春風駘蕩
秋…収穫の季節がやって来た。
この季節だけは 村の学校や部隊の訓練は休みだ。
村の大人は勿論 子供まで家の収穫を手伝うのだ。
(忙しくても 勉強や魔術の修練は夜寝る前にやってね)と村人全員に言ってある。
出来れば魔術の修練は精神力を使い切る寸前までやって欲しい所だ。
村人が 米の収穫などに追われるなか
龍と雫は甜菜の畑の前に居た。
『半分だけ砂糖にしようと思うんだ』
『…半分ですか?』
甜菜は野菜のカブの様な形の根の部分を砂糖に使うのだが
種子を作るには その根の部分を
来年 もう一度植えると ようやく種を採れる様になる
二年生の植物と遠い記憶で習った気がした。
『そうですか…では 半分収穫して 残りの半分は植えたままですか?』
『それよね…俺も自分で甜菜を育てた事ないから 何にしろ実験あるのみなのさ』
確か 母根と呼ばれる 収穫した根を越冬させ もう一度植える為に母根を凍らせない様に保存すると聞いた気がした。
おそらく この上室賀村にも冬が来て
雪が降れば母根は凍るだろう。
『穴を深く掘って そこに集めて保存してみようかな?』
『穴を…?』
『んー…雪が降っても 地面の下は凍らないからね』
それが正解かどうかは分からない
色々試して失敗して覚えなければならないだろう。
失敗したとしとも また種を買えばいい。
龍は割と気楽に考えている。
ネガティブに悩みすぎても良い事はない
と言うのが龍の生き方だ。
『まず根は全部掘り出す。
で半分は砂糖に 半分は処理して土の中に保存してみようか』
そうして二人で甜菜の根を収穫し始めた。
たまに村人の中の手が空いた人が手伝ってくれたが
全部 掘り返すまでには数日かかった。
そして 土術で土に大きな穴を開け
その中に葉や茎など不要な部分を切った根だけの部分を入れ
また土術で土をかける。
これは魔術の修練にも丁度良い…いや
少しキツすぎる位に疲れた。
やはり土術は疲れる。
それが合わないからなのか
それとも単に精神力の消費が激しいのか
それは分からない。
『よし…んじゃ 残りの根から砂糖を作ってみようか』
『はい…』
返事はしたものの どうみてもカブか大根にしか見えない根から どうやれば甘い砂糖と言う物が作れるのか
雫は(魔術か何かを使うのだろうか…?)と
思っていた。




