偕老同穴2
『アタシが桐生城の城代 輝子だよ』
由良成繁に案内され龍達は桐生城へと入った。
成繁の母親は輝子と名乗ったのだが…結構な年寄りだ。
『お…あ、俺は三國龍と言います』
目の前に居る女城主は薙刀を持ち背は全く丸まずシャキッとしている。
龍の見た感じだと60代かと思って居た。
『ふん!アンタみたいな小僧が古河公方様を配下に置いたのかい』
『いや…もう小僧って言う年齢ではないけども』
『アタシから見たら大概の奴は小僧だよ!…ったく男どもと来たら次から次へと死んで行きやがる…残される者の気持ちも少しは考えて戦いな!』
『えぇ…(なんちゅうババアだ)』
『失礼だねぇ…アタシは まだババアじゃないよ!』
年の功なのか分からないが、表情からその者が何を考えて居るのか輝子には分かる様だ。
『フフ…』
龍は我慢出来ず、つい吹き出してしまった。
色んな土地に行くと色んな人間が居るものだ、目の前のこの婆さんも龍にとっては変わった人間だなと感じた。
『何を笑ってんだい!』
『いや、婆さん元気で良い事だなってさ。ところで この桐生城も俺の傘下に入りたいって息子さんから聞いたんだけど本当なんかい?』
『なんだって? あんたなんでそんな事を勝手に決めたんだい!』
『えぇ?母上が武田なんかより三國に仕えなって…』
『男が言い訳するんじゃないよ!』
いやいや これは豪傑母さんだ。
もはや漫画の世界のキャラかよと思ってしまう。
『そこのアンタ!桐生城はアタシの大切な旦那が眠ってる土地だ。このボンクラ息子には任せてられない』
『ボンクラってか…』
『アンタの傘下に入っても良いが、アタシをこのまま城代にしときな!』
『お…おう』
『よし!ならボンクラとは言え男が一度降伏すると口に出したんだ、アタシはそれに従ってやる』
『ふふ…うん』
『ただし!アタシを70歳のただの年寄りだと思われたら困るよ!城代らしくアタシがこの城の総大将だからね!』
『お…おう』
ガミガミと怒鳴っている様な口調の婆さんを前にして、聞こえてくる内容よりも その婆さんの血圧の方を心配したくなる。
『…来な』
輝子は薙刀を肩に担ぎ龍を隣の部屋へと呼び寄せた。
『入りな』
『ん? はぁ』
部屋へ入ると視界に入って来たのは狭いながらも部屋をビッシリと埋める程の数の本だった。
どうやら書庫の様だ。
『旦那がコツコツと集めて居た兵法書の類さ』
『おぉ…凄いな』
『残念ながら旦那は頭が弱くてね、宝の持ち腐れになっちまった。息子達もボンクラだから読みもしない』
『ふふ…そうなんだ』
『アタシは旦那が死んでから毎日読んでんだよ…それが弔いだと思ってね』
『おぉ…婆さん凄いな』
『まだババアじゃないよ!輝子と呼びな!』
『いや…なら輝さんで良いだろ』
『ちっ…アンタはアタシ達を配下にしたって事を忘れるんじゃないよ!』
配下とか言う割には その言い方…と
龍は やっぱり笑ってしまう。
『兎に角 アタシも戦には参加するからね!』
『輝さんアレだな、自分の話しだけガーって捲し立てるタイプだな』
『たいぷってなんだい!人と会話する時は相手が理解する言葉を話しな!』
『あぁ、すまん気にしないでくれ』
『ったく…最近の若い者はこれだから…』
若い者扱いされて悪い気はしないが、世間的には そんなには若くないよと龍は思って居た。




