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第十八話 少し寄り道 その2 少し寄り道(1)

 出たのはこの世界によくある感じの村落だった。

 木造の建物が多いという事は南部だな。

『ここって』

『そうだよね』

 極悪女、百合亜さん、英美里さんが反応している。


『ええ、ここはレイシアです』

 レイシアか。少し考えて思い出す。

 フィルメディの南端近くで、第一騎士が現れた場所の近くにある村だ。


『立ち寄りたかったのはこちらです』

 花梨先輩が歩き出す。

『この村は無事助かったんだね』

『昔のままだ』

 極悪女と英美里さんの会話。

 百合亜さんがあちこち見ながら歩いている。

 私はこの村はあまり憶えが無い。

 第一騎士が出現した際は現場近くまで宮廷魔道士に移動魔法で送って貰ったから、この村を経由しなかった。

 帰りも半死半生状態で宮廷魔道士に回収してもらったしな。


『英雄の碑か』

『ええ』

 佐和さんの台詞に花梨先輩は歩きながら頷いた。

 小さい商店や家が並ぶ通りを歩いて、やがて小さな広場に出る。

 広場の傍らに三人の石像と石碑が建っていた。

 石碑によくあるコケ等は無く綺麗にされている。

 像の前には花とこの地方の名産のシシケと呼ばれる肉入り饅頭が供えてあった。


『ここは二十数年前、この村を救った三人の冒険者の慰霊の像です。

 彼女らは大魔王麾下の第一騎士が麾下の魔物と出現した際、それらの群れを自らが引きつけ誘導する事によってこの村を救いました。これは自らの命と引き換えに村を救った三人の冒険者を称えると共にその慰霊として建てられたものです』

 つまりは百合亜さんや極悪女、英美里さんの前世の碑か。

 像はいずれも女性。

 プレートアーマーと大楯装備の大柄な戦士、革鎧にバックラー装備の小柄な戦士、杖とローブ装備で更に小柄な魔道士の三人だ。


『本物より格好いいかな、この像』

『実際は装備がもっとボロだ』

『シシケが好物だっての、二十年以上後まで伝わっちゃったんだね』

『それは百合亜、いやユアでしょ。よく三包み位買ってはもぐもぐやっていたし』

『あの頃に今の力があったらな』

『でもあの絶望的な作戦も無駄にはならなかったんだね』

『色々考える余裕も無く必死だったけれどな』

 他の人はじっと眺めている。


『今でもお供えとかしてくれる人がいるんだな』

 花も饅頭もまだ新しい。


 暫くそこにいた後、花梨先輩が宣言する。

『さて、それでは次の場所へ異動します』

 いつもの浮遊感が襲う。

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