一騎当千4
飯富虎昌と山県昌景の兄弟が倒されたとの報を聞いた山本勘助は焦っていた。
『アイツはどんなスキルを持って居るんだ…どんなスキルがあれば、あの二人に勝てるんだ…』
勘助には分からなかった。
元々あるスキルを使う事しか考えて居ない。
誰も特に気に留めて居ない、魔術スキルをただただ練習と開発に時間を掛けただけなのだ。
武田対真田の対決は武田の圧勝に終わるだろう。
しかし山本勘助と三國龍の戦いは龍の方に分がある。
それが気に入らない。勘助の方が数年早くこの世界に来ているのに負けるのが気に入らない。
『チッ…朝一でゲームオーバーにしてやるわ、それまで精々 悪あがきしとけ…』
虎昌、昌景兄弟を気絶させた後も
移動しては魔術砲を撃ち 被害としては微々たるものだが
拾って貰った恩を返すべく最後の抵抗を龍はしていた。
ーーそして朝が来た。
朝日が昇り 辺りが明るくなり始めると
武田軍はいそいそと最後の攻めの準備を始める。
『ここまで来たら作戦などない、破壊し尽くせ』
総大将である武田信玄の号令の下、武田軍は上田城へも総攻撃を開始する。
武田軍の兵士が雲霞の如く攻め寄せる。
こうなれば 龍が異世界人だとか
魔術スキルの使い方が凄いとか
そんなのは些細な事だ。
龍は正門の前に移動し出来る限り敵兵を倒して居たが人数には勝てない。
やがて横をすり抜けた敵兵が門を、次々と突破し本丸へと向かって行く。
(分かっては居たけどダメだったか…)
そう龍が呟いた時、本丸から激しい爆発音が鳴り響き、爆風が龍の所まで吹いた。
『プライドの為だけで死ぬなよ…ちっきしょー…』
その爆発を見届け、龍は何処かへと走り去った。
誰も居ない何処かへと。




