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夢幻の戦国記  作者: やっさん
第三章 雲龍風虎
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一目瞭然

夏、学校と兵士の訓練は1日置きに交互に行っていた。


学校と言う名前を付けては居るが年齢制限はない。

識字率を上げるのと龍が教えれる範囲の現代では当たり前の簡単な算数と魔術スキルの基礎を教えている。



付近の村々から手が空いている者に自由参加で勉強を教えて居たのだが

今日はいつもと違う人間が二人居た。



一人はまだ15歳の少年だが名を荒川弥五郎と言うそうだ。元々下野(栃木)の豪族だったが古河足利連合のいざこざで土地を失ったらしく桔梗城の支配地の村に移住して来たらしい。



一人は太田資正と言う名の男で年齢は30代半ばだろうか龍と同世代に見える。

元々扇谷上杉家に仕えて居たが北条家に攻め落とされ、今は打倒北条に向け放浪の旅をしていたらしい。


真田に変わった兵器を持ち変わった戦い方をする人間が居たが

その男が今度は桔梗城の城主になり、村人に

学問を教えて居ると噂を聞き、桔梗城に寄ってみたらしい。




弥五郎は元々頭が良いのだろう、教えた事をすぐに理解していく。

これは暫く弥五郎に物を教えるのが楽しみになりそうだ。



資正は村人達に教えてる龍を見ていた。

元々武将なので、この時代の文字や計算法など最低限の知識はある。

知識はあるが、それを村人にわざわざ教えて居る龍という男に興味があるのだ。


『城主よ、貴方は何故こんな事に時間を使うのだ?』



『ん、こんな事?あぁ勉強の事?』



『うむ。村人が勉学など出来ても意味がないだろう』

資正はこの時代のごく普通の感覚の質問をしたつもりだ。

村人に対し軽蔑した感情を持っている訳ではない。



『んー…?意味はあると思うけどね、この世は計算式で成り立ってる程に何にでも計算は使えるし、文字だって当たり前に使えれば便利だし、魔術だってこれ以上便利な物はないんでない?』

龍としては、万人が最低限の知識を持っているのが当たり前だと思っている。



『では算術は村人がどんな時に使うのだ?』



『へ?年貢の計算とか、面積の計算とか、時間の計算とか、加減乗除が出来れば便利でない?農業だけでなく普通に生きてれば何にでも使えるし』



『ふむ…では農民が文字を何に使うのだ?』



『文字?書類書くのにも使えるし、そもそも文字を使えないと計算するのも大変だし…と言うか これも何にでも使えるし必要でない?』



『ふむ…では魔術は何に使うのだ?』

資正の質問の数々に龍は自分が子供の頃を思い出した。

数学なんか社会で使わねーよ

英語なんか社会で使わねーよ…

苦手な科目を使わないと思い込んで居たが

実際、社会に出ると複雑な計算式も使うし

英語なんかも頻繁に耳にした。

そこで初めて 真面目に勉強しておけば良かったと後悔するのだ。



『ふふ…次は魔術?そうだねぇ…資正さんは武術は得意かな?』



『うむ。戦国武将たるもの武術は当然だ』

今まで何度も戦場に出て生き残って来たのだ

当然、自信はある。



龍は生徒に向き

『よし、それなら昼から魔術スキルの勉強をしよう。資正さんと実践練習を行って魔術スキルの凄さを見せるよ』



資正も含め、学びに来ている村人も

まだ魔術スキルが便利だと言うのは分かったが凄さは体感しては居なかった。

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