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第十四話 合宿二日目 その1 希望と現実

 朝食が終わった後、私はテント内に倒れ込む。

 今度こそ熟睡するぞとの固い意志と希望を抱いて。


 さっきは全く酷い目にあった。

 朝早くから十人くらいの女子相手に魔法講習会なんてやらされたのだ。

 やるからには一人でも多く魔法を覚えて貰う必要がある。

 二度手間三度手間になるのは極力避けたい。

 そんな訳で冷却魔法の初歩から気温調節持続魔法まで一通りを指導してしまった。

 各人のレベルにあわせて三段階に分け、グループ別指導だ。

 初歩は寒冷魔法や氷雪魔法をある程度使えるようになるまで。

 中級は寒冷魔法と温暖魔法で気温の任意調節が出来るまで。

 上級は気温の任意調節を無意識に出来るようになるまで。


 たった一時間の特訓だが、それでも半数はエアコン魔法と呼んでいい程度まで使えるようになった。

 最低でも寒冷魔法や氷雪魔法を初歩段階まで使えるようにはなっている。

 百合亜さんも極悪女もエアコン魔法をマスターした。

 英美里さんは寒冷魔法を使えるところまでだが、元々は光魔法しか使えなかったし上出来だろう。

 この人数相手で一時間という時間の中ではなかなかいい成果ではないだろうか。

 そんな訳で精も根も尽き果てた私はテントに立てこもった訳だ。


 もういい。眠りたい。

 寝袋を広げる。

「そう寝たいとか面倒だとか言っている割には親切ですよね」

 そんな声が突如誰もいない空間から聞こえた。

 まあ声で誰かはわかっている。


「花梨先輩、今日はもう充分お仕事はしたはずです。眠らせて下さい」

「でも再履修希望が出ていますよ。あと魚捕り用雷魔法の指導教習希望も」

「あとは他の人でも出来るでしょう」

「遙さんが一番教え方が上手いと評判がいいですよ」

「おだてても駄目です」

 寝袋の中に潜り込む。


「春から色々練習しても氷雪系は一切使えなかったのに、さっきの一時間で出来るようになったって喜んでいる子もいるくらいです。今夜はどのテントも快適に眠れるでしょうし。いつもはこの段階になるまでぼ合宿フルにかかるのですけれどね」

 おいおい。

「その辺の魔法習得がこの合宿の狙いですか!」

「他にも色々ありますけれどね」

 よく考えてあるなともタチが悪いなとも思う。

 やっぱり花梨先輩はラスボスだ。


「そうでなくても障害除去魔法の使いすぎで頭がふらふらなんです。頼むから少し寝せて下さい」

「でも教えるのが上手なのは本当ですよ。何か経験があるんですか」

「前世で魔法の要素を極限まで分解して調べましたからね。それに前世の事を思いだした後、暇だったので前世での理論がどれくらい現代でも使えるか、一通り試しましたし」

 その辺は魔法技術士としての経験が役に立った。

 前世の記憶を取り戻したのが入院中で動けない状態の時だったというのもある。

 そんな訳で各魔法の要素分けとか現代における注意点とかは一通り掴んだ訳だ。


「わかりました。取り敢えず私はここで失礼しましょう」

 ああ、これでやっと眠れる。

 そう思った時だ。

「ただし私は、ですけれど」

 ちょいまて花梨先輩(ラスボス)

 それはどういう意味だ!


 テントの入口チャックがジジーっと開けられる。

「やはりいたか、遙」

 英美里さんだ。

「出るぞ、皆待っている」

 何ですと!

「朝の講習、食当していた人は受けていないからな。ずるいという声があがったらしい。あと私のようにもう一歩でエアコン魔法になる人もいる。更に寒冷魔法を攻撃可能な氷雪魔法にしたいとか、冷蔵庫魔法や冷凍庫魔法にしたい人もいる」

 おいおま勝手に!


「よいしょ」

 安眠の地である寝袋内から力づくで引っ張り出された!

「さあ行くぞ。まあその気がなくとも引っ張っていくけれどな」

 ずるずる。

 下はマットで踏ん張るには抵抗が足りない。

 そんな訳で私はテントの外へと引きずり出される。

 

 なんでこうなるんだ!!!

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