乾坤一擲4
いつも通り桔梗城で希望者に勉強を教えて居た龍の元に宍戸と里見両名が訪れた。
『…これは何をやってるので御座るか?』
宍戸が疑問に思うのも当然だろう。
『これ?あぁ…皆んなに学問を教えているんだ』
『…民に学問を?』
これもまたそう思うのも分からなくもないと思って居た。
『字は全員書けた方が便利だし、計算も全員出来た方が良いでしょ?…まぁ 最低限これは出来て当たり前って事を教えてるんさ』
元居た世界では小学生で覚える様な内容で出来て当たり前の事だ。
『なるほど、城主自ら教えて居るので御座るか…』
『よし、客が来たから今日はこれでお終い。外で魔術訓練やってるから時間ある人は雫に習ってて』
龍の言葉に授業を受けていた人間達は外へと出ていく。
『お待たせ、会議室へ行こうか』
宍戸と里見の二人を連れ、場内にある会議室へと向かう。
途中、資正を連れ4人で部屋に入った。
『拙者はこの間名乗った通り宍戸城主、宍戸義綱と申す』
『私は隣の小原城主、里見家基と言います』
二人は深々と頭を下げ自己紹介をする。
古臭い話し言葉の宍戸義綱は40代に
普通の言葉遣いの里見家基は60代にそれぞれ見える。
『はい、俺は三國龍、こちらは太田資正、ウチの重臣だ』
『太田資正と申す。宜しく』
『宍戸殿から話が行ってると思いますが、我が小原城も三國家の傘下となりたいのです』
『うん、ありがとう。こちらも勢力拡大はしたいけど無駄に戦をして消耗したくないから助かるよ』
対益子戦、対笠間戦と三國軍としては兵力の損害はほぼないが、相手となった側には多少損害は出る。
龍としては丸ごと吸収したいので、今回の様な申し出は非常に助かる。
『先日、申していた佐竹には攻められない密約と言うのは具体的にどの様な密約か聞かせて頂いても宜しいか?』
『あぁ…どう言えば良いのか分からんけど、佐竹義重って人間は自分で坂東武者だか坂東太郎だかって言ってたんだだわ』
『ふむ…』
『俺はそれ良く分からんけど義重曰く、自分が強いと認めた者以外の下には付きたくない。強いと認めた者の為には命すら云々って言っててさ』
『…確かにそうで御座るな』
『で、その自分より強い者ってのが俺らしいんだわ』
『なんと!?義重殿と言えば鬼と呼ばわれ恐れられてる方では御座らぬか。その男に自分より強いと…』
宍戸義綱は驚き、里見家基は言葉を無くしている。
『って事で、佐竹家を配下としても申し分ない程にウチの勢力が大きくなったら、その時に佐竹が傘下に加わるんだとさ。だからそれまでは不戦の約定を結んでる様な物かな?』
『そ、それでは佐竹家は味方なのですか』
『うーん…味方かどうかは知らんけど、俺としては歳も近いし友達って感じかな?あいつと居ると気が楽だよ…人の話しは聞かない奴だけどね』
龍は義重の事を思い出し苦笑している。
『佐竹殿を友と…』
関東の豪族の諸将は皆 ここに居る宍戸や里見と同じく
どの勢力に付くかで頭を悩ませて居るだろう。
独立勢力としてやって行くには限界がある
かと言って大きな勢力の何処に与すれば自分の家に未来があるのか。
関東の大きな勢力で言えば宇都宮、古河公方足利、那須、佐竹、結城、小田、北条、武田、千葉…
まだまだ関東は群雄割拠だ。
そしてこの中に三國家が急速に頭角を現し始めた。
勢力としてはまだまだだが、下野と常陸を跨ぎ支配地を広げている。
『三國殿は何処まで支配地を広げるつもりですか?下野?常陸?』
なんとなくワクワクしながら里見家基は龍に尋ねる。
『ん、何処まで?何処までって…全部だね』
『下野と常陸全部ですか…それは凄い』
『いやいや、日本全部だよ。変な爺さんに頼まれたから』
『日本全部!?』
宍戸と里見はもちろんだが、資正も流石に驚いていた。
そう言えば異世界から来たって事を資正には言った覚えがないなと考えていた。
『気持ちはね、ただどこまで支配地を広げたら天下統一と言えるのか分からんからさ』
龍はハッハッハと笑っている。
(天下統一…)
宍戸、里見、資正の3人は天下統一と軽く言ってのける龍に驚いていた。
しかし龍なら…或いは…とも思える。
『ま、何処まで出来るか分からんけど天下統一ってのは最終目標さ、一応やるだけはやるよ』
この日は弥五郎も交え、龍の素性など
元居た世界やこれからの目標の事について色々と話し合った。




