融通無碍
翌朝 雫と二人で近くの神社へ辿り着くと
『いらっしゃいませ!』と元気に声を掛けられた。
どうやら想像している神社とは少し違うらしい。
『本日はどの様なご用件でしょうか?』
『えーと…精神力を回復させる薬は置いてるかな?』
カウンターの向かいに居る巫女と思われる少女の あまりの元気の良さに 龍は多少たじろぎながら答える。
『ありますよ!こちらが神仙丸になります。ウチのはタケミナカタ様から土の加護を受けて良い薬草が育ちますから 物は良いですよ!』
『つ 土の加護?…なるほど』
『一つ50文になります!』
ー うーん なかなか高価なんだなぁ しかしまぁ 試すのには使ってみなきゃならないし…
『じゃぁ 4つちょうだい』
そういうと200文を懐から差し出した
お金は幸村から技術開発費と言うことで多少 預かって居るので まだ持ち合わせはある
『ありがとうこざいました〜 またのお越しを〜!』
自宅へ帰り 昼食を食べた後は
裏山へ行き また魔術の確認と練習をした。
今日は 身体からではなく 自分の身体以外から魔術を出せるかの確認をする為だ。
昨夜 佐助から聞くには
戦の時 魔術をほとんど使わないらしい。
魔力がすぐに切れ 疲れて動けなくなっては戦どころではなくなるからだろう。
なら 神仙丸を もっと量産する事や
個々の魔力の量を増やす事などが出来れば
戦でも使えるかも知れない。
ーまずは その魔術を有効的に使う方法を見つけないとな…
昨日の魔術練習で 風術 水術 土術もレベル1で覚えていた、魔術を使うと魔術スキルが上がるのかも知れない。
『まずは 雫に持って来て貰った弓で実験してみよう』
『? はい。』
雫は (何をするつもりだろう?)と龍をじっと見ている。
弓を構え普通に射る
そもそも弓矢じたい初めての経験なので
まずは 弓に慣れる必要がある。
数回 撃つと それなりに飛ぶ様にはなった。
『よし ここから魔術を…』
弓を引き その矢に炎の魔力を込めて撃ってみる。
的にしていた木に 矢が刺さると
途端に小さく燃え出した。
これは成功だろう。
自らの身体からではなく 物体に魔力を通わせれた。
龍は思った通りだと顔を綻ばせた。
『…魔術をそういう風に使うと言うのは 考えも及ばなかったです』
『いや まだまだこれは序の口だよ ここが技術開発のスタート地点さ』
そう イメージとしては この時代に既にある鉄砲 種子島銃
しかし種子島は高く なかなか多くは配備出来ないのだ。
この時代に種子島を配備しやすかったのは
貿易などが盛んな港町付近や
鍛治が盛んな街の大名だろう。
その高い種子島を弓矢と魔術で再現出来ないかと龍は考えていた。
威力や魔術の属性の混合比を変えたら大砲にもなるかも知れない。
技術と言うのは そうやって妄想と実行 そして失敗を繰り返して発達して行く物だろう。
『あとは 魔術の混合を練習して最適な混合を試してみるよ』
『では 私は夕食を作りに帰ります。』
『悪いね 宜しく』
雫の後ろ姿を見て 夕食まで魔術の練習に没頭する事にした。




