自己矛盾2
伝令なのか使者なのか分からないが
武田の騎馬兵が数人 上田城へ駆けて行く。
先に出した手紙に対する返事を聞きに上田城へ行ったのだろう。
もちろん昌幸からは予想通りの返事だろうが。
その騎馬兵が 城から武田の本軍に合流する為に戻って行く。
『いよいよ武田の本軍がお出ましになられるのかな?』
龍は龍撃隊の中でも一番城に近い所に潜んで居た。
内部まで敵が来ると龍が魔術砲を放ち
それを合図に一斉に龍撃隊から魔術砲が連鎖的に飛ぶ手筈になっている。
『…来ました』
雫が小声で武田軍の方向に指を指す。
『凄いな…』
武田軍の騎馬兵が赤備えで統一された部隊を先頭に進軍して来る。
騎兵だけで2万の兵数だそうだ。
古河足利軍の数十倍は圧迫感がある様に感じる。
『さて…行くよ、開戦だ』
龍、雫、伍長と村人4人。計7人が同時に魔術砲を放つ。
威嚇射撃ではなくスピード重視の直線的に飛んでいく隠密射撃だ。
武田の先鋒に当たり、轟音が鳴り響くと
他の龍撃隊からも次々と魔術砲が武田の騎馬隊に向かって飛んで行く。
『よし…移動だ』
それを見届け、予め決めておいた龍撃隊の集合場所へと移動する。
(簡単に勝てると思うなよ このヤロー…)
集合場所へ辿り着き、全員の無事を確認する。
この場所から再度 敵部隊の姿を確認したら魔術砲を撃つ。
龍撃隊が潜んでるのは独鈷山と呼ばれる山だ。
上田城から少し南にある ちょっとした山岳地で
この山伝いに道がある為ここに潜んでいる。
『よし…来た。隠密射撃イチ』
龍が右手を上げ左手で敵の騎馬隊を指差す
右手を振り下ろすと龍撃隊から直線的に飛ぶ魔術砲が放たれる。
鉄砲程の速度で飛んで行く矢を肉眼で確認する事は出来ない。
またも轟音が山に谺する。
『よし 次の地点へ移動するよ』
龍撃隊は二手に別れ さらに移動を開始し始める。
道が二本あり、そのどちらにも攻撃出来る様にする為だ。
移動した場所で山裾の道を見ていると
どうも敵兵が少ない気がした。
どうやらもう一本の道へ敵兵の殆どが行ったらしい。
『龍様…オカシイです、上田城の方に火が見えます…』
『え?…何でよ!?』
敵兵は確かにこちらを通って居た筈だが
しかし上田城が攻撃されてる気がする。
龍は 何がなんだか分からずに居た。




