奇々怪々2
『私は、今は無くなってしまったが信濃の上田に居た真田信繁と申します。城主、佐竹義重殿にお目通りを願いたい』
『ハッ、お待ちを』
太田城の門番が中へ入り伝令を告げに行く。
『どんな人でしょうね?楽しみだ』
『どんな人だろうね』
雫と才蔵の姉弟は相変わらず静かだ。
太田城までの道中も ほとんど口を開いて居ない。
幸村の護衛役なのでそれが当然なのだが。
『どうぞ中へ』
門番に連れられ城内へと入り
三の丸の中の一つの建物へと案内される。
『こちらで しばしお待ちを』
城兵はそう言うと外へと出て行った。
ここは簡素な応接室と言った建物かも知れない。
数分後、義重が応接室に現れた。
『おぉ!真田の次男殿か!よく来たな!』
『これは義重殿、はじめまして 拙者、真田昌幸が次男で信繁と申します』
『おう、龍から話しは聞いてるぞ、よく生きてたな!』
『ハハハ、まだ死ぬ時では無かったようです』
『うんうん、ところで信繁殿は今何処に身を寄せてるんだ?』
『いえまだ決めてないです、この機に乗じて少し放浪の旅をしていた所です』
『おぉ?そうなのか?てっきり龍の処に居るのかと思ったぞ』
(…龍の処?)
『龍さんは生きてるんですか?』
幸村は義重に前のめりになる。
『ん?知ってて此処に来たんじゃないのかよ』
『いえ全く知らないです。義重殿は龍さんが何処に居るか知っているのですか?』
『そりゃぁ知ってるさ、俺が城をやったんだしな』
『…え?と言う事は龍さんは佐竹家に居るって事ですか!』
『いやいや違うよ、あいつは独立勢力だ。今は三國家としての龍さ』
義重の言葉に幸村だけではなく雫と佐助も目を丸くしていた。
才蔵だけは龍に会った事がないので無表情のままでいる。
『龍さんはどこの城に居るのですか!?』
『おぉ? あいつは、此処から西に茂木と言う土地があるんだが、そこの桔梗城に居るぞ』
『ありがとうございます!行ってみます』
幸村はそう言うと、佐助、雫、才蔵も一緒に立ち上がり
『失礼します』と応接室から出て行った。
『嵐の様な奴らだなぁ…』
義重は呆然と幸村達の背中を見て呟いた。




