気息奄々
『足利軍はいつまで篭る気で居るのかね?』
高山城のある小山を見ながら雫に話しかける。
『さぁ…私には分かりません』
古河足利軍と睨み合い四日目の朝
山内上杉方の平井城に足利からの使者がやって来た。
『そうか…1年間の停戦を…』
山内上杉家の当主 上杉憲政はそう呟き考え込む。
条件は停戦以外に提示されなかったが
平井城より東側の領地を足利家に取られて居る。
このまま停戦するのは悔しいが反撃出来る戦力が現状ないと言うのもまた事実だ。
『分かった。足利家との停戦に応じる』
苦渋の選択だと言うのが表情から読み取れる。
『おぉ それは目出度い。早速 我が主君 足利晴氏に報告致します』
足利からの使者は そう告げると早々に平井城を出て行く、停戦交渉の成功を報告する為だ。
足利家と1年間の停戦ー。
その報告はすぐに平井金山城の面々にも伝えられた。
『条件なしの停戦?まぁ身動き取れないし冬だし しゃーないのかな?』
『…そうですね』
『とりあえず これで村に帰れる…いやぁ疲れた』
真田家としては目標の箕輪城 平井城を防衛出来たので勝ったと言えなくもないが
戦に勝った訳では決してない
全体的には上杉家の敗北だ。
停戦じたいは嬉しいと龍は思っているが
その喜びを外に出すのも微妙な空気がある。
『三國様 我が殿 上杉憲政が平井城にお呼びです』
平井城からの伝令が来た
龍に話しがあるらしい。
『上杉の当主様が? 分かりました すぐ向かいます』
龍は支度をし 雫と二人 平井城へと向かった。
『失礼します』
平井城の広間に案内され 中に入ると
上杉憲政と思わしき人物に挨拶をし
その前に座った。
『初めまして三國龍と申します』
『うん。私が上杉家当主 憲政だ』
年齢は20代だろうか まだ若い。
しかし精神的な疲れが表情に現れてるのか少し老けて見える。
『大活躍をしてくれた龍撃隊の方と少し話しをしてみたくてね』
『大活躍なんてしてないですよ』
龍は本心からそう思っている。
『凄まじい兵器を使い、箕輪城と平井城を守ってくれた。さらに佐竹軍1万を交渉で撤退させたとも聞く』
『いやいや たまたまですよ』
本当に偶々だ 特に佐竹の撤退がー。
『ふむ…私は関東管領なのだが 正直 私には荷が重い。…連敗続きなのだ。』
『まだまだこれからですよ』
多少の失敗なんか若い内はいくらでも巻き返せると思っている。
『そうだと良いが…ところで其方 上杉家に仕える気はないか?』
『いえいえ…俺はただの村長です。暫くは今の忙しさに満足してるので それについてはお断り致します』
『うむ。駄目だろうなとは思ったが言ってみただけだ…其方なら関東管領を任せられると思っておる。なんとなく漠然と…だが』
ー 何故 上杉家の家臣から関東管領に話しが飛ぶんだよ!
と思ったが それはツッコむ訳には行くまい
『ただの小さな村の村長が関東管領という重責を引き継げられないですよ』
笑いながら龍は言うが
『そう だから私の家臣にしてから一門衆にしようかと思っておったのだ』
憲政も笑いながら 即 言葉を返す。
『其方には 何処か不思議な気が漂っておる。おそらく村長程度ではなく もっと上の役職に就くだろう』
ー この世界の人は 武人がどうとか 不思議な気だとか…何か見えるのが普通なのか?
『いえいえ 俺は村長で満足してますよ』
『そう 其方にその野心がないから信用出来るのだよ』
憲政は20代に見えるが話す内容は
どうも年寄りくさい
中に誰か別の年寄りが入ってるのだろうか?
『ははは、有難うございます。では平井金山城に戻り国に帰りますね』
そう言って席を立とうとすると
憲政がスッと龍に近付く
『今回は本当に助かった。その雷神の如き働きぶりをまた宜しく頼む』
『えぇ いつでも呼ばれりゃすぐに来ますよ』
笑顔でそういい 龍は龍撃隊や真田軍の居る平井金山城へ戻った。




