第一話 入会決定 その1 魔物襲撃
当分は土曜日・火曜日の午前6時に更新の予定です。宜しくお願いします。
さて、高校生活そのものはなかなか快適だ。
私の世界の知識と色々異なる処も多いがそこは割り切る。
授業は中学校時代より速くて内容が多いがそれはそれ。
知識魔法と記憶魔法を使いまくればチートも楽々。
ただ魔法を使える状態にするため知識や用語を整理するのが多少面倒な程度だ。
教室も男女共学だが若干男子が多い状態。
つるむようになった連中も気のいい奴ばかりだ。
女っ気が無い奴ばかりだというのも大変に楽でいい。
おかげで日常生活で固まって困る事はあまりない。
女教師は何人かいるが皆さんおばさんばかりなので女性と意識しないで済む。
そんな訳で授業を受け、放課後弁当を買って帰り、最低限の予習復習をした後弁当を食って速攻寝るという日々が始まる。
一日十二時間以上寝ているがそれこそ至福、惰眠に勝る贅沢は無い!
そんな日々を過ごして初めての週末、土曜日になった。
今日明日は延々と惰眠して過ごす予定だ。
食事は菓子パンを八つ買ってあるので好きな時に食べればいい。
いざという時に備えて食パンも冷凍してある。
そんな感じで朝からひたすらベッドで寝ているわけだ。
健康な高校生男子がそんなに長い時間眠れないって!
私には魔法があるのだ。
睡眠導入魔法でぐっすり、必要な時はきっぱり起きられる。
何せ前世は寝る間も惜しんで魔法開発に勤しんでいた。
寝る時間も不定期にしか取れなかったから睡眠関連の持ち魔法は豊富だ。
かつては必要に迫られて使っていたが今は贅沢のためだけに睡眠魔法を使える。
ああ我が人生最上の時、そう思った時だ。
ベッド横の棚からブブブブーという異音がした。
スマホに何かが着信した模様だ。
面倒なので寝たまま魔法で表示を確認。
『魔物接近中、充分に注意して下さい。見学又は討伐を手伝っていただける方は次の座標までお願いします』
何だと!
至上の贅沢とどっちを取るかちょっと迷うが結局起きることにする。
「覚醒魔法!」
よし、これで目覚めすっきりだ!
座標を確認すると学校の北東一キロ程度の場所、魔法で移動可能な範囲だ。
ささっと服を着替る。休日だし今日は暖かいから軽装でいい。
長袖ポロシャツにジーンズ姿で玄関で靴を履き呪文を唱える。
「短距離移動魔法!」
到着したのは学校裏の山の小ピーク上。
既に辺りは夜だが私は暗視魔法で観る事が出来る。
開けた処に花梨先輩、他の人は見えない。
そして前方の林には多数の魔と人の気配、戦闘中のようだ。
「大丈夫ですか」
非常時で相手が一人ならこのくらいは私でも話せる。
花梨先輩は頷いた。
「今回の魔物程度なら大丈夫だと思います。学校へ向かわれるとまずいですから、私の魔力で魔物を引きつけて、他の会員に戦って貰っているところです」
花梨先輩の魔力は高い。神無き世界ではあり得ないほどだ。
確かにこの魔力なら魔物を引きつけるには最適だろう。
でもそれは同時に魔物に狙われる事も意味する。
「危ないですよ。誰か直衛をつけないと」
「戦力が勿体ないですから。私もある程度の攻撃魔法は使えますし。ただ確かに危ないのでもう少し上、西側の小ピーク辺りから見学している方が安全です。あれくらいの場所なら私の魔力で魔物から目立たないと思いますから」
言いたい事はわかる。
確かにそれなら危険な事も無く状況を見ていられるだろう。
ただこのまま花梨先輩をここに置いていきたくない。
万が一魔物が前の戦闘区域を抜けたら一人で相手しなければならなくなる。
それはどう考えても危な過ぎる。