第八話 魔物討伐戦 その2 討伐戦開始
道は未舗装だがそこそこしっかりした山道。
幅も軽自動車なら通れそうな位はある。
「そろそろ出てくると思います。遠慮せずに攻撃して下さい」
「了解です」
「了解だよ」
遠距離担当の二人が返答。
ほんの一分も歩かないうちに前方から魔物の気配を感じ始めた。
「ちょっとストップ! 一気に攻撃かけるよ」
「こっちも行きます」
二人が魔法を連射し始める。
ポニテが雷系統の電撃弾、百合亜さんが風衝撃弾だ。
ポニテはもちろん百合亜さんも大分連射に慣れてきた感じ。
一秒に二発くらいの早さで安定して撃っている。
「固いのがいます。正面やや右!」
「固いのは先頭の二人に任せて下さい。百合亜さんは数を減らす方に集中願います」
「私の番だな」
壁がすっと槍を前に構える。
「エウリア流魔槍術、破邪槍弾!」
白い光が槍から放たれる。
前方に一瞬見えた魔物があっさり倒れて消えた。
「今のは鬼ですね。そこそこ固くて面倒な敵です」
「了解です」
私も風重衝撃弾を放つ。
前方やや左の林の中にいた影が吹っ飛んだ。
「敵が向かってこなくなるまでここで迎撃します。理澄さん英美里さん、左右の警戒宜しくお願いします。紅莉栖は全体を警戒して下さい」
「了解」
「わかった」
「任せて」
ただ今のところはこっちが一方的に叩いている状態だ。
敵も時々出てくる鬼以上の脅威は無い。
五分くらいそこで迎撃しただろうか。
「そろそろ固い敵ばかりになります。百合亜さんと杏奈さん、魔力はどれ位残っていますか」
「半分程度ですね」
「同じく」
何せこの二人は圧倒的に数を撃っている。
ポニテはともかく百合亜さんもこれだけ出来るというのは大したものだ。
元々素質があったんだろうな。
「こっちに向かってくる敵以外は攻撃を抑えていいでしょう。そろそろ近距離の敵がいなくなってきましたから」
「でもちょいごついのが前から来ているよ」
確かに今までより強い反応を前方から感じる。
「ええ、中鬼ですね。あれは遙さん、試し斬り代わりにどうぞ」
「了解」
そろそろ手応えある敵で自分の力を試してみたいところだった。
一歩前に出て槍を構える。
敵との距離は現在百メートル弱。
大型の中鬼一匹と、今までの鬼と同等サイズが五匹いるようだ。
「何なら小さいのは私がやろうか」
「いや、久しぶりだから技が使えるかどうか試しておきたい」
何せ槍技なんて使ったのは前世の、しかも若い頃以来だ。
まあ絶対大丈夫だという自信はあるけれど。
槍を上段に構える。
全部まとめてという事は距離七十位でいいかな。あまり近いと皆不安だろうし。
左足を軽く前に出して、槍に魔力を注ぐ。
「襲裂斬!」
日本語で技名を言い換え、魔力をのせた槍を振るう。
敵の数が多いので槍は横薙ぎ低め。
魔力が振り切った槍の軌道そのままに前方へ飛ぶ。
中鬼と鬼五匹の動きがその場で止まった。
三秒位した後斜めに崩れるように倒れ、地に吸い込まれるように姿を消す。
「これくらいならまだ奥義を使うまでも無いか」
せいぜいが魔城の小隊長クラスという程度だろう。
全盛期にくらべてまだまだ弱い私でもこれくらいの敵なら余裕がある。
「まだまだ物足りないという感じですね」
花梨先輩にそう言われてしまった。
「いや、ここの敵のレベルがわからない以上、何とも言えないな」
「今回の目的は二つあって、ひとつは洞窟からこの辺に出てきている魔物を一掃すること。もうひとつは敵の強さを知る事です。
今の中鬼は遙さんや絵麻さんなら余裕でしょうけれど、人によっては色々感じる事もあるでしょう。これからの敵の強さを知る事で、どれ位自分達を鍛えなければならないかを実際に感じ取って下さい。
では先に進みましょう」
そう言う事はもっと強い敵がこの後出てくるという事だろうか。
微妙に楽しみになっている自分に少し反省する。
その気分が奢りに繋がり敗北を招くのだ。
まあ花梨先輩引率だから無理は無いだろうとは思う。
でも意識して気を引き締めて行こう。