才気煥発2
『ぬぐぐ…何故 俺が攻められておる』
武田本陣にて山本勘助は唇を噛みながら呟いた。
勘助は自身の固定スキル、GPSレーダーによって戦場を見渡せる。
細かい兵士数などまでは読めないが 誰の隊がどこに居るかが把握出来るスキルだ。
そのスキルもあり、兵士数でも三國方を上回って居る…なのにこの有様だ。
『平井城から来た部隊は三國の部隊に動きを止められている…何故だ…何故なんだ…』
『軍師殿!敵の攻撃が激しく本陣も危険です!』
『ぬぅ…分かってるわ!』
今まで 武田家の軍師として戦場に出ればスキルを有効に使い戦に負ける事などなかった。
今回の戦もココで三國方を撃破し 太田資正率いる援軍部隊を今村城を有効に使い撃破。
その後に上野の制圧は勿論、古河城まで支配下に組み込むつもりで来た。
それがどうだ、初戦にて躓いている。
(せっかく武田信玄に信用され対三國の軍団長として任命されたと言うのに…くそ…三國龍…)
『軍師殿!敵が押し寄せて来て居ます!』
『ぬぅ 分かったわ!厩橋城まで一時撤退だ!』
『はぁっ!』
厩橋城に一旦 退き、その後 飯富虎昌の回復を待ってもう一度攻撃する他ない。
失敗などすぐに挽回する。
失敗を失敗のまま終わらせなければ失敗など無かった事になる。
それだけの事だ。
バサッ
音のした方へ勘助が視線を移すとそこに見知った顔があった。
『よう、山本勘助の偽物』
『…! 三國龍!?』
『夢中になって戦ってたら、ついついここの本陣まで辿り着いちまったわ』
『ぐ…誰かこのバカを捕らえろ!敵総大将だぞ!』
『無理だろなぁ この周囲は俺に制圧されてるぞ』
『なんだと!?』
『お前、陣幕の中に篭ってて気が付かなかったのか?レーダーとやらのスキルを全然有効に使ってないんだな』
言われてスキルを使ってみると、確かに本陣内に武田方の兵も隊も居ない。
周囲は三國方の兵に囲まれ、少し離れた武田方の兵と戦って居る。
『お前、戦が下手なんだなぁ』
『う、うるせぇ!たった一度勝っただけで ほざくな!』
『まぁ 確かにまだ一回しか勝ってないわな…だけどこれでラストかも知れんぞ?』
『…!?』
勘助は飯富虎昌も1対1で撃破する程の男と対峙し逃げられる訳がないと言う事を漸く理解した。
『お前も戦闘術を何か身に付けてたら良かったのにな?』
『チッ…殺せ、これで俺もゲームオーバーだ』
『あぁ 分かったよ』
と言うや 龍は雷術を帯びた手で勘助を掴み気絶させ
味方の兵に今村城まで連れて行く様に命じた。
『総大将 山本勘助を捕らえた!俺らの勝ちだ!』
最近編み出した新術、風術を利用し声を拡大させ戦場に響かせた。
音は空気を振動する。
異世界から来た人間ならではの発想だろう。
『おぉおぉ武田軍が一斉に退いて行ったな』
『…龍様の勝利ですね』
『いや俺の勝利って訳じゃなく俺らの勝利でしょ』
『はい…』
遠くを見ると幸村隊を筆頭に味方部隊が敵を追討して居るのが見える。
士気が下がりきって逃げる敵兵を可能な限り撃退し恐怖を植え付ける。
戦に負けない方法は戦をしない事だと誰かが言ってた気がしたが
この追討戦もそういう事なのだろうと龍は考えていた。




