を片付け荷物を置いて敷き布団と掛け布団、枕を置く。
一通り準備が出来た頃、壁の向こう側でバタバタと音がし始めた。
程なく部屋と部屋を仕切る襖が開け放たれる。
「相変わらず早いね、遙」
「やっぱり男子別室という訳にはいかないか」
「D班も人数増えたしね。それに遙がいても誰も気にしないし」
私は気にするのだけれど、まあ仕方無い。
言っても誰も考慮してくれないのはわかっているから。