群雄割拠
本格的な冬の季節に入り始めた11月
朝起きると薄っすらと雪が積もっていた。
『寒いなと思ったけど もう雪かぁ…』
元の世界での長野の気温や例年の初冠雪の時期などは分からないが
おそらく この世界は気温が低いのだろう。
ふと村の入口の方を見ると 騎馬が こちらに向かって来ているのが見えた。
ー ん? 上田城から急ぎの用事?
龍の目の前に騎兵が止まると
『至急 兵を集めて上田に登城する様にと昌幸様からの伝令です!』
『戦!? いや 分かりました 急いで向かいます』
『では 御免!』
そう言うと騎兵は走り去って行った
他の城にでも向かうのだろう。
『雫!』
『すぐに兵を集めます…』
『うん ヨロシク!』
この世界に来てから村の部隊を訓練したり 自らも戦う為に魔術の訓練 研究などはしていた。
しかし こうも唐突に初の戦の機会が来るとは思わなかった。
正直…(怖い)と思っている。
死んだ後 また転生するとも しないとも言えないのだ。
それに村人も死なせたくない。
村に来て数ヶ月だが 知り合いや仲間が死ぬのは嫌だ。
しかし 物事を嫌だ怖いと思ってると萎縮し本来の能力が半減してしまう。
初めての事は分からないが
当たって(砕けない様に)砕けろの精神で乗り切るしかない。
村の蔵に向かい 集まって来た50人隊の村人に動きやすい簡素な防具を身に纏わせ 神仙丸を1人5個ずつ持たせる。
村の50人隊は 龍撃隊と名付けた。
案を出したのは志郎だ。
自分の名前を付けるのには抵抗があったが
押し切られてしまった。
『龍撃隊 揃ったか!?』
龍はそう叫ぶ。
『1-1、1-2行けます!』
『2-1、2-2行けます!』
〜〜〜
『5-1、5-2行けます!』
と各 什長から返って来た。
『よし!それでは城に向かう!移動開始!』
龍撃隊は縦一列になり移動を開始し始めると
村人は口々に(頑張れ!)と声援を送っていた。
農民兵は戦で活躍し金を稼ぐと言うのは
戦国時代では普通の事なのだろう。
生きて返って、とか 死なないで、とか
悲しい別れの声援ではなくて
龍の気が少し楽になる。
(モチロン 誰も死なせないけどね)
と龍は自分に強く言い聞かせて 上田城へと向かった。




