軽挙妄動2
声を頼りに叫び声が聞こえた近くまで辿り着き
木の陰から その叫び声の主達を覗いてみると
なにやら 槍の様な物や刀の様な物を持って居る5人の集団と怯えて竦んでいる親子が目に入った。
槍や刀を持ってる物騒な光景もそうだが
目に入った人間達の服装にも男は驚いた
ーコイツら江戸時代…いや戦国時代の格好かよ…
まぁ 服装は良いにして あの武器が本物かどうか知らんけど 俺が丸腰で出て行って何とか出来るかな…
『おら!金と魔石を早く出しやがれ!殺すぞ!』
『まま 待って下さい…』
ー魔石?なんじゃそれ?…とりあえず 落ち着いても居られる状況じゃないし そこら辺に落ちてる石と木の枝で何とかしてみるか…
そう考えると 太めの木の枝と小石を数個拾い
男は その場へ出てみる事にした。
ガサガサ…
『!? なんだ手前ぇ!』
『やぁ こんにち…いや こんばんわ
ところで 何これ?こんな山でカツアゲかい?』
『カツ…あぁ!? なに意味不明な言葉を使ってやがる!手前ぇは誰だ?一緒に殺されてぇのか!?』
ーあれ?カツアゲって言葉 知らんのか?カツアゲって方言だっけ?
男はココって自分が居た地方と別の地方なのか?と腑に落ちない顔をした
『ところで そこの君達は大丈夫?どういう状況なのこれ?』
そう親子風の二人に声を掛けると
山賊風のチンピラの一人が叫んだ
『コイツからやっちまえ!』
と同時に 山賊が刀で斬りかかってきた。
その刀を間一髪で躱し
木の枝を顔面に叩き込む
すぐに残りの山賊の方に顔を向けると さらに2人が斬りかかって来てるのが見える
その1人に すかさず小石を投げると丁度 目に当たった様で 躓いて転倒し 落ちてる石に頭をぶつけ動かなくなった
さらに向かってくる残りの1人に木の枝を全力で叩きつけ
倒れながら離した刀を すぐさま奪った。
残りは 槍を持った親玉風の奴だけだ。
『おい どうするよ まだやるか?槍相手でも俺の無双流武闘術は負けねーぞ?』
無双流武闘術と言ってはいるが
男は若い頃から ありもしない武闘術の名を使っていた
使うのが好きだった
そう 男なら誰しもが 漫画やアニメの影響を受けて
厨二秒的な技を作って妄想するものなのだ
『チッ…聞いた事ない武術だな それならコッチは鬼小島流魔術で相手をしてやるよ』
ーは?良い歳こいた男がよりによって魔術?
と失笑しかけた時 山賊の親玉が手をかざすと男に向かってゴウッと30センチ程の火の玉が勢い良く飛び出した
ー!?嘘でしょ!?
驚くと同時に男は横っ飛びして躱し
すぐに立ち上がり山賊の親玉の元へ走り出した
魔法や魔術の類の存在など信じられる訳がない
しかし自分にとって信じられない事が起きたからと言って戦闘中に呆けて居ても状況は悪化するばかりと
親玉の元へ迅速に向かい
襲いかかって来た槍を蹴り上げ
親玉の顔に全力の拳をめり込ませた。
とりあえず 急いでココから離れよう
そう親子に声を掛け その場から離れる事にした。