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第七話 楽園追放 その3 私の失敗

 二日目の昼食と四日目の朝食はD班が当番だ。

 うちは全員寮員だし休日は食堂も休みだから必然的に食事は弁当か自炊になる。

 だから少しくらいは料理が出来るのが普通だ。

 そう思っていたのだが、どうも私の常識は少し間違っていたらしい。

 今回のメニューは生姜焼き、ポテトサラダ、味噌汁、ごはん。

 簡単なメニューだと思うのだが皆さん大変動きが悪い。


「ご飯と生姜焼きは遙と百合亜に任せていいんだよね」

「ああ。炒めて絡めるだけだからな」

 蕎麦つゆとチューブ生姜が材料表に入っているということはそういう事だろう。

 包丁を使うのもタマネギを切るくらいだ。

 なおご飯は既に米を洗って水を入れて電気炊飯器のスイッチを押してある。


 ただ他のセクションがなかなか進んでいない様子。

「ポテトサラダってどうするんだっけ」

「まずはジャガイモの皮むきをしないと」

「味噌汁って豆腐を切るの怖いよね」

「何でも熱を通せば食えるだろ」

 おいおまいら何を手間取っているんだ!


「わかりました。私がポテトサラダをやります。味噌汁を誰かお願いします」

 ツインテは少し出来るらしい。

 でも芋の数を見ると一人ではとても無理な状況だ。

 何せ見た限り戦力はツインテ一人の状態。

「じゃがいもの皮むき、私も手伝った方がいいですよね」

 百合亜が言う通り、いやそれでも足りない。

 そもそも他のみなさんは包丁を持っている姿からして危険だ。


「ええい、壁もとい取手先輩は私と場所交代! あと紅莉栖先輩と百合亜さん以外は包丁戻せ!」

 本格的にやばそうなのでつい指示を出してしまった。

「え、でも私これ、わからないぞ」

「取手先輩は焦げない程度にゆっくり肉を焼いてくれればそれでいいです。焼けた肉はそこのボールに入れて下さい。全部焼き終わったら次の指示をします。あとの皆はキャベツの千切りを交代で。ジャガイモ剥くのはこっちの三人でやりますから!」

「うう、せめてピーラーがあったら」

「今度合宿所担当に言っておいて下さい!」

 何とか戦力になる三人でジャガイモの始末をする。


「すみません、遙さん」

「いえ紅莉栖先輩と百合亜さんがいてくれて助かりました。これじゃ終わらない。あ、杏奈先輩と理澄、そこのでっかい鍋に水入れてコンロの上置いてくれ」

「水の量は?」

「三リットル!」

 味噌汁も同時に作らないとな。


 さて混乱した分遅れた時間を取り戻さないと。

 ジャガイモを剥きながら周りを見る。

 あそうだ。生姜焼きの次の準備をささっとしておこう。

 カップに蕎麦つゆとチューブ生姜を入れてかき混ぜておく。

 生姜焼きのタレの代用品だ。


「紅莉栖先輩と英美里さん、豆腐切るのをお願いします。手の上でなんて切らなくていいです。皿に出して切って下さい。切り方は横方向一回、上から長い辺が4等分になるよう三回、たて一回でいいです。多少崩れてもかまいません。切ったらさっき水をいれた鍋に入れて下さい」

「味噌は入れないでいいのか?」

「味噌は最後です!」


「肉焼き終わったぞ」

「横に生姜焼きのタレを作ってあります。かき混ぜて四分の一を今のフライパンに入れて下さい。沸騰し始めたら肉を四分の一入れて汁気が少なくなるまでからめる!」

「わかった!」


 一方剥き終わったジャガイモは濡らしたキッチンペーパーとタップでくるんで電子レンジへ。

 その間にキュウリとハム、トマトを刻む。

「杏奈先輩、千切りのキャベツを皆さんの皿に盛り付けて下さい」

「遙、肉こんなものでいいか」

「充分です。五人分の皿、千切りキャベツの下あたりに置いて下さい。終わったらフライパンを洗わずまたタレを四分の一入れて同じ事をお願いします!

 あと理澄、豆腐を入れた鍋に乾燥ワカメ入れて、魔法で沸騰まで中を加熱!」

「味噌は何時入れるの?」

「もう一度沸騰させた後です」

 出汁入り味噌でよかった。


 しかし何故私が料理の指示を出しているのだろう。

 何か間違っている気がするのだが仕方無い。

 とにかく今は班に与えられた任務をこなすことが優先だ。


 ◇◇◇


 結果的に昼食はなんとか時間前に用意し終わった。

「これは遙に感謝しないとな。この栄誉を称え、遙をD班食当班長に命ずる」

 鍋やボール等を洗いながら壁がそんな事を言う。


「勘弁して下さい。それに次は朝食ですしそんなに難しい料理は無いですよね」

「甘い、甘いのだ遙君! 私の出来る料理はお湯を注いで三分間待つアレだけだ!」

 そんな事自慢するな!


「でも私も目玉焼きを作ろうとしてスクランブルエッグになる可能性が微レ存」

「微レ存ならまず大丈夫じゃないですか!」

 こんなに女子がいるのに何か間違っている。


「まあそういう訳で明後日の朝もよろしくね、食当班長!」

 こら理澄!

「諦めた方が話が早い上に楽な事もあると思うぞ」

 何を言う英美里さん!

「それでは遙の食当班長就任に賛成の人、挙手!」

 私以外全員の手が上がる。

 ああ私はどこで間違ったのだろう。

 答は出てこない……

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