有為転変
龍は一月程の時間を掛け甲斐、相模、武蔵、下総、常陸と移動し町や城などを見て回った。
ー あれが太田城か…
真田氏が滅亡し、龍の身体に何の異変も起きない所を見ると
山本勘助が言っていたゲームオーバーと言う物は無かった様にみえる。
おそらく 異世界転移者が複数人居るが所属勢力が滅亡したのは龍が初めてなのかも知れない。
それで山本勘助は勘違いと思い込みをして居たのだろう。
太田城の門番に挨拶し、義重殿に三國龍が来たと伝えて貰う。
『よぅ!お前 生きてたのかぁ!』
義重は相変わらず元気さだった。
『そう簡単には死なないさ』
『おぅ!まぁ 中に入れよ』
義重に連れられ応接間の様な小部屋に座る。
目の前には酒と肴が置かれていた。
『おう!んじゃ 再会に乾杯だ』
『ふふ…そうだな』
昼間から酒を飲むのもたまには良いだろう。
出された酒は清酒だ、さすが大名だ。
『こないだは すまなかったな、足利とはその後どうなった?』
前回 義重と会った時は足利連合軍から抜けて貰った。
『おう、今はウチとやり合ってる場合じゃないんだろーなー…あいつら北条と戦ってるぞ』
『…と言う事は扇谷上杉家は無くなったのか?』
『いや、残っては居るぜ。だけど城一つ程度の物だな』
義重が言うには、武田軍が山内上杉家を滅ぼした後
足利軍は南下し扇谷上杉家の領地を北条と挟み撃ちの格好で攻め取ったらしい。
しかし、北条と密約がある訳でもなく
今度はそのまま北条と争っていると。
『しっかし、お前とあの武器があって何で真田は負けたんだ?』
確かに外部からはそう見えるのかも知れない。
『仕方がねぇさ…武田が強すぎた』
単純な兵力差、将の数、色々とある。
『そうか、武田は強ぇのか…まぁ とりあえず、君主になって俺を配下にする気になったんだろ?武田にやり返そうぜ』
『いや、遊びに来ただけだって。義重の城と町を見たかったしな』
『そうか まぁまだ自分の土地もないのに君主もクソもねぇよな…一つ城をやるから そこから勢力を広げろよ』
(こいつは また何を突然言いだすんだ…)
龍は酒の力もあってか笑って居た。




