徒手空拳
3人は山を降ると 小さな川を見つけたので
そこで小休憩する事にした。
『ふぅ… 大丈夫かい?』
色々と聞きたい事はあるが
まずは 一呼吸置いて親子を眺めてみた。
40代位の母親と10代後半であろう娘
二人とも背は低い 150cm位だろうか
古そうな まさに戦国時代の農民風な着物を着ている。
『先ほどは ありがとうございました』
さっきまで青白い顔をしていたが
時間と共に生気が戻ってきている母親がお礼を言った。
『いやいや たまたま上手く行って良かったですよ あの山賊っぽい奴らは一体? それより警察に連絡した方が良いでしょうねぇ 携帯電話持ってます?』
…男は 気が付いた時 山に居た
何故 そんな所に居たのかは全く分からない
しかし 山に居た
目が覚めて 時間を確認しようとスマホを探したが
落としたのか 普段ポケットに入れてる場所には見当たらなかった。
『け けいたいで…?え?なんですかそれは?』
この人は何を言ってるんだと娘は心底不思議そうな顔をしている。
『携帯電話…もしかしてこの辺って田舎すぎて電波がないから普及してないって事?』
『携帯?電波? ちょっとそれはなんの事か分からないです』
やはり娘は不思議そうな顔をしている。
『あの…それより助けてくれた貴方様の名前を聞いてもよろしいですか?』
『あぁ…そういやまだでしたっけか 俺の名前は龍
三國 龍です』
『私は フミ こっちは娘の泉です』
『泉です』
『フミさんと泉さんね ヨロシク
トコロで さっきの山賊の奴らが使ってた火の玉 あれは知ってます?魔術とかっての あとココってドコか分かります?』
龍は色々と分からない事 聞きたい事がありすぎて
質問した本人ですら質問した内容がオカシイんじゃないかと思って苦笑いして居る。
『魔術…ですか?あの山賊が使ったのは鬼小島流と言っていたので おそらく山賊は小島様の家臣だったのではないかと』
(鬼小島… 家臣…? おいおい戦国時代じゃないんだからよ…いや待てよ これアレか…昨日寝る前に読んでた小説のジャンルの転生とか転移とかのアレ?…嘘だろ?)
『あー…ちなみに今日って何月何に…いや 何年の何月何日か分かります?』
『え? 確か…弘治元年5月8日のはずです』
(それ…いつやねん…)
龍は心の中でツッコミ
どうやら転移と予想した通りの展開になりつつある事に苦笑いせずにはいられなかった。