奇々怪々
龍が兵の訓練と学校の授業に明け暮れている頃
幸村と佐助、雫、才蔵の四人は佐竹家の太田城へと箕輪の町から向かい、移動中であった。
龍が桔梗城に居ると言うことは全く知らない。
越後の上杉家に落ち延びようとも考えたが
その前に対足利連合戦で戦わずに引いてくれた佐竹義重に会ってみようと思い太田城へと向かっている。
『才蔵、常陸には行った事あるのか?』
佐助は才蔵と呼んだ男に話し掛ける。
『…ある』
どこか雫に似た静かさがあるが、雫の弟らしい。
才蔵と佐助は同じ年頃の様に感じる。
『信繁様、佐竹の殿様に会って何をするのですか?』
『何もしないよ、ただどういう人なのかなって興味が湧いてね』
勿論、幸村が想像する以上に佐竹義重が凄い男なら仕えると言う選択肢も出てくるだろう。
しかし義重の事は、龍と会って兵を引いた
と言う事ぐらいしか聞いていない。
『そういや龍さんは何処に居るんでしょーねー?意外と佐竹家に居たりして?』
あの人が死ぬ訳がないと思うし
死んでいるかも、とも思いたくない。
『どうだろうね…龍さんなら、何処の勢力からも歓迎されるだろうね』
『…私もそう思います。龍様なら欲しければ天下でも…』
雫はそう言いかけたが、仕えている幸村の手前、続きを言うのを止めた。
主君、幸村の行動次第では龍が敵になる事もありえる。
『いや本当に龍さんなら天下でも狙えるかもね』
幸村は雫の気遣いに対しそんな事は全く気にしないよと笑う。
自分が天下を取るのではない
天下を取るべき男に仕えたい
と考えている。
『…異世界から来た人間でも征夷大将軍になれるのですか?』
雫の何気ない質問に一同は顔を見合わせた。
征夷大将軍には源氏の家系しかなれないのである。
『どうなんだろ…なれないとしても武で日の本を統一したら何かしらの役職には就ける…気がする』
その何かしらが 一体どんな役職なのかは幸村には分からない。
関白なのか摂政なのか…
確かに位階としての順位はあるのだが、
実質の権力で考えると、どの役職が偉いのかは分からない。
『まぁ その時になれば分かりますよね』
佐助は笑って言う。




