第十七話 久しぶりのフィルメディ その3 連絡会議
「それで早速だが、第三騎士の状況について伺います。
第三騎士についてはどの国も把握できていないのが現状です。以前の手紙によるとそちらの世界に転移したと伺いましたが」
「ええ。以前の手紙の通り、私と共にこちら、地球と呼ばれる世界に転移しました。現在討伐準備をすすめており、あと二十日ほどで討伐される予定です」
花梨先輩の言葉にヴァトーは頷く。
「確かにそれだけ超級魔道士がいれば何とかなるのでしょう。問題はその後です。
第三騎士が討伐された後、そう遠くないうちに第四騎士の前駆体が生じると思われます。第四騎士の後には大魔王の復活もあるでしょう。手紙ではその討伐に関する事後処理を頼みたいとあったのですが」
「ええ、私達はもはやこの世界に根を持たぬ者。ですので戦闘後の調整作業等には関わる事は出来ません。それに私の存在が公に出た場合、ある秘術の犠牲者が出る可能性を否定できません。ですので私達の存在を公に出す事無く、事態を収拾させたいのです」
「もしこの世界に復帰を望むなら、フィルメディの籍と地位を与えることも可能です。前例もあることですから」
「私達はそれを望みません。既に向こうの世界の住民なのです。この世界にはそれぞれやり残した事を終わらせに来ただけですから」
ヴァトーは小さくため息をついた。
「わかりました。本当は国王から、出来れば巡察騎士にスカウトするようにという命令も来ていたのですけれどね。お望みの通り計らうと致しましょう。
但し第四騎士や大魔王がフィルメディ領内以外の場所に出現した場合は、工作がやや難しくなる事は承知しておいて下さい。無論皆様の身分は巡察騎士または特権級冒険者として取り扱う予定ではありますが、魔法紋が漏れる場合もあります。特に王女と護衛騎士、シャルホブ魔法技術士の魔法紋は他に知られていますので」
まあそうだよなと私も思う。
私や花梨先輩の魔法紋はどう見てもサラステクス王家系統だしさ。
沙羅先輩も向こうの騎士団に魔法紋は登録済みだろうし。
「ですので戦闘時には被害防止等の名目でできる限り他国勢力の接近防止をしていただきたいのです。こちらの戦力はできる限り他に明らかにしたくないので」
「了解致しました。討伐等でこの世界を訪れる際、この砦を経由していただければ、隠蔽対策を行う者をつけさせていただきます」
「ありがとうございます」
「それでは先に用意したものを」
ミオネが立ち上がり、ヴァトーから何か受け取って私達一人一人に配る。
見ると身分証明書だ。
フィルメディ王国発行の巡察騎士としての身分証明書と、フィルメディ王国王都セノダイル冒険者ギルド発行のものと二種類ある。
ただし私のは……おいこれまずいだろう!
「ヴァトー、私の身分証、これ死人のだぞ」
シャルボブの名前で作成されていた。
「王国発行の者はともかく、ギルドの魔法紋登録は誤魔化せませんから。ですのでグラード様とシャルボブ様の冒険者身分証はかつてのご自身のものになります。ですのでグラード様はその身分証明書で亜人国等へ出向かないよう宜しくお願い致します」
理由は簡単だ。
「指名手配犯だものな、お前」
「指名手配じゃないぞ、単なる注意書きだ」
「佐和さん何か問題があるのですか?」
ここでその辺の問題点を知っているのは私が前に話した面々だけのようだ。
逆に言うと旧D班の面々は知っている訳で。
「まあ世の中には聞かない方がいいことも色々あるんだよ」
ポニテのその台詞に新人四人と花梨先輩、沙羅先輩は首を傾げていた。