右往左往2
『あ、あの爆発する矢は一体何なのだ!』
宇都宮広綱は焦っていた。
真田の援軍は正面から当たって来ず 時折 矢の射撃に紛れて爆発する矢も飛んでくる。
真田の陣所に攻め込めば 誰も居らず
伏兵に射撃され
兵を引けば引いた先で射撃され
深い底無し沼の中でもがいてる様な錯覚を起こしていた。
『で、伝令ー!』
『次は何じゃ!』
『箕輪城西包囲部隊 壊滅!』
『何じゃと!?』
昨晩から奇襲を受け続け たまに来る伝令は壊滅の報せである。
まだ若い宇都宮の大将は イライラのピークを過ぎ
もはやどうして良いか全く分からない状態に陥り始めた。
『高定!どうすれば良いのじゃ!』
広綱は信頼する家臣の芳賀高定に問い掛ける。
『むぅ…真田の戦法に合わせるより 兵数は此方の方が多い、ココは力攻めで城を落としてしまっては どうでしょう?』
高定と呼ばれた男は自信なさ気に答えた。
真田の噂は多少聞いていたが
正直 予想以上の戦の上手さで参っているのだ。
それに あの爆発する矢が堪らない。
あの様な新兵器を使われると どうにも対処法が見当たらないのだ。
奇襲を掛け続ける真田の兵を捕まえ
聞いてみると『龍撃隊』と言う部隊が
あの爆発する矢を飛ばして居るらしい事は分かった。
しかし それだけなのだ。
あの兵器の名前も製法も使用法も何も分からなかった。
『よ、よし 今日はもう日が暮れる。明日の朝 一気に箕輪城を落とす!』
『はっ!』
『奇襲の警戒だけは万全にしておけ!』
『はっ!』
『おぉ 奴ら陣所に下がり固まりおったわ』
その様子を昌幸は遠くから鋭い視線で見ていた。
『明日にでも城に特攻しそうですな』
信幸も隣でじっと見ている。
『ふ…狙い通りよ、今日も寝かすなよ?決戦は明日の朝だ』
『はっ!』




