気息奄々2
数週間ぶりに村に帰宅した。
龍撃隊の家族達が隊員を出迎えて無事を喜んでいる。
多少の怪我人は居たが ほぼ無傷で帰還したと言えるだろう。
龍としても龍撃隊としても初陣だったが
魔術砲は実戦で十分使えた。
威力もそうだが 精神的にもダメージを大きく与えれたようだ。
あとは魔術砲の威力が噂になって世間に浸透してくれたら
龍撃隊が戦場に出るだけで敵が多少でも怯んでくれるはずだ。
『さーて…今日はボケーっと過ごすかなぁ…』
平井金山城に入ってからは小競り合いは多少あるものの戦闘自体はそうなかった。
しかし付近を警戒したりと気を抜く訳にも行かず 精神的には疲弊していた。
今日は久々に気を抜いて過ごせる。
『ご飯の支度をします…』
『え? あぁ…悪いけど頼むよ』
雫が釜で米を炊いてるのを薄目で見ながら
何時の間にか龍は眠りについていた。
村に帰宅してから数日後
上田城から呼び出しがかかったので
雫と二人 城に向かう。
『おう 来たな』
昌幸が広間に居た。
『今日は何の用ですか?』
『おう 山内上杉家からお前への褒美が届いたから 渡してやろうと思ってな』
そう言うと昌幸は木箱を龍に渡す。
(ん?)と思い中を開けると
金50貫と憲政からの感謝状?だった。
残念ながら達筆過ぎて龍には読めなかったが
昌幸曰く褒めちぎった内容らしい。
『こんなにですか?』
『あぁ…お前はモテるなぁ』
(モテる?誰から?)と思ったが
男からと言う事なのだろうなと解釈した。
確かに幸村 昌幸 頼綱 業正…憲政などと
出会う人達には良くして貰っている。
『有難うございます』
『うん、で、だ。残念な話しもある』
『残念な話し?』
『あぁ…平井城が落ち山内上杉家が滅亡した。上杉憲政殿は自害したそうだ』
『…はい?』
『…まぁ そういう反応になるよな』
昌幸は苦笑しつつ言葉を続ける
『上杉家を滅亡させたのは武田信玄だ』
『へ?』
内容を書くとこうだ。
初めに箕輪城の長野家から援軍依頼が来た時
真田家は参戦したが武田家は援軍を断っていた。
実はその少し前から武田家と古河足利家の間に密約があったらしい。
真田家が予想外に足利連合軍を押し返した所まで
真田家とも同盟があるので武田家は静観。
足利家から武田家に上野(山内上杉の領土)を半々ずつに治めよう、とでも密約を結んだのだろう。
そして足利から上杉家への停戦依頼。
真田家が帰還したタイミングで武田信玄が出陣し山内上杉家を侵攻。
平井城より西は武田家、東は足利家の領地と言う事になったようだ。
『…と俺は予想している』
昌幸は悔しそうに言う。
『…なんじゃそら?』
龍は心の内から燃え上がる怒りを感じていた。
気分悪いともムカムカするとも言えない。
ただただ怒りだ。
確かに乱世の倣いと言われればそれまでだが
こんな汚いやり方があるのかと。
『武田家とは同盟関係は切れる訳ではないんですよね?』
『うむ、武田と同盟が切れれば真田家に真っ先に潰される事になるだろうな』
(ふぅ…)
龍は目を瞑り大きく溜息を吐いた。
『まだまだ魔術 武器 兵器など開発します。負ける訳には行かないので』
(では)と龍は広間を出て村へと向かった。




